赤い公園の『のぞき穴』は、ホラーオムニバスドラマ『呪報2405 ワタシが死ぬ理由』の主題歌だった曲。勢いがあり、盛り上がる曲です。赤い公園は2012年デビューの4人組ガールズバンド。演奏のスキルが高く、凝ったアレンジが特徴です。
“顔には出すな えくぼを隠せ
詰まらぬ音頭を 馬鹿みたいにとっていて
空には言うな 歌にもするな
自慢、愚痴、集会に出てはなりません!”
禁止事項が並ぶ歌詞。顔には出すな、えくぼを隠せというのは結構ひどいですね。さらに、空には言うな、歌にもするな、と来て、自慢も愚痴も集会に出ることも禁止されます。前半は、世にはびこる無意味な禁止事項に対しての強い憤りなんですね。特に「歌にもするな」というフレーズは、歌うバンドであえてこのフレーズを入れていることから、よほど強い憤りであることが分かります。
“悪気をポイして しけもくつけて
よだれたらして パプリカのパレード”
しけもくは湿気たタバコのこと。湿気たタバコをつけるぐらい惨めなしみったれた感情を表しています。「パプリカのパレード」とは、映画『パプリカ』を受けているフレーズ。『パプリカ』は夢の世界を舞台にしたアニメ映画。様々な生物や人形、家電までもがパレードする印象的なシーンがあります。禁止事項を守り悪気を捨てたら、あとはよだれをたらして眠ってパプリカのような夢を見るしかない。そういう気持ちを歌っています。
“減菌臓器に留めて殺せ!”
「減菌臓器」という単語は聞きなれないですが、菌を減らした臓器の意味合い。言いたいことがあっても息を潜めて、菌を減らした臓器にとどめて殺してしまおうの意味。
ここまでがサビ直前。ここまでは全て感情を押し殺せという意味合いのことをずっと言っているんですね。そしてサビからは本題に入っていきます。サビ直前に「殺せ!」の強い単語を使って勢いを出しているんですね。
“効能だより ご利益頂戴 襖に影が絵を描いて埋まる
名残惜しいか 藁をもつかむ のぞいちゃいな?”
感情を押し殺して生活していた人はどうなるでしょうか。「効能だより」で「ご利益頂戴」な生活になるのです。あらゆる食品、薬品、療法、温泉などの効能にたより、さまよう。そして、様々なものにすがってご利益を得ようとあがく。謎の存在やオカルトにまでハマってしまう。それこそ藁をもつかむ思いですがってしまうのです。襖にできた影のように、不確かなもの、謎のものにさえもすがりつきたくなるんですね。
そして、ラストにはタイトルにもなっている「のぞいちゃいな?」でしめます。のぞくのは、謎の存在でもあり、また自身の中にある感情。結局謎の存在にすがりつくなら、押し殺した自分の感情ももう一度きちんとのぞいてみては?と言っています。
恐ろしいものをのぞき見る感覚を歌詞にしているんですね。ホラードラマの主題歌らしいしめ方です。
そして、これはまだ世の中的には謎の存在であった自分達のグループをのぞいてみてくれという提案でもあります。最初のシングルをまずはのぞいてみてくれ、という意味合いも込めているんですね。
このバンドは賢いので歌詞もリズムもメロディもひねってきます。そんなバンドの片鱗をのぞくことができる一曲ですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)