今を駆け抜ける疾走感を味わえる曲
『君と羊と青』の歌詞を冒頭から見ていきましょう。
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今がその時だともう気付いてたんだ 光り方は教わらずとも知っていた
眼の前の現在がもうすでに 思い出色していた
≪君と羊と青 歌詞より抜粋≫
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この歌詞からは、歌詞の主人公が「眼の前の現在が一瞬で思い出色」、つまり過去になってしまうくらい、“今”という時を全速力で生きているのだと分かります。
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奇跡は起こるもんじゃなくて起こすものだと 手当たり次第ボタンがあれば連打した
『今』がすり切れるくらいに生きてたんだ 精一 目一杯を
喜怒哀楽の全方位を 縦横無尽に駆け抜けた日々を
≪君と羊と青 歌詞より抜粋≫
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「手当たり次第ボタンがあれば連打した」という歌詞からは、がむしゃらにチャンスを掴みとろうとしている主人公の姿が見えてきますね。
主人公は心と身体のすべてを使い、全力で目標に向かって突き進んでいるのでしょう。
ロックバンドらしいスピード感のあるメロディも相まって、青臭い疾走感を味わえる楽曲となっています。
歌詞における「君」を考察する
『君と羊と青』の歌詞では、「僕」と「君」が登場します。
「僕」が歌詞の主人公だとすれば、「君」は何を指しているのでしょうか。
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君を見つけ出した時の感情が 今も骨の髄まで動かしてんだ
眩しすぎて閉じた瞳の残像が 今もそこで明日に手を振ってんだ
≪君と羊と青 歌詞より抜粋≫
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「今も骨の髄まで動かしてんだ」という歌詞からは、「僕」にとって、「君」の存在が大きな原動力となっていることが読み取れます。
続きの歌詞に出てくる「残像」という言葉は、人が光を見たとき、その光が消えた後も、光や映像が残って見えるような現象を指します。
“君を見つけ出した時の感情”がずっと心に残っていることや、“君を初めて目にしたときの映像”が忘れられないことを表している歌詞だと考察できるでしょう。
「君」を運命の人と解釈すれば、「君」と出会って惚れ込んだ主人公が、「君」を振り向かせるために一生懸命になるラブソングとして聴けそうですね。
また、「君」を人間ではなく、“目標”や“夢”と解釈すれば、夢を一途に追いかける人の背中を押す応援ソングとしても聴けるでしょう。
タイトル「君と羊と青」の意味とは?
最後に、タイトル『君と羊と青』の意味を考察します。
「君」と「羊」を組み合わせて「群」と読むと、『君と羊と青』は「群青」とも読めるため、この楽曲のテーマは「群青」だと考えられます。
「群青」という言葉が出てくる歌詞を詳しく見てみましょう。
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リアルと夢と永遠と今と幻想が 束になって僕を胴上げしてんだ
あの日僕らを染め上げた群青が 今もこの皮膚の下を覆ってんだ
≪君と羊と青 歌詞より抜粋≫
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「あの日僕らを染め上げた群青」という歌詞の「あの日」というのは、おそらく“君という人物あるいは夢を見つけ出した日”のことでしょう。
続く歌詞の「僕らを染め上げた群青」とは、君という人物あるいは夢に向かって心と身体のすべてを駆り立てた“僕らの青臭い感情”だと捉えられそうです。
「今もこの皮膚の下を覆ってんだ」という歌詞が続きますが、“皮膚の下を覆う群青”で思い浮かぶのは、血管でしょう。
血液は赤色のイメージですが、皮膚や血管の壁を透かすと青色に見えます。
この楽曲における「群青」とは、「君」を見つけ出して駆り立てられた主人公たちの青臭い感情と、「君」に向かって騒ぐ血を表現した言葉なのかもしれません。
また、2011年のNHKサッカー放送のテーマ曲であることを踏まえれば、「群青」は青色のユニホームを着て闘う、サッカー日本代表選手たちを表現しているとも考えられます。
あえて血管を彷彿とさせる歌詞やタイトルにしたのは、試合を前にして血が騒ぐ選手たちの姿と重なるようにしたのではないでしょうか。
「束になって 僕を胴上げしてんだ」という歌詞の「束」も血管を彷彿とさせますし、「胴上げ」という言葉は、まさしくサッカー日本代表選手たちが勝利する姿を想像できる歌詞となっています。
リスナーに寄り添うラブソングや応援ソングとして聴ける一方で、日本代表選手たちを応援するサッカーのテーマソングとしても聴ける、奥深い歌詞だと考察できるでしょう。