自分の表と裏を歌う、1セットの2曲
──1stアルバム『Cʼest Parti !!』は遊園地がテーマでしたが、今回は『Mystère』というタイトルにちなんだテーマなのでしょうか?
山崎はるか:そうです。謎解きを入れたい、という思いがありました。フランス語で謎に関連したかわいい言葉はないか探していた中で、『Mystère』がかわいくてちょうどいいなと思ってつけたんです。
──テーマを謎解きにしたいと思ったきっかけは?
山崎はるか:謎解きがとても好きなので、私の好きなことをつめこみたいという思いがあったんです。あと謎解きだったら、"自分の謎を解く"というコンセプトのアルバムになって、曲のイメージも広げやすいんじゃないかな、と考えたという理由もあります。
──山崎はるかという存在の謎を解く、ということですか?
山崎はるか:はい。私の内面、たとえば恋愛面や好きなものなど、このアルバムの1曲1曲を聴いていけば、その謎が解明されるようにしたくて。山崎はるかって、こういう人なんだというのが分かるように作ったイメージです。
──その謎解きの第1弾が、最初の曲『L’essence -メルシィモード-』になるわけですね。
山崎はるか:実は1曲目と2曲目が対になっているので、どちらかというと2曲でセット、という感じではあります。
──『L’essence -メルシィモード-』と『Doux poison -セシボンキブン-』の2曲とも、こだまさおりさんが作詞されています。
山崎はるか:はい、2曲一緒にお願いしました。言葉を選ばずに分かりやすくいうと、“表の顔と裏の顔”という意味です。
別にどちらも作っているものではなく、表の顔というのも決して取り繕っているわけではないんですよ。
“仕事をしていくうえでこうありたい”という気持ちがしっかりある一方で、“活動していく中で、こんなふうに思うこともあるんだ”という面も表現したかったんです。
2曲目の“こう思っていることもある”という方(『Doux poison -セシボンキブン-』)は、ツンデレでいうと“デレ”の部分も少し入っていますけれど(笑)。
──なるほど。そしてこの2曲の根底にあるのは、“私らしさ”や“ありのまま”なんですね。
山崎はるか:そうです。どちらも嘘じゃないことを伝えるために、両方入れていただいたというか。どっちも私らしい部分だから受け入れて欲しいなという気持ちですね。
──1曲目はオープニングを飾る、キラキラナンバーになっています。
山崎はるか:「自分はこうありたい」という面を出している楽曲なので、「ザ・アニソンというイメージの曲調がいいです」とお願いして作っていただきました。オタクな自分としては客観的に聴いた時にもすごく好きな曲だったので、聴いてくれる人たちもきっと「これは好きだ」と感じてくれる曲なんじゃないかと思います。
──前作もタイトルがフランス語でしたが、山崎さんといえばフランス語というイメージがあるのでは?
山崎はるか:フランス語は話せないんですけれど(笑)。そのイメージがあるのはうれしいです。フランス語の語感がすごく心地いいなあと思っていて。フランスの土地も好きです。1回行ったことがあるんですけれど、その時に「住んでもいいなあ」と感じたんですよ。
──フランス語はちょっと鼻にかかったようなしゃべり方ですよね。
山崎はるか:コロコロと転がるような、あまりトゲがない感じが、すごくいいんですよね。結構、裏の顔で少しきついところを言っているところも、「C’est si C’est si C’est si bon」とか、「Doux ぷわ doux douxぷあ」とか入れると、ちょっと柔らかく、マイルドになりますよね。
──ちなみに先ほど2曲目の方は「こういう面もある」といった面を表現しているということでしたが、たとえばどんな面にあたりますか?
山崎はるか:SNSを見ると、ファンの方が私に対して抱いているイメージが分かるじゃないですか。でも「私はそんなにきれいな人じゃないよ」と思ったりするので。
──具体的にはどんなところでしょうか?
山崎はるか:私は陽キャというか「コミュ力が高い」みたいに言われるんです。金髪だし明るい曲も多く出しているからそう思われがちなのですが、まったくそんなことはなくて。人見知りもすごくて、見知らぬ人と話すのは、縮こまってしまって苦手なんです。
ただ仕事においては楽しくやった方が絶対にいい、という思いがあるので、「お話しましょう」とか「一緒にご飯を食べよう」と自分からコミュニケーションを取りにいくんですね。それを相手の方が「この間、山崎さんとごはんに行ったんだ」とか「楽屋でいっぱいしゃべったよ」と言ってくださるので、「コミュ力が高いんだ」と捉えられているんだと思います。
──なるほど。歌詞の中に「ありのままのおたがいさまで よろしくね」とありますが、山崎さんだけではなくて、聴いている人も本音が別のところにあったりするから、おたがいさまだよね、というメッセージも入っていますよね。
山崎はるか:そうです。私を見て、マイナスの感情もプラスの感情もたぶんあると思うので、そのへんはおたがいさまだよね。だからこそよろしくねという感じで。この歌詞がすごくいいなと、思いました。
──これまでこだまさんの歌を歌ってきて、新たに発見したことは?
山崎はるか:こだまさんはとても尊敬している作詞家さんで。私は結構、キャラソンを聞くことも多いんですが、アニソン界の中でこだまさんのキャラクターの描き方が特に好きなんです。
そして、こだまさんが私より私を理解してくださっているな、と毎回思います。
「こういう歌詞がいいです」というリクエストをお送りするんですけど、その要望を私より深く理解してくれて。
だから歌詞になった時、「そうそう! こういうことを言いたかったんだよね」というものが返ってくるんです。
だからこだまさんの歌詞は不思議で、すごいなと思います。
──この2曲の中では、特にどこの部分ですか?
山崎はるか:『L’essence -メルシィモード-』は、特に最初の歌詞ですね。「過去と未来と、今を繋いでる わたしらしさ」というのは、前からずっと思っていることだったので。
過去も未来も今も、全部つながっているんですよね。全部必要な時空なので、この歌詞がド頭にあるのは、すごくいいなと思いました。
こだまさんの意図とは違うかもしれないんですけれど、歌うときに勝手にそう思いました。
そして2曲目は全部と言いたいんですけれど……。
「ありのままのおたがいさまで よろしくね」は「そろそろあきらめてね。全部私だから」というのを伝えたくて。
私、ファンの方のことを“まるぴ”と呼んでいるんですけれど、“まるぴ”と自分で言ってくれている方々は、これを「そうそう」と一緒になって言ってくれるような感じがすごくありますね。