TVアニメ『王様ランキング』第2クールOPテーマはVaundy『裸の勇者』に
現在放送中のTVアニメ『王様ランキング』も第2クールに突入し、ほのぼのとした空気感や、健気にがんばるボッジの可愛らしさ以上に、ダークで重たい空気が漂い始めました。舞台は王国であり、権力や富の渦巻く場所だからこそ、誰もがボッジのように心優しくまっすぐな人柄というわけではないのです。
息子の身体を乗っ取った父親・ボッス王や、怪しげな動きをする鏡の魔女ミランジョなど、不穏因子は数知れず。
祖国を思い、母親を思い、仲間を思うボッジやカゲがこれからどうなっていくのか…
気になるところですが、オープニングもストーリー展開に合わせて大きく様相を変えました。
アニメ第2クールのOPテーマはVaundyの『裸の勇者』。
2022年2月23日リリースの新曲で、1月7日からは先行配信に加え、ノンクレジットのアニメOP映像が解禁されています。
CDリリースは1stアルバム『strobo』ぶり。ファンとしては待望の新曲といえるでしょう。
収録曲は、表題曲の『裸の勇者』の他『 二人話』『HERO』『おもかげ -self cover-』の全4曲。
初回生産限定盤には『裸の勇者』『二人話』『HERO』のMV、期間生産限定盤には『裸の勇者』ノンクレジットOP映像が収録され、アニメファンにとっては貴重な一枚となっています。
「裸」といえば、カゲと出会ってすぐの頃、金目のものをすべてカゲに与えて、裸で街を歩き笑われていたボッジを思い出しますね。
耳が聞こえず、それ故、上手く話すことができない、いわば最弱の王子といえるボッジはまさに「裸の勇者」。
タイトルだけでも期待値の高まる楽曲の魅力を、歌詞の意味から考察していきましょう。
ボッジの生き様と重なる歌詞
アニメテーマ曲となると、アーティストも曲制作にあたり、ある程度の縛りが生まれます。
昔のアニメソングのように、作品の世界観を前面に押し出した楽曲でないにしても、自分たちの曲の中に作品世界をちりばめなくてはなりません。
また、オープニングテーマはEDと異なり、ある程度の盛り上がりや、これからストーリーが始まるワクワク感も必要でしょう。
そういった意味では、力試しのような作業にもあたるかもしれません。
特に『王様ランキング』は原作漫画、テレビアニメ共にキャラクターデザインが可愛らしいです。
主人公であるボッジは、身体の小ささと無邪気さ、しゃべれないという特徴も相まってマスコット的な可愛らしさがあります。
しかし、アニメ1クールのオープニング主題歌はKing Gnuの『BOY』。
希望はあるものの、どこか切なく、健気で愛おしく、力強さをも感じさせる楽曲でした。
絵面に騙されそうになりますが『王様ランキング』はかなり深い作品です。
痛々しい描写や残酷な裏切りなど、生きていく上で避けられない「人生の非情さ」をきちんと描いているのです。
そんな作品だからこそ、読者からの評価も高く人気作品となっているわけですが、そんな作品の主人公を一体、どのように歌の世界に表現しているのでしょうか。
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誰かが今涙を飲み込んでいる。
力が伴う
悪意振り解いて
耳は聞こえちゃいない
だが勇者は今
力はいらない
身に任せて
≪裸の勇者 歌詞より抜粋≫
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人知れず涙を飲むのは、ボッジの日常でした。
耳が聞こえず話すことができない彼は、街の人にさえバカにされ、陰口を叩かれてました。
しかし読心術を心得ているので、ボッジには彼らが何を言っているのか分かってしまうのです。
それでも、人前では常にへらへらと笑顔でやりすごし、泣く時はいつも一人。
傍から見れば無力で情けない王子に見えていたでしょうが、ボッジは誰よりも優しく、強い心を持っているのです。
そんな彼にとって、悪意というものは常に身近にあるものかもしれません。
力を持った悪意は、時に人を傷付け、更に大きな力となれば国を揺るがすことにもつながりかねないのです。
そんな大きな力を前に、非力なボッジは無力かというと、そんなことはありません。
ボッジは誰よりも力が弱く、これ以上強くなれないと言い渡されてしまいますが、それは最弱を意味するものではありませんでした。
耳が聞こえなくても人の言葉を理解し、誰よりも優しく、独特のセンスで彼だけの勝ち筋を手に入れるのです。
「力はいらない」は逃げ道ではなく、ボッジにとっては勝ちに行く姿勢そのものといえるでしょう。
OPで描く愛憎渦巻く世界と揺るがない優しさ
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小さなこの手は今
