TVアニメ『鬼滅の刃』遊郭編OPを彩るAimerの歌声
Aimerの20枚目のシングル『残響散歌/朝が来る』が、2022年1月12日に発売されます。
表題曲の『残響散歌』は、12月5日から放送が開始されたテレビアニメ『鬼滅の刃』2期、遊郭編のオープニングテーマとしても話題の楽曲。12月6日には先行配信も始まっています。
『鬼滅の刃』では1期の炭治郎立志編、劇場版『鬼滅の刃』無限列車編、TVアニメ版無限列車編と、LiSAが担当してきました。
どの主題歌もアニメの世界を見事に彩り、『鬼滅の刃』という作品の一部ともいえる存在になりましたね。
LiSAといえば鬼滅、鬼滅といえばLiSA、といえるほど、彼女の曲は見事に作品にリンクしていました。
無限列車編では旅路や使命、煉獄杏寿郎との別れが大きなテーマとなり、壮大な作品になっていましたが、遊郭編はその印象をがらりと変えます。
舞台は東京・吉原。花街とも言われる遊郭が舞台のストーリー。
オープニングと同時にエンディングテーマもAimerが担当し、音楽という点でもLiSAからAimerへ引き継がれた注目の楽曲です。
映像美にも磨きがかかり、夜の街「遊郭」を始めとする街の描写が美しく、今作の魅力の一つといえるでしょう。
煉獄杏寿郎の死を乗り越え、人として心も身体も成長した炭治郎たちが挑む新たな任務。
夜の街、潜入、鬼、花魁。
絢爛豪華な世界と、鬼という禍々しい存在の対比も気になるところです。
LiSAの楽曲が『鬼滅の刃』の世界観を作り上げてきたように、Aimerが歌い上げる歌の世界も、物語に寄り添い、一緒に盛り上げるような存在になるのでしょうか。
TVアニメ2期遊郭編の舞台とリンクした歌詞
『鬼滅の刃』遊郭編を引っ張る人物は音柱・宇髄天元です。
炭治郎自身も少々変わっている部分がありますが、そんな彼からしても強烈なインパクトを与える人物だといえるでしょう。
何といっても宇髄天元の特徴は目立つこと。元忍びということを考えると特殊な人ですが、彼は忍びであったが故に、反動で派手好きになったとか。
顔には派手なメイクを施し、爪は2色に塗り、額当てにもきらびやかな装飾がなされています。
立志編では出番が少ないながらも変人ぶりを発揮。
炭治郎としっかりタッグを組む遊郭編では、その変人ぶりも含めた人となりや、音柱としての実力もたっぷりと表現されています。
また、宇髄天元はツッコみ要素も多いため、コミカルなシーンにも注目です。
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誰が袖に咲く幻花
ただ そこに藍を落とした
派手に色を溶かす夜に
≪残響散歌 歌詞より抜粋≫
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そんな派手派手な遊郭編を彩る『残響散歌』。
冒頭から「袖」「色」「夜」「月」と、夜の街を連想させる言葉が並びます。
遊女たちの美しい着物、目がくらむような華やかさ。
夜の闇に紛れるのは男女の逢瀬だけではありません。
月といえば夜。その夜に活動するのは、鬼もまた同様です。
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誰が袖に咲く幻花
ただ そこに藍を落とした
派手に色を溶かす夜に
転がるように風を切って
躓くごとに強くなった
光も痛みも怒りも全部 抱きしめて
選ばれなければ 選べばいい
≪残響散歌 歌詞より抜粋≫
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「転がるように風を切って」とはまさに、炭治郎の使う水の呼吸を彷彿させます。
そして躓くごとに強くなっていく姿もまた、炭治郎そのものです。
『鬼滅の刃』に登場する人物のほとんどは、最初から強かったわけではありません。
弱く、惨めな時代を過ごし、敗北を重ねて少しずつ力を手に入れてきたのです。
家族という平和で幸せな「光」を失った炭治郎が、家族を奪われた「怒り」を糧に強くなり、大切な存在を失う「痛み」を抱えて生きていく。
人が何もかもを捨てさることは、そう簡単ではありません。
だからこそ、不格好でも泥臭く、人間らしくもがいて生きるしかないのです。
幸福な人生から転がり落ちても、そこで終わりではない。
自分で未来を切り開いていく生き様が、まさにこの歌詞に表現されていますね。
残響が表す本当の意味
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声よ 轟け 夜のその向こうへ
涙で滲んでた あんなに遠くの景色まで響き渡れ
≪残響散歌 歌詞より抜粋≫
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「夜のその向こう」とは、暗闇を抜けた向こう側にある未来でしょうか。
どんな状況でも希望を捨てず、前に進み続ける炭治郎の心にある、声を届けたい人。
それは大切な家族であり、「心を燃やせ」という言葉をくれた煉獄杏寿郎かもしれません。
どれほど遠い過去であっても、二度と会えない人でも、思いだけは届かせようと願い続ける。
そんな炭治郎の心のありようが現れた歌詞ですね。
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何を奏でて? 誰に届けたくて?
