海をバックにした最新アーティスト写真に秘めた想い
──デビュー6周年おめでとうございます!今回新しいアーティスト写真になりましたが、海の上にテーブルがあり、その上にティーカップや食事などが置かれています。そしてそこに皆さんが佇んでいらっしゃるのが衝撃的でした。このアーティスト写真はどういう意図があるのでしょうか?全員:ありがとうございます!
田邊駿一:衝撃的ですよね(笑)今回、現状のBLUE ENCOUNTを総括するアルバムができたので、それのアーティスト写真を撮ろうってなったときに「今のBLUE ENCOUNTとは何か?」という所を考えたんです。いろいろとやりたいバンドでありつつ、音楽でバラードやったりもするし、次の曲ではミクスチャーロックもやったりする、所謂いろいろ二律的なことをやるので、その天邪鬼さをアーティスト写真で表現したいよねってなったんです。
それで、真逆な場所でスーツを着て重厚な食事やワインがあることをしたらどうなるんだろう?っていうのを考えて、山の中とか森の中とかアートワークディレクターの方と色々話をしました。
その際にアートワークディレクターの方から、「海でブルーアワーに撮影するのはどうか?」っていう案があって。日が沈む瞬間って夕焼けになるけれど、その夕焼けから夜になる瞬間のことを、ブルーアワーって言うらしいんです。まさにBLUE ENCOUNTとしてブルーアワーな時間にその写真が撮れたらいいよねっていう話になり、このアーティスト写真が撮れました。
──ブルーアワーという、ブルエンさんにふさわしい時間に撮影できたんですね!
田邊駿一:そうなんです。だから天気が悪くてもダメでしたし。僕らが撮影しているこの隣には、普通にサーファーの人もいましたよ(笑)千葉で撮影しました。
──撮影は何時ぐらいからされたんですか?
田邊駿一:昼から夕方ぐらいですね。めちゃくちゃ真夏日だったんですけど、何というか不思議な感覚で。
辻村勇太:服を着ながら海に入ったからね。
田邊駿一:なんかやっちゃいけないことをやっている感じでした(笑)思っていた以上にクオリティーの高いものができたので、このアーティスト写真は気に入っています。
──実は、私の中でこのアーティスト写真を考察させて頂きました。海ってとても自然豊かな場所で美しく綺麗なところではあると思うのですが、大きな波が来てしまったら人を危険に晒す怖い場所でもあると思うんです。なので、その海の上に皆さんがスーツとテーブルを置いて立つことによって、自分たちがその怖ささえも超えて突き進んでいく意思表示のようにも感じとれました。
全員:おお~!!
田邊駿一:次からそれ使わせてもらいます(笑)俺らの中のフラッシュアイデアを1枚出すことによって、そういう風に受け取って思ってくださる方が増えていただけるのは嬉しいですね。
江口雄也:まさに、受け取り師ですね!
田邊駿一:受け取り師?(笑)そういう師がいるの!?
全員:(笑)
──ありがとうございます!ちなみにSNSの間で、この最新アーティスト写真についてファンの方々が様々な思いを想像していらっしゃっておりました。
1つご紹介しますと、ONAKAMAの04 Limited Sazabysさんの最新アーティスト写真では、空港で撮影をされており、空をメインにされているお写真で、空を制する者と呼ばれています。そして、THE ORAL CIGARETTESさんは大地をメインにされているアーティスト写真でして、大地を制するものと呼ばれております。最後にブルエンさんは海を制する者と呼ばれておりました(笑)
全員:(爆笑)
江口雄也:俺、それSNSで見ました!ONAKAMAが発表された後に、言われていたね。
田邊駿一:俺らポセイドンかよ(笑)すごいね、都市伝説みたいじゃん!俺ら水系だ。
辻村勇太:みんなでこれを盛り上がってくれるのは嬉しいですね。これからライブみて「海制している~!」って感じてくれたらって思います(笑)
BLUE ENCOUNTの中でエモいが広がってきている
──タイトルが『Q.E.D』ですが、数学や哲学で使われる『Q.E.D.』では、最後にピリオドが付きます。それをあえて付けないでタイトルにしているのは、ブルエンさんならではの熱い裏テーマがあると思いました。田邊駿一:これも皆さんに委ねるって意味合いでこのタイトルにしたので、あまり深くは語らないでおきますが、ピリオドがないってことはこれからも証明していきます。証明されている定義って、これまでにも歴史上に証明されているんですよね。
そしてその定説を崩す証明も数学や哲学理論でもあるようなんです。自分たちも現段階で証明できる作品ができたけど、今後の作品でその証明を崩していくのも面白いし、その続きをやっていくのも面白いと思っています。みんなが最後の曲まで聴いて「BLUE ENCOUNTって何?」って思ってくれたら嬉しいです。
──アルバムを聴いて答えが見つかるということですね。
田邊駿一:そうですね。今ちょうどブルエンの施策として、「BLUE ENCOUNTを証明せよ」っていう好きな楽曲とか、ブルエンを好きになったきっかけをファンのみんなに書いてもらうものをやっているんですけど、みんな好きな曲も違うし、好きなライブとか出会ったタイミングとかも違う。それがすごく嬉しかったんですよね。みんなの中での正解のBLUE ENCOUNTがあって。
時には僕らが新しく出す曲が、その人の正解のカテゴライズに合わないときもあると思うんですよ。だけどそこから先に正解に出会うこともある。なので、ピリオドを付けずに、まだまだ進んでいきたいですね。
──では、『Q.E.D』が完成した手応えをお一人ずつお聞かせいただけますでしょうか?
