知れば毎夏聴きたくなる名曲「わたがし」
『わたがし』は、2012年7月にリリースされたback numberの6枚目のシングル。同年11月21日にリリースされた3rdアルバム『blues』にも収録されています。
さらに、TBS系列で現在も放送中の音楽番組「COUNT DOWN TV」では、2012年7月期のオープニングテーマに起用されました。
『わたがし』では、back numberの他作品と同様にボーカル兼ギターの清水依与吏が作詞・作曲を務め、back numberが編曲を担当しました。
また、EXILE、ゆず、青山テルマなど数々のアーティストをプロデュースしてきたsoundbreakersが編曲に参加しています。
さらに、本作のPVおよびCDジャケットには、人気女優の山本美月が出演したことで話題を呼びました。
楽曲の世界観を丁寧に映像に落とし込んだこちらのPVでは、歌詞にも登場する「水色にはなびらの浴衣」を纏った山本が夏祭りを楽しむ様子が映し出されます。
彼女の透明感も相まって、主人公の目に映る景色をそのまま切り取ったような作品に仕上がりました。
さっそく『わたがし』の歌詞をたどりながら、楽曲の魅力を紐解いていきましょう。
臨場感に溢れた情景描写
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水色にはなびらの浴衣がこの世で一番
似合うのはたぶん君だと思う
よく誘えた 泣きそうだ
≪わたがし 歌詞より抜粋≫
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たった1フレーズで、主人公の世界がどれほど「君」で埋め尽くされているのかが伝わってきます。
さらに、恋人未満の関係である君を夏祭りに誘うため、僕がどれだけの勇気を振り絞ったのかが「よく誘えた 泣きそうだ」の1文に集約されています。
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僕はうなずくだけで
気の利いた言葉も出てきやしない
君の隣歩く事に慣れてない自分が
恥ずかしくて
≪わたがし 歌詞より抜粋≫
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誘ったはいいものの、君と2人で過ごすことに慣れていない主人公。
君の前では余裕でありたいと思う反面、本当に好きな人の前ではどう振る舞えばいいのか分からない初心さが甘酸っぱさを引き出します。
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想いがあふれたらどうやって
どんなきっかけタイミングで
手を繋いだらいいんだろう
どう見ても柔らかい君の手を
どんな強さでつかんで
どんな顔で見つめればいいの
≪わたがし 歌詞より抜粋≫
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抑えきれない気持ちを持て余すように、この先の行動を何度もシミュレーションする主人公。
余裕のない中でも、君のことを精一杯大切に扱おうとする気持ちが読み取れます。
聴き手も思わずドキドキしてしまうほど、臨場感に溢れた情景描写は流石としか言えません。
「わたがし」のような甘い思い出
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君がさっき口ずさんだ
歌にもたまに目が合う事も
深い意味なんてないのだろう
悲しいけど
≪わたがし 歌詞より抜粋≫
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君との距離感にソワソワしていた前半と打って変わり、後半では主人公の奥手な一面が垣間見られます。
君が好きという気持ちで胸が張り裂けそうな主人公は、君の一挙手一投足に思わず反応してしまいます。
それでも自分を期待させないよう、君の言動には何の意味もないのだと言い聞かせて自分を落ち着かせているようです。
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君が笑ってくれる
ただそれだけの事で僕はついに
心の場所を見つけたよ
うるさくて痛くてもどかしくて
≪わたがし 歌詞より抜粋≫
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それでも君が僕のしたことに笑ってくれることで、多幸感を感じる主人公。
やっと自分の心の置き所を見つけた気がして、さらなる動悸の高鳴りを感じるのでした。
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この胸の痛みはどうやって
君にうつしたらいいんだろう
横にいるだけじゃ駄目なんだ
もう君の気を引ける話題なんて
とっくに底をついて
残されてる言葉はもう
わかってるけど
≪わたがし 歌詞より抜粋≫
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どうしたら胸を締めつけるこの感情を君に伝えることができるのか。
楽曲の冒頭では、夏祭りに誘えただけで一喜一憂していた主人公が、次第に君からの好意を求めるようになっていきます。
横にいるだけでなく、君の恋人になりたいと、自身の気持ちをはっきりと自覚する主人公。
自分の気持ちを伝える術である「好き」という言葉は分かっているのに、なかなか喉を通り過ぎてくれません。
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夏祭りの最後の日
わたがしを口で溶かす君に
わたがしになりたい僕は言う
楽しいねって
≪わたがし 歌詞より抜粋≫
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無条件に君の一部になれる「わたがし」を羨ましく思いながら、無邪気に笑う君を見つめる僕。
君と僕が過ごした夏祭りも、まるでわたがしのように一瞬で溶けてしまう甘い思い出なのかも知れません。
繊細な心理描写が魅力
今回は、back numberの『わたがし』の内容を歌詞の意味から考察しました。甘酸っぱい恋模様を切り取った本楽曲は、思わず感情移入してしまうほど繊細な心理描写が最大の魅力です。
歌詞には「好き」という直接的な表現がないにもかかわらず、僕から君に対する愛情が痛いほど伝わってきます。
主人公の気持ちに呼応するようなメロディーやコード進行は楽曲の魅力をさらに助長しています。
『わたがし』を聴きながら夏の終わりを楽しんでみてはいかがでしょうか。
Vocal & Guitar : 清水依与吏(シミズイヨリ) Bass : 小島和也(コジマカズヤ) Drums : 栗原寿(クリハラヒサシ) 2004年、群馬にて清水依与吏を中心に結成。 幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年現在のメンバーとなる。 デビュー直前にiTunesが選ぶ2011年最もブレイクが期待でき···