1. 歌詞検索UtaTen
  2. コラム&特集
  3. バンド
  4. SUPER BEAVER

【インタビュー】SUPER BEAVER「100%客観的になったのは初、そのうえで大好きと思う一枚」 (2/2)




なぜそれを提示するかを歌えたと思う

──5曲目にシングル曲の「自慢になりたい」があって、グルーヴ感が最高に気持ちいい「パラドックス」に続きます。

上杉研太:これは意外とみんなど真ん中にいるような音像になっていて。特にベースがロウになっているわけじゃない、みたいな。そういう真ん中にいるような音像がいるから、たぶんかっこいいバンドサウンドになっているんでしょうね。



──「mob」もそうなんですけれど、「パラドックス」もライブでどんな感じになるか非常に楽しみです。

上杉研太:この曲はそもそも大きい会場で鳴らせるロックな感じはしていて。これまでにやってきたライブであったり、今のSUPER BEAVERの感じであったり、そういうのも全部ふまえて、次に投げられるNEXTな感じもしますね。だからこういう曲ができて、こういう音像でできたということは、これから効いてくるんじゃないかな。ちょっと前だったら作れなかったものかもしれないんですけれど、今後、こういう楽曲が増えてくる気もしましたし。


──「mob」や「パラドックス」は、これまでシングルで発表している曲とは別の角度を切り取った作品になっていますよね。

柳沢亮太:シングルですでに出している楽曲に対して、なぜそうなったのか、の「なぜ」の部分がこういった曲たちに入っていると思っていて。大事な部分というか、道中といったらいいですかね。

どの楽曲も圧倒的な答えがあるわけではないとは思っているんですが、その答えというのは、聴いてくださった方自身が、自分の今に当てはめて、何かの気づきとかになったらいいな、と。

なぜSUPER BEAVERはそういった提示をするんだろう、という「なぜ」の部分について、今作は丁寧に歌えている作品なんじゃないかな、と思っています。


──そして「パラドックス」で繰り返し出てくる「本当」という言葉についても、「“本当”とは何だろう?」と改めてじっくり考えさせられました。

柳沢亮太:この楽曲で言っている「本当」は、さきほどの「mob」だったり言葉だったりというところとすごく連動しているな、と思っていて。僕は「脳内で考えていることって、口にさえ出さなければこの世には存在しないことと同じなんじゃない?」という気がしているんです。それは他者にとってですけれど。自分の中にだけでとどめておけば、どんなことを考えていたとしても、究極、犯罪にもならないというか。

ただそれが好きな人に思いを伝えたその瞬間から、その気持ちは本当になるというか。声に出した瞬間に本当になっていくような感覚が自分の中ですごくあって。だからこの楽曲でおいている「本当」というのは、奥底の部分というか。本当は知って欲しいけれど、言ってしまったら本当になってしまう、というところへの葛藤というのは、もちろん自分自身でも経験のある気持ちですし、そういったことにフォーカスを当ててみた歌というか。

SUPER BEAVERは「口に出していこう」ということをずっと歌っているバンドだと思いますし、実際に今もそう思うんです。ただ、そうは思うんですけれど、それだけではないということも、自分たち自身も思うし。だから今回、このタイミングでこうやって楽曲を歌えるのは、SUPER BEAVERの楽曲たちにとっても、またすごく重要な1曲になっているんじゃないかな、という気もします。


一人一人の生活に届いてほしい歌

──7曲目はアルバムタイトルにもなっていて、<愛してる>と真正面から何度も歌う「アイラヴユー」がきます。


渋谷龍太:「頑張って」というよりも何よりも、その人のことを考えて投げかけてあげる言葉として、「俺はあなたのことを愛しているよ。俺はあなたが必要だよ」とちゃんと言ってあげられることが何よりのエールになるのかなというのは、この歌を歌ってみて再認識しましたね。

上杉研太:この曲は本当にバンドの根底にあることで、僕らがずっと思っていることと、追いかけていることをあえて口にするとこうなる、ということなんだと思うんです。だから今ここでこれを掲げることが、たぶん重要なのかなと考えていて。この2020年というのも踏まえ、今後自分たちがこれを強くまた掲げて行くんだ、というところに、すごく意味を感じる曲だなと。

だからこれは全力で心を込めてやるという曲ですよね。もちろんまだライブで披露したりしているわけでもないんですけれど(取材当時)、これからもっともっといろいろな思いがのっかってくるような曲になっていくでしょうし、「バンドをやっていてよかったなあ」とか、「自分はなぜバンドをやっているのかな」とか、そういうことまで感じられるような曲になるのではないかな、と思っています。