愛してしまった
全部
降りかかった呪いも
全部
もう
愛してしまった思いを
全部
守れるほどの光を
≪裸の勇者 歌詞より抜粋≫
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ボッジの手はまだ小さく、その手で守り切れるものはほとんどないでしょう。
しかし、人と同じ様に聞こえない耳も、話せない口も待遇もすべてボッジは受け入れて、愛していくことのできる器を持っています。
愛する者を、自分の国を、その民を守ろうとする時、相手が強大であればあるほど大きな力を必要とします。
ボッジにはそんな力はありませんが、心根の優しさは、少なからず仲間を集めました。
一人ではできなくとも、彼の周りにはボッジを慕い、仕え、力になってくれる者たちがいるのです。
それがボッジの一番の武器といえるかもしれません。
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また悲しみが飛び交っている。
失って、また失って、膝を突き
息をしている。
≪裸の勇者 歌詞より抜粋≫
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国が荒れれば、そこかしこで悲しみの連鎖が起きます。
大切なもの、大切な人、居場所。何かを奪われた悲しみは恨みとなり、怒りとなって渦を巻き、黒い感情になります。
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涙と対になって
悲しみが力となって
愛しさが何かを壊していく
≪裸の勇者 歌詞より抜粋≫
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悲しむだけなら誰も傷付けないものを、負の力となって誰かに襲いかかると、新たな悲しみが生まれる。
悲しみの元は誰かへの愛情です。
愛しく思う気持ちが負の連鎖を生み、また別の何かを壊していく、そんな愚かな連鎖は断ち切らなければなりません。
きっとボッジは、国が荒れ、人々が各々の悲しみを力に変えて争う日が来ても、優しさを失うことはないでしょう。
ボッジの純粋で無垢な心は、危機的状況にこそ、明るい輝きとなって人の支えになるのかもしれません。
『裸の勇者』タイトルに込められた意味
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誰もが求めた剣は
錆だらけで使えなかった
この誰かが残してった鈍が、
闇を裂いてしまう前に
≪裸の勇者 歌詞より抜粋≫
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襲いかかる脅威に立ち向かう最も有効な手段は、力です。
誰もが力を求め、力によって悪意を振り払おうとするでしょう。
剣はその象徴です。
力で抗うための有効な武器だと思われたものが、錆び付いた鈍になっていた時、人はどうするのでしょうか。
力にすがるものは、その力が頼りにならないと分かった時、為す術もなく彷徨うことになります。
しかし、ボッジはそもそも力を持ちません。
それ故に、誰よりも落ち着いて、誰にもできない方法で、闇を払うことができる可能性を秘めているのです。
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力が伴う
悪意振り解いて
耳は聞こえちゃいない
だが勇者は今
力はいらない
身に任せて
カゲは迫る
「お前はなんだ」と
≪裸の勇者 歌詞より抜粋≫
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非力な王子だからこそ、力に頼らない方法で、人々を悪意から守る術を身につけられるのかもしれません。
ボッジの友達であり、最高の仲間であるカゲは、どんな時でも味方でいると約束しました。
そんなカゲにとって、ボッジが何者であるかなど、どうでもいい問題でしょう。
しかし「カゲ」が問うたように、ボッジ自身が己の存在意義を問われる未来は、この先待ち受けているかもしれません。
まだ幼いボッジが自分と向き合い、一体自分は何なのだと考え、答えを求められる。
その答えはまだ出ないでしょうが、ストーリーが加速していく中で、ゆくゆくは知ることができるのでしょうか。
ボッジに寄り添い、見守るような歌詞が印象的だった『BOY』とは異なり、『裸の勇者』では勇者たる所以が求められるような歌詞が印象的です。
物語も一段と重みを増していく中、どのような未来が待ち受けているのか。
「裸の勇者」ボッジが選び取る道を、一緒に見守っていきたいと思います。