自分の思う"綺麗"で…
──そして次にまた女性らしい楽曲『綺麗』が入っていますが、『綺麗』が表題曲なのかなって思うくらい今作のジャケット写真も『綺麗』に寄っている気がしました。
加藤ミリヤ：そうですね、本当にそう言われることがあって。同じ時期に考えていたからかもしれないですけど、今一番言いたかったことを『綺麗』でも歌っています。みんないろんなフィルターに慣れていく中で、自分の美意識とか容姿にまつわることってどの時代でも言われ続けていることだけど、"綺麗"って言う人思う人の感覚じゃないですか。だから"これが綺麗！"っていうベースって誰が決めたのかなって。
──うんうん。
加藤ミリヤ：人から綺麗とか可愛いとか、言われたらもちろん嬉しいけど、自分の中での"綺麗"っていう感覚で綺麗かどうかは決めたいなって。
──確かに"綺麗"って特に人の物差しで測りがち…
加藤ミリヤ：みんながしてるとそれが良いって思ってきちゃったりとか。
──そう言った問題提示のような歌詞でありながら、ミリヤさんのスタンスとしてある”歌詞の中で答えを言わない”っていう曲ですもんね。自分の中に答えがないまま『綺麗』を聴くから、"ミリヤ何か教えて！！"って切実に思ってしまいます。
加藤ミリヤ：私は、見た目より中身が大事だよっていうのは綺麗事だと思うことが多くて。見た目より中身が大事っていうことももちろんあると思うけど、それは見た目が自分の思う"綺麗"だったらもっと良いんだよ！って思うんです。
ただ、その"綺麗”の定義くらいは自分の物差しで決めさせてよっていうふうにずっと思っていますね。
──そこまで思えたら強いですね…
加藤ミリヤ：強いよね！
──また悩んだらインタビュー読み返します。楽曲としての『綺麗』は、ショパンの『別れの曲』みたいな静けさと暗さを纏っている感じが素敵で、染みます。
加藤ミリヤ：この暗さが良いですよね。歌詞も最初はリアルな友達との会話みたいに「この顔 変えたい」とか「整形したい」っていうような言葉を入れていたんですけど、音がすごく綺麗なのに言葉が激しすぎて耳に引っかかりすぎちゃって。
──最終的な歌詞も、確かに歌詞にあまり使われなさそうなリアルなワードが入ってきていますけど、歌い方ででしょうか、スッと聴けてしまいますね。
加藤ミリヤ：はい、歌い方はそういうようにしました！
──誰もが綺麗事にまとめあげられがちな悩みとしっかり向き合えた曲ですね。
加藤ミリヤ：嬉しい、ありがとうございます。
──そしてアルバムは『WING』へと続きます。
加藤ミリヤ：ここからパッと開ける感じですね！周りの子とかが"絶対うまくいかないけどなんか別れられない"ってグダグダしている姿を見て、もっと自由になれたら良いよねっていうことを思って書いた曲です。
──「翼を広げて」っていう冒頭の歌詞は『LIBERTY』を思い出しました！
加藤ミリヤ：『LIBERTY』、歌詞検索を自分でしました(笑)。「翼」って言いたいけどあんまり同じことばっかり言わないようにしなきゃって。
──ハハ(笑)！
加藤ミリヤ：自分のファイルを遡るより歌詞サイト行った方が絶対いいし(笑)。
そうでなくても歌詞サイト、よく見てますよ！みんなどういうこと歌ってるかなとか、面白いから詞を見るの好き！
──嬉しいです！ありがとうございます。そして次に収録されているのが『この夢が醒めるまで feat.吉田兄弟』ということですが、この曲はメロディーラインが絶対日本人の好きな感じなんですよね！
加藤ミリヤ：すっごいそれ意識しました！何がって言われたらわからないけど、なんか日本人って好きじゃんこの感じ！っていう和を感じるメロディーにしました。
──和楽器とラップの共存ってこんなに美しいんだ！って思いました。どちらも殺し合ってない感じ。どのように曲づくりは進められたんですか？
加藤ミリヤ：これは吉田兄弟さんの弟の方の健一さんがアレンジをされるんですよ、なので弟さんとメインで考えていったんですけど、曲のド頭を三味線で始めたかったので好きにやってくださいってお願いして何パターンも弾いてもらったものの中からみんなで"これが良い！"っていうものを選んだりしました。
──ではミリヤさんのイメージに対して"そうくるなら三味線はこんな感じで！"といったような感じで。
