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【インタビュー】SUPER BEAVER「僕らのあゆみに、またひとつ筋が通った」 (1/2)

今夏、注目の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌でもあるSUPER BEAVERの新曲『名前を呼ぶよ』。物語のキーとなるタイムリープの要素も取り入れたこの曲は、制作の初期段階から、得体のしれない気を放っていたという。

歌が乗った瞬間にミラクルが起こった

──ニューシングルのタイトル曲『名前を呼ぶよ』は、7月9日から公開される映画『東京リベンジャーズ』のテーマソングとなっています。一瞬こもった音が入るようなイントロから始まり、怒涛のように広がっていくエモーショナルな楽曲ですね。


柳沢亮太:今回は映画の主題歌でもあり、タイムリープが一つのテーマになっていたので、音楽的に“SUPER BEAVERのあゆみ”みたいなものをこの楽曲で表現できそうだ、と思ったんです。

実は2007年に初めて全国流通させてもらったインディーズ版の6曲入りCDアルバム(1stミニアルバム『日常』)に、途中まで入れるつもりで作っていた幻の7曲目みたいなものがあって。そこで『名前を呼ぶよ』の冒頭のアルペジオのイントロに、当時とまったく同じではないけれど、モチーフとしてその幻の曲の要素を持ってきたんです。

つまり初めて出した作品に入るかもしれなかった音楽を、今の自分たちの中に少し取り入れることで、SUPER BEAVERのあゆみにさらにまた一本、筋が通ったというか。“ずっとこういう音楽をやり続けているんだな”という意味も足せたような気がします。さらにそういったタイムリープ、数年飛ぶというところから、アイデアとして“ラジオトーンぽいものみたいなのも少しあったらいいな”と思って、ラジオトーン的要素も入ったイントロになりました。

▲SUPER BEAVER 「名前を呼ぶよ」MV


──まさにSUPER BEAVERの歴史が入っている、と。そして「苛立ち 八つ当たり 後悔したり 同時に手を叩き 笑い合ったり」といった歌詞のところで、大きく心を揺さぶられます。

藤原”33才”広明:この歌詞のところはみんなでそろってせーので音を出して、リーダーがその場でいろいろなベースのフレーズを変えてきたんです。だから僕もその場で思いついたままベースと合うように展開をつけて。事前に準備してきたものをというより、その場で感じたものだったり、詞の世界観を感じながら素直にアレンジした、という感じではあります。

柳沢亮太:言葉にしづらいんですけれど、この曲は最初から不思議な気を放っていたというか。楽曲が醸し出す“得体のしれないぐっとくる感じ”みたいなのは、わりと序盤からあって。レコーディング前の準備のアレンジを固める作業の時、どんどんゾクゾクとしてきたんです。とどめで渋谷がレコーディングの前に仮歌的なものをボンと入れた瞬間に、一気にボッとドキドキみたいなものが爆発したというか。

もちろんこれまでに作った曲も、それぞれメンバー自身が感動する何かがあるんですよ。ただ『名前を呼ぶよ』という楽曲は、渋谷が歌を歌った瞬間に、“これはものすごい曲ができるぞ”という予感がしたんですよね。それは藤原が言ったように、曲が呼んでくれている方向といったものが、全体を通してあった気がしていて。なのでそれぞれのやっていることが自然と連動していって、ちょっとしたミラクル感があったような気がします。


──そのミラクル感は聴いている立場でも伝わってきます。特にサビの渋谷さんの声の乗り方に、命の輝きの美しさ、といったものを感じました。今回の歌を入れる時、渋谷さんはどんなことを考えられていましたか?


渋谷龍太:こればかりは、本当に出たとこ勝負です。それは前準備なしでいきなり挑んだ、という意味ではなく、3人の演奏に自分がどんなふうに乗るのか、どんなふうに歌うのか、という予想は大概当たらないんです。だから毎回“どんなふうになるのかな?”と思いながら歌っていて。

今回もその気持ちはずっとあったのですが、歌っている時に“何かが起きた”と感じたんですよね。でもこれはねらってできることではないし、バンドを続けていて何度もある経験ではないと思うので。貴重な体験だったし、こういう手応えを得ることができるのは、すごくうれしいと思いました。


──演奏しているご自身たちが感じることのできる、至福の時ですよね。

渋谷龍太:おそらくこれを1人でやっていたら、ある程度の想像はつくと思うんですけれど、4人が集まってやっていることなので。それぞれの個がぶつかり合い混じり合った結果、生み出されるものだから、やはりこれはバンドならではなのかな、と思います。

上杉研太:何か不思議なんですけれど、この曲はアイデアや想像といったものが7割ぐらいしか浮かばなくて。だいたいベースを考える時は、“その曲はこれしかないだろう”というものを全部決め込んで行きますが、今回はそういうものが浮かばずに、でもある程度のことを考えたうえで臨んで。そうしたらその場でどんどん構築していくことができて、その曲自体の人物像が次第に明らかになった。最終的に渋谷が歌を入れた時に、“そういう顔してたのね”といったように初めてこの曲の全貌が見えたんです。

この感じは1人でベースを考えるといったやり方ではできなかった。それはバンドの良さというか。バンドをやめられなくなる、という瞬間に立ち会えた感じはしました。


名前を呼び合うことで生まれるもの

──タイトルは『名前を呼ぶよ』ですが、なぜ「名前を呼ぶ」といったことに注目されたのでしょうか?


