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大滝詠一「君は天然色」歌詞の意味とは?悲しい実話から生まれた歌詞に迫る

1981年に発売されてから今なお愛される不朽の名曲である大滝詠一『君は天然色』。爽やかなこの楽曲の制作の裏には、ある悲しいエピソードがありました。その誕生秘話から歌詞の意味を考察します。

大滝詠一の名曲がTVアニメ「かくしごと」のEDテーマに

▲大滝詠一「君は天然色」Music Video
J-POP界の礎を築いたアーティスト・大滝詠一が歌う『君は天然色』。

作曲を大滝詠一が、作詞を太田裕美の『木綿のハンカチーフ』や松田聖子の『赤いスイートピー』など数々のヒット曲を手がけた作詞家・松本隆が担当した昭和の名曲です。

これまで多くのCMソングに起用され、名だたるアーティストのカバー曲として用いられるなど令和になっても愛され続けています。

どの世代の人も一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

さらには2020年の春アニメ『かくしごと』のエンディングテーマに起用されたことで、若い世代にも楽曲の美しさと作品との親和性が注目されています。

『君は天然色』の魅力は、気分を盛り上げるイントロから始まる爽やかなサウンドと、軽やかのにどこか物悲しさが漂う歌詞にあると言えるでしょう。

例えば1番の冒頭の歌詞はこのようになっています。


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くちびるつんと尖らせて
何かたくらむ表情は
別れの気配をポケットに
匿していたから
≪君は天然色 歌詞より抜粋≫
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ある少女が見せた表情をみずみずしく切り取った素敵な歌詞ですが、「別れの気配をポケットに匿していた」とあるように、主人公と少女はいずれ別れてしまう関係であることが表現されていますね。

実はこの楽曲には、ファンにはよく知られた悲しい誕生秘話があります。

大滝は1980年の自身の誕生日に発売する予定のアルバム『A LONG VACATION』の制作の際、かつてロックバンド・はっぴいえんどで共に活動した盟友である松本に作詞を依頼しました。

しかしその頃、松本は幼少期から心臓が弱かった妹の看病と大スランプで作詞ができなくなり、アルバムの発売は延期されることに。

さらに妹が26歳の若さで世を去ってしまい、大切な家族の死に直面した松本はショックで言葉が出なくなってしまったそうです。

そのため作詞を断ろうとしましたが、大滝の強い希望と励ましにより引き続き制作にあたることに。

そうして生まれた楽曲がこの『君は天然色』です。

失恋ソングというイメージがあるこの楽曲ですが、本当は松本が亡くなった妹に宛てて書いた歌だったのです。

この楽曲が令和のアニメ『かくしごと』にもマッチするのは、作品の内容が家族という不変のテーマを描いていることや、娘の無垢さや尊さが歌詞の少女と通じるところがあるからかもしれませんね。

君を失った世界はモノクロームに見える


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机の端のポラロイド
写真に話しかけてたら
過ぎ去った過去
しゃくだけど今より眩しい
≪君は天然色 歌詞より抜粋≫
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「ポラロイド」とは、楽曲制作当時まだ主流だったインスタントカメラのこと。

主人公はいつか撮影した彼女の写真を眺めていました。

「過ぎ去った過去」は色褪せていくものですが、この時ばかりは「今より眩しい」と感じます。

それは、彼女を失った今に輝きを感じられないから。

そのためにかえって思い出が美しく見えてしまうことに、表現しがたい不快感を抱いているようです。


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しゃくだけど今より眩しい
色を点けてくれ
もう一度そばに来て
はなやいで美しの
Color girl
≪君は天然色 歌詞より抜粋≫
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サビの「想い出はモノクローム」という印象的な歌詞は、松本自身が感じたことを記した言葉だそう。

妹が亡くなった時、「好きな喫茶店、レコード店が並ぶ渋谷を歩いていると、目の前の光景が白黒に見えた」と語っています。

色鮮やかだったはずの想い出の風景が、まるでポラロイド写真のように色を失ってしまう。

大切な人を失った時の喪失感の大きさを、昭和という時代の空気と共に味わせてくれる歌詞です。

だからこそ「色を点けてくれ」という痛切な願いが響いてきます。

灯りをともす時に使われる「点ける」の漢字が使われていることから、彼女といた時間の温かさや穏やかさが想像できるのではないでしょうか。

彼女を「美しの Color Girl」と呼んでいるように、彼は彼女がいたから周囲のものが色づいて見えていたのだと感じているようです。

何色でもいいから色を失ったこの景色を染めてほしいとの願いは、もう一度でいいから彼女の存在を感じたいというあふれる想いを美しく表現しています。

夢で良いから君に会いたい


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夜明けまで長電話して
受話器持つ手がしびれたね
耳もとに触れたささやきは
今も忘れない
≪君は天然色 歌詞より抜粋≫
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離れている時間を惜しむように夜明けまでした長電話。

「受話器持つ手がしびれた」ことさえ、彼女とのかけがえのない想い出です。

遠くにいても近くに感じられるだけでなく、面と向かっては言えない正直な気持ちを打ち明けるのにも電話は役立ったことでしょう。

彼女が伝えてくれた言葉が、彼の中に大切に残っていることが伝わってきます。


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開いた雑誌を顔に乗せ
一人うとうと眠るのさ
今夢まくらに
渚を滑るディンギーで
手を振る君の小指から
流れ出す虹の幻で
空を染めてくれ
≪君は天然色 歌詞より抜粋≫
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一人になった彼は、雑誌を読むでもなく、うたた寝をしています。

優雅な時間にも思えますが、続く「今夢まくらに 君に会うトキメキを願う」という歌詞から、彼女の姿を見たいがために眠ろうとしていると考えると、その愛情の深さと健気さが切なく感じられるでしょう。

そして、実際に夢で会うという願いは叶ったようです。

「ディンギー」は小型の船のことなので、ボートに乗った彼女が浜辺にいる彼に向って手を振っている情景が目に浮かびます。

きっと夢の中はカラフルで「小指から流れ出す虹の幻」が華やかに彩っているのでしょう。

ここで言う「空」は現実の空のことと考えられます。

雑誌で隠して見えないようにした色のない空が、目覚めた時には美しく染まっていてほしいと願っているのではないでしょうか。

景色がどんなに色をなくしても、記憶の中で生きる彼女はいつまでも混じり気のない天然色

いつか彼女がいた時のような色とりどりの世界が見られる日が来てほしいという、未来への前向きな気持ちも垣間見える歌詞ですね。

「君は天然色」は時代を越えて愛される名曲


『君は天然色』は、松本隆の妹を想う愛情が詰まった歌詞と、大滝詠一の歌詞に寄り添うような温かい歌声が心に響く名曲です。

アニメ『かくしごと』のイメージアルバムでは、声優陣によるカバー曲が収録されており、アニメと楽曲の世界観の調和を楽しむことができます。

さらに、2021年7月9日公開の映画『かくしごと―ひめごとはなんですか―』のエンディングテーマにも起用されることが決定しており、今後も『君は天然色』の魅力が広まり続けることでしょう。

時代を越えてもなお、みずみずしく光る音楽の世界に酔いしれてください。

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