高村佳秀:手応えという解釈でいうと、過去3作品と一緒で今回も「ああしておけば良かった」っていう反省が尽きないです。そこを自分の中で無くそうと今回のアルバムでもチャレンジしたし。コロナの影響で幸い時間だけはあったので、いつもよりも反省点は少なくなるのかなって期待をして、音源完成して聴いたんですけどやっぱり、「ここはこうじゃなかったな」っていうのは出てきていて。
それは自分の中で永遠に終わらない部分なのかもしれないと、確信しました。自分の中でめちゃくちゃ良くできたアルバムとは、まだ言えないです。最大限は出しましたが、正直言うともっとできたなって思います。
ただその反省がある事が、常に自分が成長できている証拠なのかなとも思っています。
──もうちょっとこうしておけば良かったなという曲はありますか?
高村佳秀:全部ですね。僕はドラマーとして見た立ち場もあるし、音作りもフレーズもそうなんですけど、曲の仕上がりとしてもあるし。細かいところが気になっちゃう性格でもあるので、ちょっとした音の飽和とか目立つんです。飛び出てほしい音が出ていなかったりとかもありましたね。
──では、辻村さんお願いします。
辻村勇太:僕ら、多くのメディアでもエモーショナルロックバンドと書いて頂いているんですよね。それはロックもやるしポップもやるし色々やるから、世の中的にそれをエモーショナルロックといわれていると思うんですが、それがさらに強くなった作品だと感じています。今は、BLUE ENCOUNTの中でエモいが広がってきているなと。昔だったらカッコいい曲がエモいだったと思うんですよ。
でも今のエモいって、もうちょっと広い意味合いに変わってきていると思うんですよね。それが4人の中で証明できたというか、まだ出来るというか。そういったものが強くなったエモい作品です。『STAY HOPE』とかもみんなが聴いてエモいと思うんですけど、他の優しい曲もエモいので、皆さんにもそういうエモさを感じてほしいです。
──なんか、皆さんサウンド的に吹っ切れた感じがしますよね?
辻村勇太:そうですね。今まで寄り添おうとしていたんですけど、それが良い意味で寄り添わなくていいところと、寄り添わなきゃいけない部分がわかってきているなと。その分、自分が寄り添わない部分のシーンも、コロナ禍の部分で伸ばしていったところです。
──では、江口さんはいかがでしょうか?
江口雄也:僕はこれまで出してきた作品も完成したときに、「すげーかっこいい作品ができたな」って思って完成させるので、今回に関してもカッコいい作品ができたと思って世に出します。高村が「終わってみたらここ直しておけばよかった」とか言っていたと思うんですけど、もちろんそれはあるんですけど、そこを含めて僕はカッコいいと思っています。
そのとき含めたアイデアもあるし。完璧すぎると人ってカッコよくないって感じるんじゃないかなって思っていて。完璧な丸じゃない、ちょっと歪んだところに惹かれたり、バンドっぽさがあるんじゃないかなって僕はバンドについて考えています。
『STAY HOPE』はあるアニメの候補曲だった
──今作では、新曲が5曲収録されているので、その中から3曲ピックアップしてお伺いします。ますは『STAY HOPE』。同曲を聴いたときに、まずアニメソングのタイアップに絶対使われそうだなと感じました。全員:おおお~!!
田邊駿一:鋭いね(笑)元々、これアニメ『銀魂』の曲になるはずだったんですよ。
──ええ!そうだったんですか!?
田邊駿一:そうなんです。それで、勝ち残った曲が『VS』っていう曲で。3年前に作っていたので、この『STAY HOPE』と『VS』が対決していた感じです。僕らとしては『銀魂』のアニメの世界観に合うような直球な曲で作っていたんですが、『VS』が選ばれたので、この『STAY HOPE』を世にいつ出そうか狙っていたんです。
──そうなんですね。こちらブルエンさんが企画されている熊本復興支援プロジェクトの名前と同じですが、既に曲名が先にあったんですか?
田邊駿一:先に、熊本復興支援プロジェクトの名前になっていて、その名にふさわしい曲になったなと僕が感じたので、このプロジェクト名を曲名にしました。
──歌詞についてお聞きするのですが、「時代のせいにして偏った正義を振りかざして 匿名な中傷(コトバ)たちはまた命を奪った」とありますよね。ここの部分が、近頃巻き起こるSNSによる言葉の暴力により、命を落としてしまっている人々の事を鮮明に表現されているような気がしました。そういった現代社会を汲み取って歌詞を書かれたのでしょうか?
