でんぱ組.incの『サクラあっぱれーしょん』は春の到来をつげるサクラ曲。桜ソングは日本にたくさんありますが、この曲はかなり明るく賑やかなスタイル。このグループが知名度を上げてきたタイミングでリリースされた曲なので、そのグループの勢いも反映されています。作詞作曲はWinnersの玉屋2060%。でんぱ組の代表曲『でんでんぱっしょん』も提供している彼は、もはやでんぱ作家と言ってもいいでしょう 。
日本の春に桜が舞う風景をでんぱらしく明るく歌う曲。「めっちゃくちゃのドキュメンタリー それがぼくらにとってのファンタジー」などリズム感がいい曲。そしてタイトルとMVのイメージで桜ソングな印象がありますが、実は「桜」のフレーズはラストにしか出てこない曲です。
「百花繚乱 大和撫子たちよ どでかい花火を上げましょね」
ここのフレーズはリズムパターンが変わり音頭になります。こういった思い切ったアレンジもこのグループならでは。「百花繚乱」と「花火」で「花」という単語を示し、この曲の終盤で出てくる「桜」の伏線を作っています。
「マイナスも味方にしちゃうのだ」という歌詞はこのグループそのもの。「マイナスからのスタート」を口にするこのグループのメンバーは必ずしも明るい青春をおくってきたわけではありません。いじめられたり、不登校でずっと引きこもっていたり、そんな経験があるメンバーばかり。「マイナスからのスタート 舐めんな!」と自身の持ち曲『W.W.D』の歌詞にまでなっています。そのあたりを知っている人にはこの1フレーズは響くでしょう。
「桜舞い散る季節と歌いましょう 君といつかまた出会うその日まで」
この終盤でようやく「桜」が出てきます。「桜舞い散る季節」と歌うことで春を祝う。桜、日本の季節へのリスペクト。
「だから意地っ張りさんも 照れ屋さんも 八百屋さんも あなたも
忘れないで ばいばいさようなら」
このラストのフレーズで「八百屋さん」が出てきます。これは「照れ屋さん」に対する語呂の良さで選んでいるフレーズ。そしていわゆる野菜を売る八百屋さんの意味にとどまらず、八百万(やおよろず)に対するリスペクトを込めているフレーズです。ヲタク文化で育ったこのグループは、自然と八百万に対してのリスペクトを秘めている。八百屋さんとは八百万の神。
「森羅万象 歌え日本 踊れ日本」というフレーズもあるように、せまいアキバカルチャーからスタートして「森羅万象」へ呼びかけています。それは実際のところがどうであれ、その心意気を持っているということが重要。「古今東西羽ばたくんだ 聞こえるんだ」というフレーズも同様。やたらスケールの大きい四字熟語を選んでいるのは、このグループにそういう期待感があるから。この曲は桜ソングである以上にこのグループの自己紹介ソングでもあるんですね。
ちなみにこの曲は、現在大ヒット中のアニメ『おそ松さん』の非公式替え歌MAD『ムツゴあっぱれーしょん』が存在します。このやたら出来の良い替え歌が誕生するほど、原曲が優れていることが分かります。くしくもでんぱ組も6人組。ムツゴと6対6で合コンできます。やはりでんぱはヲタカルチャーと相性が良いんですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)