映画「ONE PIECE FILM RED」主題歌
圧倒的な歌唱力でファンを増やし続けている歌い手・Ado。これまで『心という名の不可解』や『会いたくて』など、多くの映像作品の主題歌や挿入歌を歌い上げてきました。
そんなAdoが2022年6月8日に新曲『新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)』を配信リリース。
この楽曲は8月6日公開の映画『ONE PIECE FILM RED』の主題歌です。
劇中でAdoが歌唱パートを担当したキャラクター・ウタが登場するMVも公開され、大きな話題を呼びました。
作詞作曲を手がけたのは、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅなどを世に送り出した音楽プロデューサー・中田ヤスタカ。
『新時代』の制作にあたっては「新しい歌姫の誕生を象徴するような力強い曲」という原作者からのリクエストを受けていたそうです。
今回は、そんな「歌姫の誕生」を表現した『新時代』の歌詞の意味を考察していきます。
この世で一番自由な歌手
まずは歌い出しです。
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新時代はこの未来だ
世界中全部 変えてしまえば 変えてしまえば…
≪新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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この曲の主人公を「新しい歌姫」と仮定すると、「新時代はこの未来だ」には「私が歩む未来こそが音楽界の新時代だ!」というような自信が感じられますね。
おそらく主人公は「歌で世界を変えてやろう」と意気込んでいるのでしょう。
沸々と意志が湧いてきたところで、1番のスタートです。
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ジャマモノ やなもの なんて消して
この世とメタモルフォーゼしようぜ
ミュージック キミが起こす マジック
≪新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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辛いことを忘れられたり、嫌な気持ちが浄化されたり、音楽を聴くことで気分が晴れた経験がある人は多いことでしょう。
「ジャマモノ やなもの なんて消して」というのは、そういった「音楽の力」を表していそうです。
また、次の歌詞にある「この世」は、シンガーとリスナーが共有する世界だと思われます。
「メタモルフォーゼ」には変身という意味があるので、「この歌で私たちの世界を一変させるわよ!」と言いたいのかもしれません。
「キミが起こす マジック」については、音楽の力でリスナーが奮い立って現実を変えていくことを表しているように聞こえます。
ただ、この後に登場する「キミ」の使い方を考慮すると、「キミ=未来の自分(主人公)」と解釈した方が筋が通りそうです。
そう考えると、「キミが起こす マジック」は「未来の私が歌で世界を変えること」であると考察できます。
次の歌詞です。
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目を閉じれば未来が開いて
いつまでも終わりが来ないようにって
この歌を歌うよ
≪新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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1行目は、目を閉じ、心を込めて歌うことで未来が明るく開けてくるという感覚でしょうか。
続く「いつまでも終わりが来ないように」は「リスナーと共有している夢のような世界がいつまでも続くように」という願いのように聞こえますね。
音楽によって自他ともに明るい未来を手に入れることが、主人公が歌を歌う目的(=世界を変えること)なのかもしれません。
次の歌詞に入ります。
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Do you wanna play? リアルゲーム ギリギリ
綱渡りみたいな旋律 認めない戻れない忘れたい
夢の中に居させて I wanna be free
見えるよ新時代が 世界の向こうへ
さあ行くよ NewWorld
≪新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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1行目は「“リアルゲーム”をプレイしたいか?」といった意味合いだと思われます。
その「リアルゲーム」というのは、「綱渡り」のような「ギリギリ」で危うい生き方をすることだと解釈できそうです。
「旋律」という言葉は、絶妙なバランスで成り立っている「現実」をメロディラインに例えているのかもしれません。
そんな「旋律」に対して続くフレーズは「認めない戻れない忘れたい」。
おそらくこれは「危うい現実を認めたくないけど引き返すこともできない。だからせめて忘れてしまいたい」といったニュアンスだと思われます。
そしてその最たるものが「夢の中に居させて」。
現実を忘れられる一番の手段が「夢」ということでしょうか。
さらに、続く歌詞は「I wanna be free(自由になりたい)」。
これは「現実の苦悩から解放されたい」という欲求だと考えられます。
そんな「苦悩からの解放」を叶えるステージこそ、主人公が航海に出ようとしている「新時代」であり「世界の向こう」であり「NewWorld」なのでしょう。
