家なき子で話題になった『空と君のあいだに』
中島みゆきの名曲、『空と君のあいだに』。力強く印象的な歌詞で、カバーしている歌手も多い。そのなかでも絢香のカバーは、原曲の雰囲気がきちんと声で表現されていて、好感が持てる。
●『空と君のあいだに』/ 絢香カバー
"君"と"僕"の視点
この曲は、「君」をじっと見つめる「僕」の視点から書かれている。歌詞を読んでいくほどに、「僕」という人物の強い思い、そして静かな怒りが伝わってくる。空と君のあいだに
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君が涙のときには 僕はポプラの枝になる
孤独な人につけこむようなことは言えなくて
君を泣かせたあいつの正体を僕は知ってた
ひきとめた僕を君は振りはらった遠い夜
≪空と君のあいだに 歌詞より抜粋≫
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「空と君のあいだに」にでてくる「僕」は、「君」のことを、ただひたむきに見守っている男。「もしも君が泣いたら、僕は雨から君をかばうポプラの枝のように、君をそっと包むだろう。ただ何も言わず、そっと」。
「君」とは親しい間柄だが、たぶん、「君」の恋愛対象からは外れているのだろう。「君」は違う男の元へ行ってしまい、そいつに泣かされてしまう。
「あいつが酷い奴だっていうこと、君が泣くことになる前から知っていた。だから引き止めたけれど、君は僕を振りはらって行ってしまった」。
「僕」の優しさは時に無力で、「君」を引き止めることすらできないのだ…。
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ここにいるよ 愛はまだ
ここにいるよ いつまでも
≪空と君のあいだに 歌詞より抜粋≫
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「僕」はただひたむきに「君」を愛している。いつまでもいつまでも愛している。けれど「君」は「僕」に振り向いてはくれない。
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空と君とのあいだには今日も冷たい雨が降る
≪空と君のあいだに 歌詞より抜粋≫
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空と君とのあいだに降る冷たい雨は、「君」が流す涙のこと。「君」は悲しみに暮れ、泣き暮らしているのだろう。なぜ「君」はそんなことになってしまったのか。
男に騙される、女の哀れな姿
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君の心がわかる とたやすく誓える男に
なぜ女はついてゆくのだろう そして泣くのだろう
君がすさんだ瞳で強がるのがとても痛い
憎むことでいつまでもあいつに縛られないで
≪空と君のあいだに 歌詞より抜粋≫
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女の気持ちに調子を合わせ、自分のいいなりにさせ思い通りに扱おうとするような、そんな酷い男。その男に騙されてしまった女。
そんな女をじっと見守っていた「僕」。傷つくだけ傷ついて戻ってきた女は、すさんだ瞳をしている。男に傷つけられた女の、哀れな姿。
この部分の「僕」の視点で描かれるのは、「君」という存在を媒介にした、女という生き物の哀れさだ。いつの時代も、女はろくでもない男にひっかかり、そして泣かされる。
「僕」はそんな女を冷静に見ている。男を憎むことで、いつまでも男に縛られている女を、縛られていてはだめだと諭している。
僕は何者?
「僕」というのは何者なのか。ふつうに考えたら「君」に想いを寄せる、「君」に近しい男性ということになるだろう。だが、こういう見方もできないだろうか。
男に騙された哀れな女性を見た中島みゆきの、何処にもやり場のない怒りを具現化したものなのではないだろうか、と。
空と君のあいだに降る冷たい雨。雨に打たれる痛々しい女の姿は、悲しみに暮れるすべての女性たちなのだ。この歌に自分の過去を重ね合わせる女性も、少なからずいるだろう。
そんな女性に必要なのが、「君」をやさしく見守る「僕」という視点なのだ。
TEXT:毛布
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