プロセカにボカロP・和田たけあき書き下ろし曲が追加
日本のみならず海外でも人気の音楽ゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』で、和田たけあき作詞作曲の『てらてら』の配信がスタートしました。『てらてら』はゲーム内ユニット「Leo/need」のための書き下ろし楽曲。
幼馴染でありながら、すれ違いにより疎遠になっていた星乃一歌、天馬咲希、望月穂波、日野森志歩の4人で結成されたバンド・Leo/needにスポットを当てたゲーム内イベント「No seek No find」のストーリーにマッチした内容となっています。
イベントストーリーにも軽く触れながら、歌詞の意味を徹底解説していきましょう。
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おぼつかないねいつだって
踏み外してる何度も
毎回こんがらがった頭固まるんだ
嫌われたくないからね
ようやく取り戻したんだ
シャバの空気愛しくて
なんか疑い方も忘れかけていた
そんな毎日はどうだい?
≪てらてら 歌詞より抜粋≫
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1番冒頭の歌詞から、厳しい現実とその中で生まれる不安が感じられます。
個人として人に「嫌われたくない」、グループとして愛されたいと思うからこそ、どうすればいいか分からず思い悩んでいるようです。
後半の「ようやく取り戻したんだ シャバの空気愛しくて」のフレーズは、療養のために中学時代を病院で過ごし、高校生になってやっと退院できた咲希がLeo/needのメンバーとまた一緒に過ごせることを喜んでいる様子を表していると解釈できます。
「疑い方も忘れかけていた」ということは、裏を返せば人を本気で信じることもできていないということでもあるでしょう。
メンバーそれぞれが人との距離を置いていたために、良い人間関係を築けなかった日々を思い返しているのかもしれません。
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いないいないいない!
あたしがいないよ
またしてもいないよ
ねぇ高い高い場所からブレブレの夢を見る
それもどうだろう
≪てらてら 歌詞より抜粋≫
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咲希は中学入学から間もなく入院したため、幼馴染やクラスメイトの思い出の中に自分が加わることはできませんでした。
「いないいないいない! あたしがいないよ」というフレーズは、彼女の抱える孤独の叫びを表しているのでしょう。
みんなとは違う場所から、うまく思い描くこともできない夢をぼんやりと見ていた苦しさや寂しさが込められているように感じます。
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ありふれた言葉に乗っかってら
盗んだ言葉に乗っかってら
レビューサイトの星の数で夢を語らないで
余計なものまで乗っかってら
要らない!あたしそんなんなら
シンクロナイズしちゃったら
心 行方知れずだ あ~あ
≪てらてら 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞を見ると、タイトルの「てらてら」は語尾の「てら」から取られていることが分かります。
また、今回のイベントストーリーで登場したanemoneというバンドに所属するキャラクター・朔から告げられた「王道ポップスの女子高生バンド」というイメージに、Leo/needが苦しんでいることも分かるでしょう。
「ありふれた言葉」や「盗んだ言葉」というフレーズは、作詞の難しさを物語っていますよね。
さらに、今や当たり前のように「レビューサイトの星の数」が重要視されていて、事実を知らないのにも関わらず評価が決めつけられてしまう時代です。
音楽業界でも曲を直接聴いたこともないのに、イメージや周囲の評判だけで評価されることがあり、実際にLeo/needは朔からイメージで語られていました。
星の数はクリエイターの自信を支える一方で、信じすぎれば自信を失わせるものにもなります。
この部分からは、自分たちが懸命に紡いだ言葉や音をちゃんと聴いて評価してほしいという想いが感じられます。
いわゆる王道のグループと言われているままなら、いつまで経っても自分たちが本当に表現したい心の中の気持ちは伝えられないままです。
Leo/needらしい曲を作りたいんだ、という真っ直ぐな意思が込められた歌詞ですね。
自分たちの音楽を信じたい
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“細~く引かれた白線を
踏み外したらエンドロール
当然残機はたったひとつで走るんだ
次は二度と無いからね”
ってそんな狂った常識も
それすらも愛しくて
なんか自分自身を縛り付けていた
アイデンティティは崩壊!
