こんな僕なら死ねばいいのに
2013年リリースされたボカロP・ねこぼーろの28作品目にして、自身初のミリオン達成曲でもある『自傷無色』。
ササノマリイ名義の本人によるカバーでも人気の代表曲で、人気音楽ゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ!feat.初音ミク』のゲーム内楽曲に選ばれた名曲でもあります。
ファンから「共感できる号泣ソング!」と絶賛されている、『自傷無色』の歌詞の意味を考察していきましょう。
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君のようなひとになりたいな
「僕らしいひと」になりたいな
望むならそうすりゃいいけどさ
でもそれってほんとにぼくなのかい
子供騙しな夢ひとつ
こんな僕なら死ねばいいのに
≪自傷無色 歌詞より抜粋≫
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主人公はある人に憧れていて、「君のようなひとになりたいな」と願っています。
「「僕らしいひと」になりたいな」というフレーズは、自分らしさと言える個性を持ちたいとのだと解釈できそうです。
おそらく主人公から見て「君」は自分とは違って個性を持っている人で、その姿を眩しく思っているのでしょう。
もちろん自分も個性を持って「君」のようになればいいのだと分かってはいますが、誰かを見て生まれた個性は本当に「僕らしい」と言えるのだろうかと悩んでいもいるよう。
自分らしさがほしいなんて「子供騙しな夢」しか持てない無力さに落胆し、「こんな僕なら死ねばいいのに」とまで考えてしまいます。
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こんな僕が生きてるだけで
何万人のひとが悲しんで
誰も僕を望まない
そんな世界だったらいいのにな
こんな僕が消えちゃうだけで
何億人のひとが喜んで
誰も何も憎まないなら
そんなうれしいことはないな
≪自傷無色 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞には、主人公の切なく複雑な気持ちが綴られています。
数多の人が自分が生きていることを悲しみ、消えることを喜ぶ世界であればいいのに。
誰にも望まれず、自分の死に関わることを、誰も憎まない世界なら安心して去れるのにと思っています。
しかしその言葉の裏には、「自分の生死が周囲の人に強い影響を与えられる価値ある存在になりたい」という願望も込められているように感じます。
メイドイン他人の自分なんていらない
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明日も僕は夢うつつ
このまま僕は消えていいのに
≪自傷無色 歌詞より抜粋≫
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主人公は夢の中にいるような、ぼんやりとした日々を過ごしているようです。
どうせぼんやり生きるくらいなら「このまま僕は消えていいのに」と考えます。
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こんな僕が生きたところで
何億人のひとは知らないし
誰も僕を望まない
そんな世界だったらいいのかな
こんな僕が消えたところで
何億人のひとは変わらない
誰も僕を憎まないなら
損した事に変わりないな
≪自傷無色 歌詞より抜粋≫
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その中でふと自分の気持ちを見つめ直している様子が、この歌詞から見て取れます。
自分が何をしていようが誰も目に留めず、何も求めないような世界だったら満足なのだろうか。
「誰も僕を憎まないなら損した事に変わりないな」という歌詞から、いっそ自分のことを憎んでほしい気持ちが読み取れます。
それほど深く誰かの心に残ることを願う気持ちは不器用ながら、誰の心の奥底にもある想いのように感じます。
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最期なんかみんな同じように倒れてゆきます
メイドイン 他人 の 「自分自身」崩れてゆきます
最期なんかみんな同じように離れてくのに
≪自傷無色 歌詞より抜粋≫
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「メイドイン他人の「自分自身」」というフレーズは、周囲から見た自身の人物像に合わせて振る舞っていることを示しています。
しかもそれは主人公だけでなく、誰もが人の望む自分を作っているということなのでしょう。
しかし、そうして繕っても死ぬ時には崩れ「みんな同じように倒れてゆきます」。
身近にいた人たちも離れていって結局は孤独に死んでいくしかないのに、と全て無意味なことと感じているようです。
もっと自由に、思うがままに生きたいというのが本心なのかもしれません。
「自傷無色」の意味とは?
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こんな僕が生きてるだけで
なんで君はそんなに笑うの
君がそんな笑顔じゃ
悲しくても消えたくても
さよならする理由なんてもう
無ければいいのに
こんな僕が消えたところで
何億人のひとは変わらない
だけど僕を止める何かが
そんな顔しちゃ笑えないや
≪自傷無色 歌詞より抜粋≫
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この部分から、消えてしまいたいと願う主人公を思い止まらせている理由が考察できます。
それは憧れの「君」が笑顔を向けてくれること。
自分が生きているだけで喜んでくれる、笑顔で接してくれる人がいるから、どんなに悲しくても消えたくても行動に移すことができません。
その人の笑顔を見る度、「僕」が消えると悲しませてしまうことが分かるので、余計に足踏みするのでしょう。
「こんな僕が消えたところで何億人のひとは変わらない」としても、唯一思い留まらせる存在が悲しむなら、きっと望み通り消えても喜べないはずです。
主人公は自らの死によって、自分を大切に思ってくれる人を悲しませたいわけではないのです。
だからこそ、自身の心では死を選びながらも実際に体を傷つけてはいないという意味で「自傷無色」というタイトルがつけられているのではないでしょうか。
苦しい人生は変えられないとしても、人との繋がりが自身を守ってくれることを感じられる、とても深い歌詞です。
「自傷無色」は心を軽くしてくれる感動ソング
ねこぼーろ制作のボカロ曲『自傷無色』は人生に苦しむ気持ちを描きながらも、聴いた後に心をじんわり温かくしてくれるような楽曲です。プロセカのユニット「25時、ナイトコードで。」の歌唱やオリジナルのイラストMVも楽曲の切ない世界観を引き立てていて、ボカロver.とはまた違った魅力があります。
不安やつらさに押し潰されそうな時、この号泣ソングで心を軽くしてみませんか?