続いて、サビの歌詞です。
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新時代はこの未来だ
世界中全部 変えてしまえば 変えてしまえば
果てしない音楽がもっと届くように
夢は見ないわ キミが話した 「ボクを信じて」
≪新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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「私の歌で新しい時代を作る!」という主人公の熱意が伝わってきますね。
そして無限の可能性を持った音楽が、多くの人に届いてほしいと願っているようです。
スターたる者「夢を届ける」存在だからか、新時代の歌姫である主人公は「夢は見ないわ」と宣言しています。
「ボクを信じて」と話した「キミ」は、実際に時代の変革を成し遂げた「未来の自分」のイメージだと解釈できそうです。
きっとその「未来の自分像」は、現実の苦悩から解放された自由な歌手なのでしょう。
立派な歌姫になって
ここからは2番以降の歌詞を見ていきます。
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あれこれいらないものは消して
リアルをカラフルに越えようぜ
ミュージック 今始まる ライジング
≪新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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どうでもいいことは考えないで「リアルをカラフルに越えよう」とのこと。
「単調で色のない現実を歌の力で超越しよう」といったニュアンスでしょうか。
続く歌詞は「今始まる ライジング」。
「ライジング(rising)」は上昇や成長という意味です。
くすんだ現実をカラフルに変えるような「革命や伝説の始まり」を予感させますね。
次の歌詞です。
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目をつぶりみんなで逃げようよ
今よりイイモノを見せてあげるよ
この歌を歌えば
≪新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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1番では主人公が目を閉じて歌っている情景がイメージできました。
今回は「みんなで」とあるので、リスナーに対して「目をつぶって逃げよう」と呼びかけているようです。
おそらく耳に意識を集中させ、曲の世界へ連れ出そうとしているのではないでしょうか。
主人公は自身の歌の力で「ジャマモノ やなもの」ではなく「イイモノ」をリスナーに見せてあげるという気概のようです。
次の歌詞に続きます。
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Do you wanna play? リアルゲーム ギリギリ
綱渡りみたいな運命 認めない戻れない忘れたい
夢の中に居させて I wanna be free
見えるよ新時代が 世界の向こうへ
さあ行くよ NewWorld
≪新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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1番では「旋律」だった部分が「運命」に変わりました。
主人公は、絶妙なバランスで成り立つ「今この瞬間の現実」だけでなく、「この先の未来」についても「苦悩から解放したい」と燃えているようです。
そんな主人公が見越している「新時代」の幕開け。
リスナーの手を取るような「さあ行くよ NewWorld」の果てに、最後のサビです。
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信じたいわ この未来を
世界中全部 変えてしまえば 変えてしまえば
果てしない音楽がもっと届くように
夢を見せるよ 夢を見せるよ 新時代だ
新時代だ
≪新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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主人公のイメージの中で「ボクを信じて」と話した「未来の自分」。
世界を驚かせるような才能や情熱があっても、将来への不安や恐怖感が完全に消えるとは限りません。
それでも、成功を手にした未来の自分像を「信じたい」主人公。
大勢の人々に「夢を見せる」のがスターかもしれませんが、それには相当な覚悟と大きな責任が伴うことでしょう。
もしかしたら自ら確かめるように「新時代だ」と宣言することで、主人公はリスナーのみならず自分自身の不安をも掻き消そうと奮闘しているのかもしれません。
きっとそんな強大なプレッシャーに打ち勝ったときが、立派な歌姫の誕生の瞬間なのでしょうね。
強いだけじゃない「新時代」の歌姫
今回は、Ado『新時代』の歌詞の意味を考察しました。「新しい歌姫の誕生」に思わず期待に胸を膨らませてしまう、自信たっぷりの力強い楽曲でしたね。
ただ、未来を担う歌姫とはいえ、主人公も私たちと同じ人間です。
「本当に自分の才能を信じていいのか」「この先もずっと歌い続けられるのか」などと、不安に襲われることもあるのでしょう。
ポジティブ全開というわけではなく、そんな人間らしい揺らぎさえも垣間見ることができる楽曲でした。
もしかしたら『新時代』に1番パワーをもらえるのは、たびたび「令和の歌姫」として名前の挙がるAdo自身かもしれませんね。