TikTokで大注目!鬱ボカロの意味を考察
きくお feat.初音ミクの『愛して愛して愛して』は、2013年に雑誌『MIKU-Pack music&artworks feat.初音ミク』1号付録CDにて先行収録された書き下ろし楽曲です。2022年2月からは大人気リズムゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ!feat.初音ミク』のゲーム楽曲として配信開始され、TikTokでもいま人気が再燃しています。
“鬱ボカロ”とも言われる、名曲『愛して愛して愛して』の歌詞の意味をさっそく考察してみましょう。
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はるか遠い遠い昔 巻かれた首輪
人が欲しい人が欲しいと叫ぶ 呪いの首輪
怒らないで見捨てないで どこもいかないで(ねえ)
強く絞める吐くまで絞める 人がいないいないと
≪愛して愛して愛して 歌詞より抜粋≫
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主人公の少女は、はるか昔に巻かれた「首輪」に長年囚われています。
その首輪は「人が欲しい人が欲しいと叫ぶ呪いの首輪」です。
「人が欲しい」という言葉は続く「怒らないで見捨てないでどこもいかないで」の歌詞と繋がっていて、人の関心や好意を得たいという心情を表しています。
つまり主人公に巻かれた首輪とは、彼女が持つ人に認められたいという、承認欲求を示していると考察できます。
承認欲求は誰でも少なからず持っているものですが、主人公は首輪に強く首を絞められているかのように、自分の強すぎる承認欲求に苦しんでいるようです。
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いい成績でしょ ねえ ねえ いい子でしょ
かわいい子でしょ ねえ ねえ 良い子でしょう 苦しい ねえ
≪愛して愛して愛して 歌詞より抜粋≫
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学校でいい成績を取るのも周囲から「いい子」と認められたいからです。
「かわいい子でしょ」と自ら言うのは、人が自分をどう見ているかを気にしている証拠と言えます。
容姿も頭も良い主人公はきっと、周りからすれば悩みなんてないような順風満帆な人生に見えるでしょう。
しかしふと呟かれる「苦しい」の一言に、承認欲求を満たすために必死で頑張る彼女の本音が隠れているようです。
誰よりも狂おしいほどに愛されたい
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愛して 愛して 愛して もっともっと 愛して 愛して 狂おしいほどに
苦しい 苦しい 呪縛を 解いて解いて ねえ 止められない 嗚呼
≪愛して愛して愛して 歌詞より抜粋≫
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主人公の願いは「愛して」ほしいだけ。
ただ、愛に飢えるあまり目に見えて愛されていると実感できないと不安で、「もっともっと」「狂おしいほどに」愛してと強く欲してしまいます。
そんな自分でさえコントロールできない欲求に苦しんでいて、この「呪縛を解いて」と切望していますがどうにもできません。
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身体 身体 大きくなっても小さい首輪
苦しくなる足りなくなる 人が 人が 足りない
≪愛して愛して愛して 歌詞より抜粋≫
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成長して身体は大きくなっても首輪は小さいままで、むしろ以前よりも自身を苦しめてきます。
この描写は、年を重ねて世界が広がれば広がるほど注目を浴びることが難しくなるために、承認欲求を募らせていく様子を表現しているのかもしれません。
いつまでも「人が足りない」と渇望し続けています。
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クラスの誰にも負けない キレイないい子でしょう(ねえ)
あの子よりもどの子よりも 誰も彼も私を見てよ
≪愛して愛して愛して 歌詞より抜粋≫
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「キレイないい子」を目指す人は多いでしょう。
しかし「クラスの誰にも負けない」というフレーズが、競争心の強さを物語っていますよね。
そして「あの子よりもどの子よりも誰も彼も私を見てよ」と、誰よりも自分が注目を浴びていないと気が済まない気持ちを言い表しています。
汚いあなたに愛してほしい
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体育館裏 あなたに告白を
嘘みたいでしょ あなたが好きなの 汚いあなたが
≪愛して愛して愛して 歌詞より抜粋≫
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この歌詞では、主人公がある人を体育館裏に呼び出して告白するシーンが描かれています。
ところが相手を「汚い」と言って上から目線で「嘘みたいでしょ」と考えているため、相手に本気で恋をして告白するのとは違った感情があるようです。
こうした点から、この告白は周囲の注目を浴びようとする、主人公のパフォーマンスと考えてみました。
もしくは「汚いあなた」を恋人にするメリットが彼女にはあるのかもしれません。
どちらにしても愛情すら自分の心を満たす道具のように使っています。
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愛して 愛して 愛して 全部あげる あなたに あなたに 全部背負ってもらうよ
足りない あなたが 足りない 離さないよ 嗚呼 ごめんなさい
愛して 愛して 愛して もっともっと 愛して 愛して 狂おしいほどに
苦しい 離さない 苦しい もっともっと ねえ 幸せなの 嗚呼
幸せなの 嗚呼
≪愛して愛して愛して 歌詞より抜粋≫
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「全部あげる あなたに あなたに 全部背負ってもらうよ」という歌詞からすると、「あなた」に自分の承認欲求を満たす役目を負わせるために告白したと解釈できそうです。
とはいえ、ただ利用しようとしているのとも違います。
「あなたが足りない」「ごめんなさい」と続いているので、主人公は本当に彼が好きなのでしょう。
強すぎる承認欲求を満たすために、好きな人を利用するなんて間違っている。
そう分かっているのに、衝動を抑えることができないようです。
「愛して」とひたすら渇望する自分に苦しみながらも、満たされて幸せを感じる複雑な心情が切なく聴こえてきます。
歌詞の世界観を引き立てるMVも必見
きくおの『愛して愛して愛して』は、人の心の奥に潜む闇を独自の感性で表現した神曲です。イラストをさしみやま、動画を赤卵が担当したMVも、おどろおどろしい雰囲気で歌詞の世界観を見事に演出していますよ。
一度見れば忘れられないほどの衝撃を与えてくれる作品です。
怖さの中にも人が抱えている不安や切なさが表現されているので、意味を考えながらじっくり聴いてみてくださいね。