嵐×米津玄師のコラボから生まれた応援歌
東京オリンピック・パラリンピックが開催予定だった2020年。挑戦を続けるアスリートや、これからの時代を担う若い世代を応援しようと企画されたのがNHK2020ソングです。
このプロジェクトの中で、国民的アイドル「嵐」と、日本の音楽界を席巻するクリエイター「米津玄師」のコラボが実現しました。
こうして誕生した『カイト』は、2019年の「第70回紅白歌合戦」で初披露され、大きな反響を呼びました。
米津は、2020年応援ソング『パプリカ』の作詞作曲も手がけ、子どもユニットFoorinの元気な歌声や可愛らしい振り付けが大人気を博しました。
続いて発表された『カイト』も、楽曲の根底に「頑張る人を尊重し、応援したい」という気持ちが感じられる応援歌となっています。
2020年12月31日をもって、活動を一旦休止した嵐。
最後の紅白で歌われた嵐のメドレーの中に『カイト』もありました。
米津は嵐のラストイヤーに自身が関われることを光栄に感じると同時に、『カイト』が長く残る曲となるよう願いながら制作したと語っています。
この楽曲を通して多くの人々が感動を分かち合えたことからも、愛され続ける楽曲になったのではないでしょうか。
歌詞を辿りながら、楽曲の持つ前向きなパワーの源を探ってみたいと思います。
「カイト」とはいったい何なのか
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小さな頃に見た 高く飛んでいくカイト
離さないよう ぎゅっと強く 握りしめていた糸
憧れた未来は 一番星の側に
そこから何が見えるのか ずっと知りたかった
≪カイト 歌詞より抜粋≫
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幼少期に一緒に遊んだカイトは凧揚げのことです。
カイトは空高く舞い上がり、気持ちよさそうに大空をたゆたいます。
高く上がれば上がるほど風の抵抗を感じ、どこかに飛ばされてしまいそうになりぎゅっと強く糸を握りしめます。
主人公が夢見る未来は一体どんな世界なのか。
そこから眺める風景はどれほど煌いて見えるのか。
想像ばかりが膨らみ、好奇心はとどまる所を知りません。
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母は言った「泣かないで」と
父は言った「逃げていい」と
その度にやまない夢と
空の青さを知っていく
≪カイト 歌詞より抜粋≫
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道の途中で挫折を感じた時、両親が掛けてくれた言葉が優しく心に染み渡ります。
意外にも、それは「決して諦めるな」とは正反対の言葉でした。
しかし、主人公はその言葉を思い出すたび、夢に対する自身の渇望を意識するようになります。
それは、まるで吸い込まれるほど青い空のようです。
『らるらりら』の意味とは
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風が吹けば 歌が流れる 口ずさもう 彼方へ向けて
君の夢よ 叶えと願う 溢れ出す ラル ラリ ラ
≪カイト 歌詞より抜粋≫
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追い風が背中を押してくれるような、爽快感のあるサビです。
応援歌らしさがぎゅっと詰まったパートでもありますよね。
最後に「ラルラリラ」という言葉がついていますが、これには一体どんな意味が込められているのでしょうか。
米津自身の楽曲にも時折このような意味を持たないフレーズが登場します。
これは、言葉に出来ないけれど、なんとか届けたい想いを具現化し、このような言葉が並んだのではないでしょうか。
それは祈りにも願いにも似たような感情なのかもしれません。
嵐の持ち味は、ユニゾンのシンクロ率です。
それぞれ個性豊かなメンバーですが、5人の歌声を重ねると、まるで1人の人間が歌っているように聞こえます。
「カイト」に託された想い
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小さな頃に見た 大きな羽のカイト
思い出よりとても古く 小さい姿でいた
≪カイト 歌詞より抜粋≫
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かつて見た大空を舞うカイトが、幼少期にはとても大きく見えていました。
大人になった今、改めて思い出のカイトを手に取ると、想像よりもとても小さく感じられました。
この印象の差は、主人公がいつの間にか成長した様を表しています。
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嵐の中をかき分けていく小さなカイトよ
悲しみを越えてどこまでも行こう
そして帰ろう その糸の繋がった先まで
≪カイト 歌詞より抜粋≫
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荒波の中を耐え忍びながら何とか突き進む小さなカイト。
それは主人公自身を表現しているのでしょうか。
どんなことがあろうとも飛んでいこうとする前向きな気持ちが現れています。
そして、遠く果てしないところまできたとしても、糸の先を辿ればいつでも故郷が待っています。
メンバーにとって「糸の繋がった先」にある故郷とは「嵐」を指しているのではないでしょうか。
故郷へとつづく「道しるべ」
全体を通してストリングスの美しい響きが印象的な『カイト』。
特にサビの部分は、決して派手な構成ではないにもかかわらず、期待に胸を高鳴らせるような高揚感を感じさせます。
最後の瞬間まで前向きなエネルギーを世界中へ送り続けてきた嵐。
彼らがまたいつか5人で揃う時、この『カイト』は、帰るべき場所まで続く「道しるべ」のような楽曲になるのかもしれません。
TOP画像引用元:amazon
TEXT kawer