加藤ミリヤ：はい、結構提案をもらって。一緒にスタジオ入って、こういうことできますよ！っていうことを言ってもらったりしながら。
──本当にミリヤさんの声と三味線の音と、そのほかの音と全てが生きていて。落ちサビからのところなんて息遣いまで鳥肌ものですし、どこかでこの曲と出会った人には本当に、めちゃめちゃ良いイヤホンで聴いて欲しい…。
加藤ミリヤ：そうですね(笑)、細かい息遣いまで拘りました。
感性を研ぎ澄ませて聴きたい楽曲
──そしてこちらも楽器の音がたくさん入っているのでイヤホンやヘッドホンで聴きたい『宿命』。
加藤ミリヤ：『宿命』は、全日本空手連盟公式応援ソングということでお話をいただいて、King Gnuの常田さんのお兄さんである常田俊太郎さんと一緒に作りました。
なのでたくさんの生楽器を弾いていただいて、でき上がりました。空手の"パシッ！"って音とかもサンプリングしたものを入れていたりしていて、面白かったです。
──曲に、歌詞で歌われているような「血と汗」感がなかったのが意外でした。
加藤ミリヤ：はい(笑)、選手の方が決勝戦に聴く曲ということで作らせてもらったので、ここぞという戦いの時に聴いてください！
──なるほど！そして『Darling』ですね、アルバムに1曲は入れてくれている平和な歌！
加藤ミリヤ：そうですね、1曲は入れさせてって感じですね(笑)。
──全世界どの国の人が聴いても良い曲だと思えそうな、ビートルズ的なポテンシャルをもった曲なように思います。
加藤ミリヤ：ありがとうございます！こういう曲は意外とササっとできちゃうんですよ(笑)。
──おぉぉ。歌詞に「紫の目で」って書かれているあたり、かなり具体的にイメージしている対象があるように感じました。
加藤ミリヤ：そうですね！確かにそうです。愛しいなって思いを書くようなこういう曲のときは具体的に想像して書くし、その対象が何色がいいかな？ってことも考えます。
──ミリヤさんの歌詞の中に出てくる色で"紫"って珍しいですよね。
加藤ミリヤ：これは比喩なんですけど、赤だとメラメラしすぎていて、青と混ぜた色ってことで紫かなって。
本当に見るところが細かいよね！？「紫」を引っ張り出してくれたの初めて！でも歌詞を書く身からしたらこの一文字もすっごい考えて決めるから嬉しいです。ありがとうございます。
──意図せず色つながりになりましたが、11曲目の『COLORS』。アルバムの終盤にふさわしい暖かみのある曲ですね。
加藤ミリヤ：はい、自分って何色かな？って思っていたときに自分のインスタで"自分って何色だと思う？"ってクエスチョンして、作っていった曲なんですけど。自分のことをみんないろんな色に例えていて、すぐ人に合わせちゃうからグレーですとか、元気がいっぱいだから黄色ですって自分を分析している姿がおもしろくて。私たちは誰にもなれなくて、自分として生きていくしかない。だから自分のことを理解して好きでいようっていうメッセージも込めたかったです。遠くから見ると自分ってすごくちっぽけだけど、自分のことを宇宙人だって思うとすごく気が楽になるんですよ(笑)。
──宇宙人ですか！？びっくりしました(笑)。
加藤ミリヤ：すごく遠くから、宇宙人である自分たちが私何色かな〜？って色塗りをしている姿を見ているような感覚で、悩んで複雑に考えている自分を見てみるとシンプルに考えられて気が楽になると思って。
──なるほど。確かに可愛く思えますね！次に『COLORS』を聴くときはそんな自分たちの姿をイメージして聴いてみます。
では、お時間の関係で既発曲には触れられずでしたが最後にインタビューを見てくださった皆さんにメッセージをお願いします。
加藤ミリヤ：3年ぶりのオリジナルアルバムで、今の自分にしか歌えない歌詞っていうのを考えながら作ったアルバムで。"WHO LOVES ME?"って問いかけをされたときに、あの人だって誰かを浮かべることができて、さらに、自分のことを愛してるのは自分もだな、って思えるところまで振り替えられる1枚になっているので是非自分のお話だと思って聴いていただけたら嬉しいです。
──ありがとうございました！もう一度すぐにでもアルバム聴きたいです(笑)。
加藤ミリヤ：ありがとうございました！聴いてください(笑)。
TEXT 愛香
PHOTO Kei Sakuhara