──次に<楽しい予感のする方へ>というフレーズに心が高鳴る8曲目の「予感 -Album mix-」から、<時代とはあなただ>と訴える「時代」に。

柳沢亮太:この曲は2020年にできたわけではなくて、もともと自分たちの中ではあった曲だったんです。そもそも大それたことが言いたかったわけではなくて、もっと日常的、生活的というか、そういったところにフォーカスを当てた歌を作ることはできないかな、というところから生まれてきた楽曲です。

だから<時代とはあなただ>というワードでもあるんですけれど、一人一人の生活に届いてほしい歌だな、ということを強く思っていて。どの楽曲ももちろんそうなんですけれど、「時代」というワードが大きなくくりのようではあり、実はもっと身近なもの、というのは楽曲でも歌いたかったことですし、事実そうなんじゃないかな、と。こういった気持ちが素直に曲になったと感じているので、この曲こそふとした時に耳にして、また新しい気持ちがわき上がってくるような楽曲になったらいいな、と思います。

サウンド的にも、音楽団みたいな。みんなで一人、また一人と、楽器とはいえないものすらも鳴らしていいよ、というか。そういったイメージでレコーディング作業をした楽曲でもあるので、その1つ1つが1つの大きなものを作っているというのは、サウンドとしても表現したかったんです。


──最初アカペラで始まっているというのも、大きな特徴ですよね。

渋谷龍太:実はこのアルバムの中では断トツで古い歌というか。録ったタイミングが2年前とかなんですけれども。しかもこれはプリプロ、レコーディングの前段階の歌なんですよ。

柳沢亮太:頭2行だけが。

渋谷龍太:そう。頭音から<あなたは わたしの光です>までがプリプロのところなんですけれど、すごく狭いブースに入ってギターを弾きながら歌っているのを、マイク1本で録っている時の音なんです。その時の歌というのが、とても良かったという。うまく説明できないんですけど。

本当はこれを録り直すという話もあって。でも僕はこの「時代」という歌と向き合った時に、歌の設計図を立てる時、頭2行はなぜかまったくやっていなかったんですよね。


──そうだったんですね。

渋谷龍太:何かすべてあれで成立していたような気がしていたので、そのまま使いました。自分たちが歩んできた歴史も含んで今の自分たちを表すにあたり、前の自分の歌が入っているというのはすごくいいな、と思っていて。

今、歌ったら、まったくアプローチは違うんですよ。でもあの時でないと歌えなかった歌だと思うので、これはおもしろいな、と思ってそのままにしてあるんです。


──違う時代の声が、一緒に収録されている、と。

渋谷龍太:移り変わるものでありつつも、移り変わるには、ちゃんと一歩ずつ踏んできたものがあるということを、こういうところでもしっかり感じることができるのは、「おもしろいじゃん」と感じました。


──日常があるからこその時代であり、それを体現する冒頭、ということなんですね。

渋谷龍太:個人単位でも成立するものだというのは、みんな自覚してもいいことなんじゃないかと思うんです。それは別に慢心でもないし。もちろん自分の中で流れている時間軸ではあるので、自分だけのものとして捉えても、時代というのは成立するものだから。そういうことを大事にできたら、きっと楽しいんですよね。


──その「時代」から次の「ひとりで生きていたならば」につながっていて。1人でも時代を作れるんだよ、と言った後に、さらに他者の存在が加わる楽曲が来るという構成も素敵ですね。

渋谷龍太:本当、アルバムだからこそできる流れであったり、今までの曲の聞こえ方が変わったりするという点においてはすごく絶妙なバランスで、いいアルバムだなと思いますね。


──パズルのピースが1つ1つはまっていく感覚です。今、思うように進めない人も多いですが、その中で柳沢さんが先ほど言われたように、「時代」はそれぞれ音楽団のように、楽器とはいえないものすらも鳴らして、参加するというか。

柳沢亮太:そういった気持ち、意味合いとして伝わってほしいなと思える楽曲ではあると思いますね。双方にというか。お互いが作り上げるじゃないですけど、そういう気持ちというのは、すごく含まれていると思います。


ロックバンドだからこそできること

──ラストの「さよなら絶望」。これは悪霊退散!という感じがして。

上杉研太:ははは! 確かに(笑)。

柳沢亮太:まさにそうですね(笑)。

渋谷龍太:タイトル変えますか?


