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【インタビュー】夜韻-Yoin-。癒しの歌声が眠れぬ夜を救う (2/2)



デビュー曲について



──『Seafloor』はどのようにして作っていきました?

あれくん:(涼真を指さし)2人で曲を作ろうって一緒にいて。休憩しようってコンビニに行ったんですよね。

涼真:ご飯を食べようとか言って。じゃあ、コンビニ行くかって感じでした。

あれくん:そしたら、コンビニで歌詞と曲が一気に降りてきたんですよ。それで帰って制作して、もう1~2時間くらいで出来上がりました。

涼真:そう、あっという間でしたね。

あれくん:そうだったよね。それで出来上がった曲を美咲さんに投げて、フィーリングでちょっとピアノつけてみてみたいな感じで。



──コンビニに行ったのは夜?

涼真:深夜だったと思います。俺らのことなんで(笑)。

あれくん:そう。夜。夜の10時は過ぎてました。

涼真:嘘ですよ。もっと深夜ですよ。俺らが夜の10時に外に出るわけないです(笑)。

(一同爆笑)

あれくん:そっか。もっと深夜帯でした(笑)。


──最初に降りてきたのは曲のどの部分?

あれくん:「海の底に 深い海の底に 落ちていく感覚があった」ってとこですね。最初の冒頭3行が一気に降りて来たんです。


──自分の中に“深い海の底に落ちていく感覚”って、元々あったと思う?

あれくん:いや、無いですね。海に行かないんで(笑)。

▲夜韻-Yoin- Seafloor (OFFICIAL VIDEO)

──え、そこ?(笑)じゃあ“底に落ちていく”感覚っていうのは、自分の中にあると思う? もっというと、自分の中にある“闇の底”を描いている意識はある?

あれくん:例えば病んでいる子とかの心の模様を描いているような気持ち。曲を作る中でそういう気持ちはずっとあって。 「底」っていうのは、きっとずっとあって、急に降りて来たんだと思います。


──美咲さんは、「Seafloor」を初めて聴いた時、どんな印象を持ちました?

美咲:もう……すごっ……っていう。歌詞とメロと、涼真くんがつけてくれたLo-fi(=ダウンテンポのビート)感が絶妙にマッチしてて、本当に感動しましたね。私が1番大事にしたかったのは、この曲の情景で。ピアノで、波とか海とか、海の底の低音な感じとか、アプローチ出来るなと思って。間奏のピアノソロも、そういうイメージで。水と、海と、波の感じを探りながらつけていきました。


波の音も加工してるんです

──涼真さん、アレンジをしていく中で、全体的に大事にしたものは?

涼真:曲の3D感はめちゃめちゃ大事に作りました。


──それは、サウンドが立体的になっていて、多面性があるってことでしょうか?

涼真:そうです。こういう感じのサウンドって、単調に作ろうと思ったら、すぐに出来ちゃう音楽だと思うんですよ。


──ダウンテンポ、チルとかアンビエントのムードがある音楽ってこと?

涼真:そうです。チルミュージックって、ある程度、テンプレートがあるものだから。こういうパターンで、こういう音、みたいな。


──そうですね。特にここ1~2年くらいは。

涼真:そうですね。チチィーって音、まず入れとけ、みたいな(笑)。その中で、新しいことがやりたいなと思って。哀しい時とか、何かしらエモーショナルな感情の時に聴きたくなる、そこに刺さる音って何なんだろうって考えたんですよ。で、テーマとして「海」ってあったんで。わかりやすく波の音を入れてみたりして。


──冒頭の演出ですね。

涼真:そうです。あの波の音も加工してあって。もうちょっと切なくしようと思って、いろいろ試しているんですよね。この曲は、ミュージシャンとして作っている面ももちろんあるけど、自分のアーティスト性が前に出た曲だと思っているんです。

「こんなことやっちゃたら怒られるかな」みたいなのも入れたり(笑)。昔はトラックメイカーって言ったら、EDMがまず浮かんだと思うんです。でも今は違う。時代の変化とともに、使って来る音色とかも変わってくると思うんですよね。

だからまずはそこのテンプレートを踏襲して、トレンドを聴きまくって「あぁ、こうなってるんだな」ってインプットして。そこに僕の好きなものを入れてアウトプットしていく。ノリでよっしゃ!個性が出たっていうよりは、めちゃくちゃ考えて作った個性っていう感じです。

共感性を大事にしてる

──あれくんの作る曲に対しては、どんな風に思ってる?

