寂しすぎる「朝陽」
皆さんは「朝陽」にどんなイメージをお持ちですか?
爽やかな朝や澄んだ空気、たっぷりと降り注ぐ日差しなど、おそらく多くの人が明るいイメージを持っているはずです。
しかし、あいみょんが歌う「朝陽」は一味違います。
2020年9月に発売したアルバム『おいしいパスタがあると聞いて』に収録されている楽曲『朝陽』。
この楽曲では、自暴自棄になるほどに意中の男性を想う女性の、切ない気持ちが表現されています。
それなのになぜタイトルが『朝陽』なのか、歌詞を元に解説していきます。
----------------
「今日はちょっと早いかもゴメン」
なんて言われましても
私遅かれ早かれ後悔するから
何でもいいよ もう何でも
どうでもいいよ もうどうでも
≪朝陽 歌詞より抜粋≫
----------------
こちらは冒頭の歌詞。
デートの解散時間を早めようとする彼の言葉から始まります。
彼女は彼のことが好きなようですが、彼は彼女のことを好いてはいない様子。
それを決定付けているのが、彼の一言を表した次の歌詞です。
----------------
「終電逃して何のつもり?」
って聞かれた恥ずかしさ
期待してないなんて言えないし
というか分かってよ もう分かってよ
≪朝陽 歌詞より抜粋≫
----------------
彼女が彼に対して何を求めているのか予想はできるはずです。
それでも、終電を逃した彼女に対して「何のつもり?」と、彼は冷たい一言を吐きます。
そして彼から突き放された彼女は、傷心で一人始発を待つのでした。
----------------
始発待ちベンチ
どっちの方向かも分からぬままに
≪朝陽 歌詞より抜粋≫
----------------
勘付いた方もいるかもしれませんが、始発の時間はまさに朝陽が登る時間。
つまり、あいみょんの描く「朝陽」は始発を待ちながら見た光景だと推測されるのです。
彼からひどい扱いを受けた日の夜明けに見た朝陽。想像しただけでもとても寂しい気持ちになるのではないでしょうか。
愛されたい女性の気持ちが爆発
彼から邪険にされ、突き放され続ける彼女。
しかし、どんなにひどい扱いを受けても彼女の思いは変わらない様子。
自暴自棄になりながらも彼を思う気持ちがストレートな言葉で歌われています。
----------------
愛されたい 愛されてみたい
愛されて 愛してみたい
愛されてみたいだけの
欲望ならどんなときも
貴方の事が好きだった
いや今でも好きです好きです 好きです 好き
気持ちの悪い自分を殴りたい
≪朝陽 歌詞より抜粋≫
----------------
少し恐怖を覚えるほどの愛ですよね。
そんな愛し方をする自分を「気持ち悪い」と自覚してることも分かります。
愛してほしいという欲求から生まれる心の痛み。
彼を愛しすぎているからか、彼女はその痛みすらも嫌ではないようです。
----------------
少し痛い大切なとこ
心臓あそこ どこ そこ それが痛むの
嫌いじゃない痛み
ダメね こんな私ではダメね
≪朝陽 歌詞より抜粋≫
----------------
これではダメだとわかっていても、彼からは離れられないようです。
彼女を邪険に扱う彼も彼ですが、依存し続ける彼女にも落ち度があるのかもしれません。
この2人はそれぞれ幸せになれるのでしょうか?
単純な「片思い」とはまた違う、少しダークな恋愛を歌った『朝陽』。
共感できる部分もそうでない部分もあると思いますが、ぜひ聴き込んで主人公の気持ちを感じてみてくださいね。
あいみょんの表現力がすごい
この楽曲を通して改めて感心するのが、あいみょんの表現力です。
以下の歌詞をご覧ください。
----------------
乾電池みたいな女だよ
それは自覚しているし
度胸もない 包み込んでくれる故郷もない
≪朝陽 歌詞より抜粋≫
----------------
乾電池は、事足りれば捨てられてしまう使い捨ての存在です。
そんな乾電池と自分の存在を重ねるのは、なかなかできない発想ですよね。
また、以下の歌詞も深いです。
----------------
心のシュレッダーの刃はもうガタガタだ
≪朝陽 歌詞より抜粋≫
----------------
シュレッダーは紙を細かく刻むものです。
普通に使っていれば刃は傷みませんが、厚紙やホチキスの針などをいれてしまうと傷んでしまいますよね。
おそらく彼女も様々な感情を飲み込んで来たのでしょう。
その結果、刃がボロボロになってしまったと歌っています。
人間とは程遠いところにある無機質な存在に、自分を投影するあいみょんの世界観は本当に素晴らしいです。
ぜひ他のあいみょんの楽曲を聴く際も様々な表現に注目してみてくださいね。
TEXT ゆとりーな