田邊駿一:そうですね。世の中にそういうことが広まっていたと思いますが、それは氷山の一角なんですよ。それにこういう事ってSNSだから芸能人が多いけれど、日常生活の中で一般人の方がLINEとかで傷ついたこともあると思うんです。それが引き金となって色々なことを諦めてしまった人もきっといる。僕がこの歌詞を書いていたときはコロナの真っ只中で、そういうのも見えてしまっていた時期でした。
結論を言うと、「そんなものに負けてられね~」といいますか。人間ってどうしても良い言葉の中に、隠れている悪い言葉ばっかりを主人公にしちゃう部分があるんですよね。仲間と思ってくれている人たちが優しい言葉をかけてくれているのに、それよりも第三者の心ない言葉の方が勝っちゃうというか。
──確かにその通りですね。
田邊駿一:結局人間はマイナスな言葉を探してしまっている部分があるなと思っていて。探せば探す程良いことなんて何もないですし、見つけちゃったらその解決策なんて一人じゃなかなかできないんですよ。それを考えたときに「じゃあ、なんでその言葉を見つけるの?」って思っていて。
だけど、僕も昔、そういう悪い言葉を探してしまっていたこともあったんです。そういう言葉を見つけたときに、「畜生」って思える人間ではないから、悪い言葉も100%受け止めちゃっていたこともありました。コロナウイルスの影響によりみんなの動きが止まってしまった中で、0から希望を作っていかなきゃいけないってなったときに、そんな悪い言葉にやられていたら終わっちゃうぞと強く思って。
例えばですが、仕事で嫌なことがあった人が、鬱憤を晴らすためだけに一言書いた言葉によって、ある人がその言葉に人生を委ねることになるよりかは、その鬱憤がたまっている人に容赦ないぐらいの愛を込めて何ができるかを考えました。傷つくのは相当な代償がいりますけど、愛を届けるのはなんぼだってできるので。
──その鬱憤がたまっている人に容赦ないぐらいの愛を届けるという考え方は新しいですね。
田邊駿一:コロナウイルスという状態が起こってから、僕も考えは変わりましたね。だから新プロジェクトも始めたし。愛を誰かに与えてそれの代償をもらおうとは思わないんですよ。だけど傷ついたら復讐したいって気持ちが人間だと出ちゃうんですよね。その不毛な連鎖を断つには、愛を享受するしかないと思います。悪い言葉を発する人でも、その人なりにその言葉を発してしまう理由があったりするんですよね。
電車に乗っているとき、普通の女の子が携帯を持っていたんですけど、パッと見えた画面には悪口ばかり書かれてましたからね(笑)「こんな普通そうな子でも何があったんやろうな」って思いますし。なので、その人たちが悪口を言わない理由を作っていきたいと思っています。Aメロは今の社会風刺を歌っていますが、最後は容赦なき愛を込めてっていう、躊躇せずにその人たちへ愛を出せるかどうかの楽曲です。これからの人類のメインテーマになって欲しい曲ですね。
──ちなみに『STAY HOPE』は、「STAY HOME」と言葉はかけているんですか?
田邊駿一:これって7月に行った配信ライブのタイトルだったんです。その時は、「STAY HOME」っていう言葉が世間にわーっと出ていたときだったので、それを文字って『STAY HOPE』にしました。僕もその当時ライブをやるまでは、希望がなかったんです。ライブも中止になってツアーがなくなっていて、稼ぎ口がなくなることも大きな悩みでした。
同期のバンドマンとかも、みんなに想いを届けてそれでご飯を食べれていたから、どうしてもそのライフワークとなるものがなくなってしまったときに、意気消沈している仲間もいました。だけど、どうしたらいいんだろうって思っていたときに、「まずはやろう」と動き出しました。単純にライブハウスでライブをやっている姿をみんなに届けたいなっていう思いから、この企画が始まったので、その日がすごく自分の中で希望を取り戻せた日だったんです。それからそのプロジェクト名が、曲名に繋がりましたね。
──今回歌詞も素敵ですが、サウンド面もめちゃくちゃカッコよくて。特にイントロの高村さんのドラムソロは最高でした!
田邊駿一:ドンツカドンツカしているところだよね!
高村佳秀:あそこはやっぱりアルバムの1曲目なので、音に関してはかなり協議した部分でした。もう一回作り直したりとかして、手間暇かけたのでそうやって言っていただけると嬉しいですね。
田邊駿一:元々このドラムのドンツカドンツカするイントロは入ってなかったんですよ。
だけど、その音をよっちゃん(高村)に入れてって頼んで、あの曲ができました。ありがとう!!!
高村佳秀:まとめ方雑だな~(笑)
──皆さんのそれぞれ魅力的なサウンドのおかげで、「今日も生きていこう!」って思えましたよ(笑)
全員:ありがとうございます!(笑)
《メンバー》 Vo. Gt. 田邊駿一 Gt. 江口雄也 Ba. 辻村勇太 Dr. 高村佳秀 熊本発、都内在住4人組。熱く激しくオーディエンスと一体になり、ダイレクトに感情をぶつける熱血なパフォーマンスが話題のエモーショナルロックバンド。 2014年9月にEP『TIMELESS ROOKIE』でメジャーデビュー。20···