涼真:まず、めちゃめちゃメロディーセンスがいいと思ってるんです。日本でもたくさん、すごいなと思うメロディーメーカーの方がいらっしゃいますけど、そういう感じがするんです。「あ、メロディー作れちゃう、天才」って感じる。

僕はトラックを作る上で、そのメロ自体をいじることも出来るけど、それはしたくない。あれくんに降りてきたものを、どれだけ生かししつつ、どれだけ引き立たせるかっていうのが、僕の腕の見せ所だなと思うんですよね。


──『Seafloor』って、確かに夜に合う曲だと思うんだけど、日中でもこう……溶け込むんですよね。で、日中に聴いた時、夜って暗いんだよな、海の底って暗いよなって思わせるんですよね。そこに結構びっくりして。すごいなと思いました。

あれくん:ありがとうございます。やっぱり病む時って夜じゃなくても病んだりするから。基本的には夜が多いかなと思うんですけど。朝でも心が遮断されて病んだりすることもあれば、日中でも嫌なことがあれば、そういうことがあるだろうし。


──病むって言葉が何回か出て来たんですけど。あれくんの中では「病むこと」は、曲を作るひとつの原動力になったりする?

あれくん:そうですね。この世界、幸せな人はいるけど、幸せじゃない人の方が多いと思うんですよ。それを自分の中でテーマにしていて。幸せな人って、パリピな音楽しか聴かないイメージがあって。

でも、心に響く系の曲っていうのは、心に闇を抱えてたりとか、心の隙間が出来ている人に響くと思っていて。そういう部分をテーマにして、そこに向けてメッセージ性を持って行ったりとか。そういう共感性は、すごく考えています。直観的に降りてくるものなんですけど、そこに価値をつけて、曲を作るようにしています。

僕、曲は、共感してもらえるだけでいいと思うんですよ。それだけで、ちょっと沈んでいる子とかが、ちょっとでも気が楽になると思うから。自分でもそういうことがあったりするし。そういう共感性は大事にしていますね。


──1人ずつ、歌詞のお気に入りのフレーズを教えてください!

涼真:考えたことなかったな。

あれくん:僕はすぐ出て来るけど。

涼真:「夢にも痛みがあった」です! あぁ、エモ! わかるー。いい歌詞書きますね、この人。

美咲:えー……(熟考)「言葉では足りないようだ」です。


──この最後の「ようだ」が、余韻ありますよね。

美咲:そうなんですよ。自分の心情が重なる隙間があるというか。

あれくん:僕は「空虚な部屋に 閉じ込められていく そんな幻覚があった」って部分ですね。心の闇を描写したところ。この曲で描きたかったテーマですね。


自分の歌声で寝られます!

──あれくんの書く歌詞って、テーマも切実だし、選ぶ言葉もセンシティブなんだけど、こう……聴いてて暗くならないんですよね。そこが、このユニットの個性であるし、あれくんの声質のせいもあるのかなぁ、と。

あれくん:ありがとうございます。

涼真:でも、ほんっと、声、いいっすよね。

一同:はははは(笑)。


──「いい声だね」って言われることに対してはどう思う?

あれくん:もう、普通に。素直にすごく嬉しいです。でも、今でも自分の声は嫌いです。歌声はまだ聴けるんですけど、こうやって話している自分の声は嫌いです。ここで録音されてるの、一生、聴きたくないです(笑)。


──歌声は最初から大丈夫だったの?

あれくん 大丈夫でしたね。自分の歌声で寝られます!

──えぇ!それはすごいですね。声質よりも歌声のゆらぎが、せせらぎとか自然界のゆらぎに似ているのかな。

あれくん:なんですかねぇ(笑)。α波ですかね。よく言われます。

涼真:だって本当、いい声だもん(笑)。


TEXT 伊藤亜希

夜韻-Yoin-(読み=よいん) 「僕たちの音楽でみんなの全てから余韻を感じ取ってもらえるように。」 シンガーソングライターでアコースティックイメージのあれくんと、今どきの若手ロックバンドギタリスト涼真、そして音大出身で華のあるピアニスト岩村美咲。 見た目も背景も違う3人の出会い···

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