≪てらてら 歌詞より抜粋≫
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「細~く引かれた白線」を歩くという描写は、目指すゴールへの道のりの険しさを象徴しているように思えます。
ゲームなら残機は幾つかありますが、現実の人生ではチャンスは一度だけでやり直しはできません。
それでも命さえあれば、どんな挑戦もできるはずです。
これまでほかのグループとは違うアイデンティティを重視しすぎて、それがかえって「自分自身を縛り付けていた」ということにも気づいたのでしょう。
もっと自由に自分たちの個性を表現したい気持ちが垣間見えます。
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キライキライキライになりたくないよ
あたし自身も世界も
期待したいのはただ
今ここで鳴らす音だけでいいでしょ
≪てらてら 歌詞より抜粋≫
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この部分はおそらく咲希の気持ちを歌っていて、うまくいかないからと言って自分自身や周囲を取り巻くこの世界を「キライになりたくないよ」と告白しています。
嫌いになりたくないと思うのは、実際には嫌いになりそうになっているから。
そこが咲希の弱さであり、反対につらい思いをしながらも大切にしたいと思えるところが強さとも言えるのではないでしょうか。
どうあっても奏でる音だけは信じていたいと、自分たちの音楽を心から愛する様子も伝わってきます。
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ありふれた言葉に乗っかったら
成層圏越えられるんかな?
正義は常にノスタルジアだから疑わしいよね
神様の二次創作かな
要らない!あたしそんなんなら
オリジナルになれないんなら
あたししょうもないヤツでもいいわ
≪てらてら 歌詞より抜粋≫
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「成層圏」は王道から抜け出せないという壁や、メジャーデビューという突破しにくい目標のことかもしれません。
誰かの真似をしていればいつかその壁を突破できるのだろうかと考えているようです。
正義なんて懐かしいだけの過去のもので、現実ではもう見失ってしまったから自分たちの可能性を信じ切ることができないのでしょう。
自分たちがつらい状況にいるのは、全てを知ったうえで作られる気紛れな「神様の二次創作かな」と落胆している様子もうかがえますね。
見えない力に弄ばれているようで「要らない!あたしそんなんなら」と感情を吐き出しています。
「オリジナルになれないんならあたししょうもないヤツでもいいわ」という歌詞からは、どこかの音楽グループの二番煎じではなく、Leo/needというオリジナルになりたいという気持ちが伝わってきます。
同時にLeo/needと共に歌う初音ミクもデフォルトのミクから生まれた違う存在のため、こちらもオリジナルとは言えません。
Leo/needと初音ミクの共鳴する想いに心を掴まれます。
踏み外して自分の想いを表現しよう
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愛されたいなら踏み外して
誰もいない場所で歌おうぜ
今更散々擦られてはまんまるの正解みたいな世界を
高い高い場所にさ
大切に飾ってる
それもどうだろう
≪てらてら 歌詞より抜粋≫
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1番冒頭では「踏み外している」ことに悩んでいる様子でしたが、ここでは思い切って「踏み外して誰もいない場所で歌おうぜ」と前向きな言葉に変わっています。
きっと誰かの考えに合わせるのではなく、自分の想いを正直に表現をすることが人としてもグループとしても愛されるカギだと結論づけたのでしょう。
「今更散々擦すられてはまんまるの正解みたいな世界」とは、誰でも受け入れやすい王道の曲がもてはやされていることを示していると考察しました。
メジャーデビューを意識するあまり、自分たちらしさと言いつつも多くの人に受け入れられる曲を目指していた部分があったのかもしれません。
しかし、本当に大切なのは自分たちの感情を音楽に乗せることです。
その結果「誰もいない場所」で歌うことになるとしても、Leo/needにしか作れない音楽を表現すること以上に価値のあるものはないのではないでしょうか。
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ありふれた言葉に乗っかってら
盗んだ言葉に乗っかってら
果てしないだけの場所でなんか見つかりましたか?
余計なものだけ乗っかってら
要らない!あたしそんなんなら
シンクロナイズしちゃったら
心 行方知れずだ あ~あ
≪てらてら 歌詞より抜粋≫
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最後のサビで「果てしないだけの場所でなんか見つかりましたか?」と問いかけてきます。
使い古されたような言葉で勝負するには世界は広すぎて、何の価値も見出せません。
輝くように美しい気持ちも他人には見せられないような仄暗い気持ちも、心の中の感情は全てひっくるめて自分自身を形作るものです。
だから余計なものを削ぎ落して、シンプルに自分の気持ちを表現していきたいという決意を感じさせます。
和田たけあきによると、タイトルの「てらてら」には4つの意味が込められているそう。
歌詞を考察してみて、その4つとは語尾の「てら」、グループのモチーフである「ステラ(星)」、普通ではないことをして人の注意を引こうとするという意味の「奇をてらう」、光り輝くさまを表す「てらてら」のことではないかと感じました。
自分の心や過去と向き合って、自分たちだけの音楽を生み出そうとする真剣さが伝わる名曲です。
Leo/needの新たな魅力を体感して
『てらてら』はこれまでのLeo/needの明るい楽曲の雰囲気とは異なり、メンバーが心に抱える暗い思いを吐き出し決意を新たにするようなダークでかっこいい楽曲となっています。この楽曲を構成するイベントストーリーと秘められた意味に注目しながら『てらてら』が作り出す世界を存分に堪能してくださいね。