「ペンディング・マシーン」の歌詞はネット社会の風刺?
4人組バンド・Official髭男dismの『ペンディング・マシーン』は、2021年8月にリリースされたアルバム『Editorial』の収録曲です。
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Wi-Fi環境がないどこかへ行きたい 熱くなったこの額 冷ますタイムを下さい
返答に困窮するメッセージやお誘い 強いられる和気藹々
おまけに暗いニュースだなんて冗談じゃない
≪ペンディング・マシーン 歌詞より抜粋≫
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そんな歌詞の通り「Wi-Fi環境のない」宇宙に行った4人を描いたMVが、2021年12月20日に公開されました。
『ペンディング・マシーン』の作詞作曲は、ボーカルの藤原聡が担当。
「行きたい」「額(ひたい)」「和気藹々(わきあいあい)」など韻踏みだらけの歌詞も、聴いていて心地いいと感じるのではないでしょうか。
楽曲にどんな想いが込められているのか、『ペンディング・マシーン』の歌詞の意味を考察していきましょう。
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誰かの憂いを肩代わり出来るほど タフガイじゃない 耐えられない
耳からも目からも 飛び込む有象無象はもう知らないでいよう 病まないためにも
≪ペンディング・マシーン 歌詞より抜粋≫
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こちらは戻って曲冒頭の歌詞になります。
誰かが経験した辛い出来事や鬱憤、悲しいニュース。
日常生活にインターネットが欠かせない存在になった今、嫌でも目につく機会が増えましたよね。
しかし、すべてを自分の身に起きた出来事のように受け入れていたら心が持たないでしょう。
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とは言え社会で 多様化した現代で それなりに上手く生きたいのにwhy?
型落ちの前頭葉で 不具合もなく笑みを 保てないanymore
≪ペンディング・マシーン 歌詞より抜粋≫
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「型落ち」はPCや車などで新型が出た時に、それまで出回っていた製品に対して使われる言葉です。
歌詞中では、急速に発達したネット社会と上手く付き合っていけない自分を表現しているのではないでしょうか。
後半で「笑みを」と「anymore」で韻を踏んでいるのも気持ちいいですね。
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はい。分かったからもう黙って 疲れてるから休まして
申し訳ないけど待って 迷惑はお互い様だって
言ってやりたいのになんで? 立場と見栄に躊躇って
外付けの愛想が出しゃばって 葬られた叫び声
≪ペンディング・マシーン 歌詞より抜粋≫
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「SNSを見るのが辛いなら辞めてしまえばいい」と言う人もいるかもしれません。
ただし、SNSで他人と繋がるのが普通になった今、それらを断ち切るのはかなり勇気がいることでしょう。
SNSをやらないことで、周りから「つまらない奴」と思われてしまうかもしれません。
「黙って」「休まして」と本当は叫びたい主人公。
結局叫びは声にならず、今も主人公の中で眠っているようです。
コメントや「いいね」の数で競いあう人たち
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Wi-Fi環境がないどこかへ行きたい プライベートの誇り合い マウンティングの泥試合
そんなんで競い合って一体何がしたい?
鬼ごっこ ドッジボール 何に例えても常識の範疇を超えてやしない?
≪ペンディング・マシーン 歌詞より抜粋≫
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SNSではコメントや「いいね」など、周りからの反応を可視化できるのも特徴。
コメントや「いいね」の数を通して、自分自身の評価を測ろうとしている人もいるのでしょう。
そして、人気者になりたいがために自分を盛って投稿することも。
そんな競い合いで得た栄光は、本当に喜べるものなのでしょうか。
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見てらんないから黙って 相手はCPじゃなくて
哺乳類人間様だって 説教できたならわけないね
俺にそんな権利なくて 少なくはない前科があって
帰すべき責めは永遠に残って 鳴り止まない叫び声
≪ペンディング・マシーン 歌詞より抜粋≫
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しかし、主人公1人が異議を唱えたところで、簡単に変わる世の中ではないでしょう。
2番のサビは、「もうやめろ」と言いたいのに言えない主人公の心情を表しているように思えます。
「哺乳類人間様」の言い方からも、主人公の苛立ちが感じられそうですね。
ネットと上手く付き合う手段とは
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誰かの憂いを肩代わりできるほど 健康じゃない 打ち勝てない ならばそう離れていよう
流行りもライフハックも もう知らないでいよう 病まないためにも
≪ペンディング・マシーン 歌詞より抜粋≫
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ネット社会を上手く生きていくために、主人公は1つの方法に行き着いたのでしょう。
主人公が思いついた方法とは、「一時的にネットから離れてみること」。
実際に、近年では「デジタルデトックス」という言葉も生まれていますよね。
もちろん、SNSやネット記事を見ないことで流行や大切な情報を逃してしまうかもしれません。
しかし、ネットの情報を一時的に遮断するだけでも、目にする景色はぐっと変わるはずです。
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はい。分かったからもう黙って 疲れてるから休まして
申し訳ないけど待って 迷惑はお互い様だって
言わないけど通知切って あわよくば電源を落として
無理やりに暇を作り出して 元気になるまでまたね
≪ペンディング・マシーン 歌詞より抜粋≫
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心の平静を保つための解決手段に辿り着いた主人公。
「はい。」の歌詞に「。」がついている点からも、「もう終わり」と主人公がネットを断ち切っている様子が浮かびそうですね。
最後は「さようなら」ではなく「またね」であるように、いつか再び主人公はネット社会に戻らなくてはならないのかもしれません。
しかし、「通知はすべて切る」「PCやスマホの電源を落とす」などの対策をするだけでも、心が楽になるのではないでしょうか。
タイトルの『ペンディング・マシーン』は「ベンディングマシーン(自動販売機)」をもじったものと思われ、「ペンディング」には「保留」「先送り」などの意味があります。
疲れた時はネットの中に生きる自分を一旦「保留」にすることで、ネット社会と上手く付き合っていこうという意味が込められているのかもしれませんね。
MV公開もあわせてOfficial髭男dismからのメッセージ?
Official髭男dism『ペンディング・マシーン』の歌詞の意味を考察しました。歌詞だけ見ると皮肉めいた言葉が並ぶ楽曲ですが、ノリのよい曲調でポップな印象に仕上げている点にヒゲダンの凄さを感じられますね。
なお、アルバム『Editorial』で『ペンディング・マシーン』の後に収録されているのが『Bedroom Talk』。
『ペンディング・マシーン』と同じくネット社会を背景に作成したと思われる楽曲です。
そんな『Bedroom Talk』も2021年11月にリリックビデオが公開されました。
アルバム曲の中でもこの2つをMVとして公開したのは、「ネットとの付き合い方を考えてみよう」というヒゲダンからのメッセージなのかもしれませんね。
Official髭男dism (オフィシャルヒゲダンディズム) 山陰発4人組ピアノPOPバンド。2012年6月7日結成、島根大学と松江高専の卒業生で結成されており、愛称は《ヒゲダン》。このバンド名には髭の似合う歳になっても、誰もがワクワクするような音楽をこのメンバーでずっと続けて行きたいという意思が···