ファーストテイク歌唱で再注目!miwa「ヒカリヘ」
シンガーソングライターのmiwaが2012年に発表した楽曲『ヒカリヘ』。
小栗旬・石原さとみが出演したドラマ「リッチマン、プアウーマン」の主題歌でもあり、miwaの知名度を一気に広めた楽曲です。
2021年8月20日、miwaはYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に出演し『ヒカリヘ』を歌唱。
優しくも芯の強い歌声で、堂々としたパフォーマンスを披露しました。
リリースから時が経ち、再び注目を集める『ヒカリヘ』の歌詞の意味を考察します。
「ヒカリヘ」は届かない想いを歌った楽曲?
『ヒカリヘ』の歌詞について、miwaは小説『すべて真夜中の恋人たち』中の光の描写が、ヒントになっているとリリース当時のインタビューで語っていました。
小説の中で「集まらなかった光は宇宙へ飛んでいく」という記述があり、人間の想いと同じではないかと感じたそうです。
miwaのコメントを踏まえると、1番の歌詞は主人公の「届きそうで届かない想い」を、光に例えて表現しているように思います。
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理想現実ワンクリック光の速度に変わっても
地球の裏より遠い距離 アダムとイヴにはなれない
悲しみの生まれた場所たどって
その傷やさしく触れて癒せたなら
≪ヒカリへ 歌詞より抜粋≫
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「理想現実ワンクリック」の歌詞から想像できるのは、インターネットの世界。
ネット上で発信されたものは、一瞬にして世界中に届きます。
実際には果てしない距離があるものの、簡単に届くからこそ相手が近くにいるように錯覚してしまうでしょう。
主人公の「私」はそれを分かっていて、相手との間に距離を感じているのかもしれません。
聖書では、神様が人類の始祖として「アダム」をつくり、その後に助け合う存在として「イヴ」をつくったとされています。
「アダムとイヴにはなれない」のフレーズからも、主人公と相手が助け合えるほど親密な関係でないことが想像できますね。
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溢れる想い 愛は君を照らす光になれる
切ないほどに
たとえ描く未来 そこに私がいないとしても
いまはそっと抱きしめてあげる
≪ヒカリへ 歌詞より抜粋≫
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何か辛いことがあったときに励ましてくれる人がいたら、自分にとって相手は「光」のような存在でしょう。
主人公は自分が「君」にとって、光のような存在でありたいと願っているようです。
ただし冒頭の歌詞通り、主人公の想いはまだ君に届いていません。
サビ後半の歌詞は、「恋愛関係になるのが難しいとしても、今は君のそばにいる」という主人公の意志を示しているように思います。
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運命だって引き寄せて輝き続けたいよ
奇跡だって起こせるって信じたい
信じたい
≪ヒカリへ 歌詞より抜粋≫
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難しいかもしれないけれど、「相手と結ばれる未来」を作りたいと思う主人公。
自然に起こるものだと考えがちな「運命」や「奇跡」を、自らコントロールしようとする姿に主人公の意志の強さを感じますね。
ネットの世界と現実の世界
『ヒカリヘ』の歌詞は、デジタル社会を描いていると解釈できます。
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遠慮配慮言葉の最後 感情記号化されても
心の奥まで伝わらない ホントの声を聞かせて
すべての事に終わりがあるなら
苦しみさえいつか消えるはずだから
≪ヒカリへ 歌詞より抜粋≫
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「感情記号化」は、気持ちを「文字」に変換していると解釈できそうです。
直接会って話すのではなく、LINEやTwitterなどのSNSを通したコミュニケーションを指しているのでしょう。
声から文字に変換されてしまったことで、抜け落ちてしまった想いや言葉があるかもしれません。
主人公は相手に「ありのままの気持ちを教えて欲しい」と願っているようです。
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溢れる想い 愛は胸を焦がす痛みに変わる
いとしいほどに
たとえ世界中の声なき声に責められたとしても
私が全部受け止めてあげる
≪ヒカリへ 歌詞より抜粋≫
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顔が見えないネットの世界では、人と人との距離感が曖昧になってしまいますよね。
「声なき声」とは、ネット上における誹謗中傷を表しているように思います。
距離感が分かりにくいからこそ、面と向かっては絶対に言えない、暴力的な言葉も簡単に伝えられてしまうでしょう。
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人は悲しみを知るために生まれてきたの
そんなことないもっと愛を知りたい
孤独がぬくもりを知るためにあるのなら
幸せはいつだってそこにあるのに
≪ヒカリへ 歌詞より抜粋≫
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また、ネット上のコミュニケーションに頼ってばかりいると、現実世界では自分が孤独だと感じてしまいがちです。
人と繋がるためのツールで、人との繋がりを遠く感じてしまったら本末転倒ですよね。
ラストサビ前の歌詞は、「幸せ」はネットを通して感じるものではなく、現実の世界で感じるものだと伝えているのではないでしょうか。
ネットを通して繋がる存在ではなく、そばで触れたり話したりして繋がる存在こそが人生において大切なのかもしれません。
そんな相手こそが、その人にとっての本当の「光」だと伝えているように思います。
「ヒカリヘ」はネット社会のあり方を描いた歌詞
miwaの大ヒット曲『ヒカリヘ』の歌詞の意味を考察しました。『ヒカリヘ』リリースの前年には東日本大震災があり、リリース当時はちょうどSNSが急速に発達した頃だったと思います。
日々テクノロジーが発達する中で、インターネットとの付き合い方は2021年になった今も課題が残るでしょう。
『ヒカリヘ』は、現代のコミュニケーションのあり方を改めて考えさせる楽曲だと感じます。