柳沢亮太:今回映画の主題歌ということもあって、もちろん作品と自分たちSUPER BEAVERとでリンクするところは何だろうな、ということを最初に探すんですけれど、今回に関しては自然にというか。自分のためだけではなく誰かのために、何かのためにということが原動力になる気持ちは、改めて素敵なことだなと感じて。“それって何だろう?”というところから、今一度、出会いにフォーカスを当てて歌を作りたいな、と思ったのがきっかけでした。

それのモチーフとして、名前を呼ぶ、名前を呼ばれる、名前をお互いで呼び合うのは、出会わないと起こり得ないことだな、と。しかも出会うというのも、ただすれ違ったり一度挨拶を交わしただけというよりも、そこを起点として、その後も続いていく関係というか。その関係があるからこそ、名前を呼び合ったり、そこで生まれてくるいろいろな気持ちがあるんだ、と改めて思って作り始めました。


──それから歌詞の中でとても心に残ったのが「命の意味だ 僕らの意味だ」という箇所です。「名前」と「命」はどうつながっていると思われますか?

柳沢亮太:僕が書いた時に思ったのは、やはり名前はその人であることの一つの証拠というか、強い意味合いだと思うので。これまでSUPER BEAVERは“自分は自分であり、あなたはあなたである”ということをあらゆる角度から歌ってきたバンドであると思うんです。渋谷が「あなたたちではなく、あなたに」と言うこととも、すごく通じてくる話だと思うんですけれど、やはりその人のみを象徴するものが名前にはあると思っていて。そういったところは、今一度ちゃんと歌にしたかったというか。

名前というのはその人を象徴する一つのものだと思うし、誰かに名付けられた時から込められている思いがあって。そして人と出会い、名前を呼ぶ、呼ばれることで、どんどんその人でしかない理由が増えていく。だから「あなたの意味を 僕らの意味を」の部分は、すなわち命そのものの意味になるんじゃないかということが、作詞をするうえでの最初のリンク点でした。


──ちなみに皆さんが初めて出会った時、名前はどう呼ばれていましたか?

柳沢亮太:そもそも渋谷と上杉は先輩なので、最初は普通に「渋谷先輩」「上杉先輩」でした。僕とヒロ(藤原)は幼稚園から一緒で、「ヒロくん」と呼んでいたのが少しずつ「ヒロ」に変わっていったんです。

上杉研太:ヒロはやなぎ(柳沢)のことを最初は何て呼んでいたの?


藤原”33才”広明:「やなぎくん」じゃないかな。

上杉研太:「亮太くん」とかじゃなくて、やっぱり「やなぎ」なんだ。

柳沢亮太:「亮太くん」はなかったよね。

藤原”33才”広明:そう。それでぶーちゃん(渋谷)とリーダーは、電話帳とかにもたぶん「渋谷くん」とか「上杉くん」と入っていた。僕は高校が違ったので、本当に1つ上の人、という感じでした。


──いつからフラットな呼び方になったのでしょう?

渋谷龍太:一緒にバンドをやっていくので、年齢が上とか下といったことはいらないと思ったから、「そういうのは気にしなくていいよ」とかなり早い段階で言ったのがきっかけです。

柳沢亮太:でも僕はいきなり「渋谷先輩」から「渋谷くん」とは言えなかったので、無理やり「あだ名で言わせて」と頼んだんですよ。でも「ずっと『渋谷』か『龍太』で呼ばれ続けてきたから、あだ名はない」と言われたので、無理矢理「ぶーやん」というあだ名をつけて。最初こそみんな「なんだよ、それ」みたいな感じで呼びづらかったんですけれど、頑張って「ぶーやん」と呼んでいたら、それが定着していったんです。

リーダーはリーダーだったので、「上杉くん」というより「リーダー」の方が話やすかったから、そのままリーダーで。ヒロもたぶんそこらへんから、「ぶーやん」「ぶーちゃん」、「リーダー」になっていったんじゃないかな。

渋谷龍太:名付け親です。

柳沢亮太:(笑)。でもこんなに浸透するとは思わず。

上杉研太:渋谷も「絶対定着しない」と言っていたよね。

渋谷龍太:間違いなく定着しないと思ったんですけれど、しましたね(笑)。でも僕が「渋谷」のままでいたら、たぶん自分たちの音楽を聴いてくださる方やライブに足を運んでくださる方も、とっつきにくい部分があったと思うんです。あだ名があることによって距離が縮まった気もするので、今では「さん」とか「くん」をつけなくて呼べる名前が一つあって良かったなと思っています。


