『めくるめく僕らの出会い』。この曲名を聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろうか?次々と幸せなことがやってくる、そんなイメージだろうか。
「めくるめく」の意味を調べてみると、「目がくらむ、めまいがする。また、魅力にひかれて理性を失うこと」とある。漢字で「目眩く」と書き、「目」が「眩(くるめ)く」、目が回ってくらくらするという意味になる。我を忘れて前後不覚になるくらい、素晴らしい出会い、ということだ。
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めくるめく僕らは出会い
再び恋してく予感
二人は目と目を合わせて
星屑の下で口づけする
この曲は、映画「グッド・ストライプス」のために大橋トリオが書き下ろしたもの。ミュージックビデオは、「グッド・ストライプス」の監督、岨手由貴子が手掛けている。4年間付き合って別れそうになっているカップルの彼女が妊娠して、結婚に向けての準備をしていくなかで、お互いに対する理解と愛情を深めていくというストーリー。
彼女の実家に挨拶に行って、彼女が昔録音していた、電波系のひとりラジオのテープを発見したり。彼女が昔、バンドをやりたくて上京したことを知ったり。一方、彼の複雑な生い立ちが明かされ、心の闇を彼女につぶやく場面もある。
日々のなかで、相手の様々な顔を知り、まるで自分の知らない相手と再会したような感覚を覚える。より深くお互いを知り、もう一度、相手に恋をする。そんな映画のストーリーとリンクした歌詞。お互いの恋が再び動き出す様子を、大橋トリオが温かい声でうたい、聴いていると幸せな気持ちになる曲だ。
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君が何処かへ僕から遠くへ
空想の世界飛び出してしまう前に
追いかけよう
そして足跡に花咲くでしょう
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映画のふたりは、もしかしたら、妊娠というきっかけがなければ別れていたかもしれない。人の気持ちは移り変わる。少し前まで愛していると言っていたのに、気づかないうちに、もう心が離れてしまっていることだってある。君がどこか遠くへ、空想の世界に飛び足していってしまう前に。手遅れになる前に、僕は君を追いかけなければならない。
“そして足跡に花咲くでしょう”。追いかけていく足跡に花が咲く、という、大橋トリオらしい表現が、二人のしあわせな行く先を暗示させるように響く。
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そして二人のちょっとした隙間に
可愛い蕾が顔出してるよ見てごらん
小さな吐息
春には可憐な花咲くでしょう
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再びお互いに惹かれていく二人、その様子はまるで花に新しい蕾ができたときのよう。きっと春になれば可憐な花が咲く。二人の関係も花のようにふわりと匂い立つだろう。すばらしい比喩だ。
今年、10枚目のオリジナルアルバムを発売した大橋トリオ。ピアノ・ベース・ギター・ドラムなどあらゆる楽器をマルチにこなす彼の楽曲は、歌とリズムの一体感が心地よく、何度でも聴き返したい曲が多い。この曲も、彼の柔らかな歌声と、ときおり手拍子がまざる可愛らしいサウンドの相性がよく、飽きのこない作品となっている。
ぜひ、この曲を聴いて、めくるめく恋の予感に胸を浸してみてはいかがだろうか。
TEXT:緑の瞳