不確かなままでいい
どんなに暗い感情も
どんなに長い葛藤も
歌と散れ 残響
≪残響散歌 歌詞より抜粋≫
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何のために戦うのか、誰のために声を届けたいのかが分からなくても、自分の思いを信じて進む。
美しい歌として耳に届かなくていい。
ただ残響のように思いがそこに残ればいい。
それはまさに、名前も知らない人たちを守り抜く、鬼殺隊の姿と重なります。
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ただ一人舞う千夜
違えない帯を結べば
派手な色も負かす様に
深紅の香こそあはれ
≪残響散歌 歌詞より抜粋≫
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こちらの歌詞は、鬼殺隊というよりは遊女の生き様を連想させます。
女を磨き、一人でのし上がっていく世界。
華やかな表舞台と異なり、裏舞台は過酷なものでしょう。
また、「帯」という言葉から連想される鬼もいます。
きらびやかな遊郭に潜む鬼。その姿、性格、生き様。
この歌詞だけでも、遊郭編に描かれる世界の色香が伝わってくるようです。
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この先どんなつらい時も
口先よりも胸を張って
抱いた夢の灯りを全部 辿るだけ
逃げ出すため ここまで来たんじゃないだろ?
≪残響散歌 歌詞より抜粋≫
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辛さの先に夢があり、その夢のために踏ん張れるのは、遊女にも鬼殺隊にもいえることです。
思い描いた夢を胸に、過酷な運命に立ち向かう。
「逃げ出す」という言葉も、常に鬼と対峙し、どれほど劣勢を強いられても戦い続ける鬼殺隊の在り方、そして「足抜け」と呼ばれる方法で遊郭から逃げ出す遊女、その両方とリンクしています。
『残響散歌』が遊郭編OPにハマる理由
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声をからして 燃える花のように
闇間を照らしたら
曖昧過ぎる正解も譜面にして
≪残響散歌 歌詞より抜粋≫
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『残響散歌』の歌詞には、音をイメージさせる言葉が多く使用されています。
タイトルにもある「残響」は、音が消え残る現象。
それは音柱・宇髄天元を象徴するものであり、彼の攻撃は基本的に音に関連しています。
「声」「轟け」「響き渡れ」「奏でて」「譜面」「音」。
誰かに思いを届ける声も、奏でる音も、空気を震わせて初めて、音として相手に届けることができます。
「譜面」もまた、音に関連しているだけでなく宇髄家に伝わる戦略の一つ。
このように、音柱・宇髄天元を彷彿させる「音」にまつわる歌詞のチョイスにもセンスが光っていますね。
歌詞の中に遊郭や遊女を連想させる言葉がちりばめられてるからこそ、遊郭編OPとして圧倒的存在感を示すことができるのでしょう。
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夜を数えて朝を描く様な
鮮やかな音を鳴らす
どんなに深い後悔も
どんなに高い限界も
掻き消して 残響
≪残響散歌 歌詞より抜粋≫
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残響は消え残った音となり、誰かに声や思いを届けるだけではありません。
消えない後悔も、目の前に立ちはだかる限界という名の壁すらも掻き消す、力強いイメージも持ち合わせているのです。
残響が周囲の音を掻き消すように、心の迷いも打ち消して、一段階上の世界へ連れて行ってくれる。
立ち止まることも諦めることも許されない鬼殺隊の一員として、柱や炭治郎たちがいかにして限界を超えてきたのかを物語るような歌詞です。
LiSAの歌声は力強く明快で、言わば太陽のような印象でした。
かたやAimerの歌声は、低く伸びやかで、まるで闇夜に溶け込む月のよう。
対照的ながら、説得力のある歌声が物語の世界を支えていることには違いありません。
『残響散歌』のMVもまた、遊郭編の世界観にぴったりな映像となっているので、この機会にぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
今後、遊郭編のストーリーがどのように展開していくのか。話を彩るような『残響散歌』と共に見守りたいところです。