──名前といえば、渋谷さんは「澁谷逆太郎」という活動名義でソロプロジェクトを行っていますよね。


渋谷龍太:あれにいたってはバンドを組んだ時が高校生だったので舞い上がっていたんだと思うんですけれど、夢にまでバンドが出てきて。その時にメンバー3人に「本名でバンドをやるのカッコ悪いから、名前つけて」と言われて夢の中で考えたんだけれど、出なくて。そうしたら3人が「俺たちで考えるからいいよ」と言って、話し合いの末「今日から逆太郎になりました」というところで目が覚めたんですけれど。

柳沢亮太:ははは!

渋谷龍太:バンドを組んだ時、初めてブログを書いていた時から「逆太郎」という名前を使っているので、何らかの意味があるんじゃないのかなと勝手に思って。なんとなくズルズル引きずってしまった、というだけなんですけれど。


──ご自身の中でしっくりきたのは、いつくらいからですか?

渋谷龍太:何か最初から「逆太郎、いいな」と思っていて(笑)。自分で考えていることだから、3人に聞いても何の意味があるのかもたぶん分からないし。


上杉研太:それは身に覚えがないからね(笑)。

渋谷龍太:俺の夢の中で3人がしゃべっているから。ただ、3人がつけてくれた名前だし。

柳沢亮太:つけてないけどね(笑)!

渋谷龍太:そう、つけてないけど。俺の中で3人がつけてくれた名前だから、まあ何かあるのかなと思って、勝手に大事にしているんですけれど。


──すごく不思議な話ですね。自分もペンネームを使っていますが、こういった異なる名前は皆さんどうやってつけているのかな、と思って。


渋谷龍太:バンド名とか自分に異名をつけるのは、かなり不思議なことですよね。与えてもらった名前ならすんなり受け入れられるんですけれど。だって4人で集まって「SUPER BEAVERと呼んでくれ」と、自分たちで言うわけですよね。かなり不思議だな、と思って。

上杉研太:ははは!

渋谷龍太:でも何かの口火を切ったりとか、そこから何かがはじまるきっかけの0地点になったりすると考えると、すごく愛おしいものだな、と。まあ、人間ってかなり不思議なことするな、とは思っていて。だって4人で集まって「バンド名、何にする? SUPER BEAVER にしよう」といって、「僕たちのことをSUPER BEAVERと呼んでください」と最初に言うわけじゃないですか。“何それ?”と思うんですけれど、そこからいろいろなものがスタートしていくのだとすると、すごく愛おしいものだなと。ただ、起点としてはかなり奇怪なものだな、とは思ってます。


──本名というのは人からもらうものだけれど、バンド名とか、自分の意志で何か始めようとする時は、自分で名乗らなきゃいけない。

渋谷龍太:それって不思議ですよね。でも子どもにつける名前もそうですけれど、そこには何かしら願いがあって。“こういうふうに呼んでくれたらいいな”と言って、呼んでくれるものがどんどん広まっていって、名前=認知になって。そこから始まる歴史があって、と考えると、本当にこれがなければ始まらないことがたくさんあると思うので、何か不思議なものだなと、今でもずっと思っています。

柳沢亮太:今、渋谷の話を聞いて改めて思ったんですけれど、それが積み重なるから、やっぱり意味というものが生まれてくるんでしょうね。このワードを聞くと何を連想するか、みたいな。「〇〇さん」と呼ばれた時に、誰の顔を思い浮かべるかというのは、やっぱりその人の意味になっていってることを、改めて感じましたね。


──ちなみに今回の『名前を呼ぶよ』は映画『東京リベンジャーズ』の主題歌になっていますが、原作の『東京卍リベンジャーズ』を含めて特に好きなキャラクターを教えてください。


上杉研太:僕はドラケン(龍宮寺堅)好きです。セカンド的な立ち位置で、男らしく強い、みたいな。ああいうキャラクターは大好物です。

柳沢亮太:僕は場地(圭介)くんが好きですね。登場人物としては主人公ではない。けれど彼の精神が、この作品の根幹にあるんじゃないかな、と思っていて。そもそも主人公たちが属するリベンジャーズというチームの価値観を作ったのも、僕はそのキャラクターだな、と思いますし。誰かを思うとか、誰かを思うが故の行動みたいなところで一番濃い部分を持ってるのが、場地くんというキャラクターで。その気持ちがいろいろな人に伝わっているところが、この物語の根幹を支えているような気がしていて。あとは圧倒的に筋を通し続ける感じに、僕はすごくひかれました。

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SUPER BEAVER(スーパービーバー)。 渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“35才”広明(Dr)の4人によって2005年に東京で結成された。 2009年6月にEPICレコードジャパンよりシングル「深呼吸」でメジャーデビュー。 2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、···

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