──いやいや! とんでもない例えを……。

柳沢亮太:でも感覚は近いかもしれない。悪霊退散って、作った時の気持ちにすごく似ています。

渋谷龍太:同義語かもしれないね。

柳沢亮太:今、自分たちが絶望的な気持ちだけで生きているかというと、別にそういうわけではなくて。ただ、それに近い気持ちを覚える瞬間もあるし、すごく絶望的な気持ちになっている方がいるかもしれない時に、ロックバンドが何をやれるかというと、悪霊退散でしかなかったという。今すごく絶望的だからどうのこうの、ということじゃなくて、「近寄るな!」という感覚で。

もちろんそんなことは難しいんだけれど、できる限りあらがっていきたいというか。そういう気持ちで言うと、一番nearな言葉は悪霊退散かもしれないです。


──「さよなら絶望」に<なんのための爆音だ>というフレーズがありますが、これこそロックだからこそできること、ですよね。

柳沢亮太:だからすごくロックバンド的思考というか。ギター、ドラム、ベースという楽器に電気をつないで大きな音を出して、それをデカい声で歌うという、それが悪霊退散と言っているという、すごく純粋なバンドという感じがするものを最後、作品の中に表現できたのは、すごくSUPER BEAVER的だと思いますし、これがあったのとなかったのとでは、相当違うだろうな、と思えるような1曲だと思います。

藤原”32才”広明:この曲は難しいことを考えずに、もうドーン!と全力を注ぐ感じですね。録り方もマイクをガンガン出して、ライブハウスのような状態で、一発でバン!とやるというか。「バンドや音楽は必要じゃない」と言われたりもしましたけれど、「そんなことはない。バンドっていいものなんだよ!」ということが、少しでも内包できたら、と思っています。


──みんなすごく踏ん張っているからこそ、早くこのアルバムがリスナーの皆さんに届いてほしいですね。今回完成したものに関して、SUPER BEAVERにとってはどういった意味があると感じていますか?

渋谷龍太:これまでちゃんと活動してきたうえでの過去出した盤も全部あったからこその「アイラヴユー」ができたな、と思ったうえで、リスナーの1人として、僕はこのアルバムが大好きですね。当事者ではありますが、その当事者というフィルターを取り払って聴けるアルバムができたので、個人的には客観的に人に勧めたいです。

それは今までなかなかできなかったんですよ。作品は自分たちにとって愛おしいものなので、主観的にしか見ることができない場面が多かったんですけれど、この「アイラヴユー」に関しては、100%客観的になるという不思議な経験を初めてすることができて。

こうやって15年音楽をやっていて、今その感覚を覚えられるというのは、きっとこの感覚を何も覚えられずに音楽を止めている人もいるだろうし。だから早い方なのかな、と思うんですけれど。1作品として向き合うことができたのは、自分たちの15年に胸を張れるものができたと感じていて。今まで以上に意味があるものができたのかな、と思ってます。


──さらに最初におっしゃったように「アイラヴユー」は2021年に出るんですけれど、これは時代を超えて、たとえば10年後は別の意味を持ってその時代の人たちの背中を押すのでしょうね。

渋谷龍太:そんな気がするんですよね。普遍的なことだけ詰め込まれてるような感じがするので。そうなったら最高だな、と。


──ある意味2020年があったからこそ、普遍性の大事さに気づかされたというのいうのも、ありますよね。

渋谷龍太:それは無視できないです。僕はこの出来事がなくとも歌える歌を、とずっと念頭においてますけれど、経験の一つとしては絶対あることだし、悔しい思いをたくさんしたので歯がゆかったし。今まで以上に感じたことないストレスを感じたので、その悔しかった思いという「負の遺産」で終わらせるだけでは、納得いかないという思いはあります。

あとは「あの時間があったからこそ、今はこうなれている」とすると、このアルバムもこの15周年のこのタイミングでボン、と出すことができたのは何かしらの意味があるし、今後も意味をつけ足していけたら最高だな、と思いますね。

TEXT キャベトンコ
PHOTO 井野友樹

SUPER BEAVER(スーパービーバー)。 渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“35才”広明(Dr)の4人によって2005年に東京で結成された。 2009年6月にEPICレコードジャパンよりシングル「深呼吸」でメジャーデビュー。 2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、···

この特集へのレビュー

この特集へのレビューを書いてみませんか?

この特集へのレビューを投稿

  • ※レビューは全角500文字以内で入力してください。
  • ※誹謗中傷はご遠慮ください。
  • ※ひとつの特集に1回のみ投稿できます。
  • ※投稿の編集・削除はできません。
UtaTenはreCAPTCHAで保護されています
プライバシー - 利用契約