作詞者は「武島羽衣」!
『花』は明治時代に制作された日本を代表する楽曲です。
音楽の教科書にも採用されているため、学生時代に授業で聴いたり歌ったりした経験がある人は少なくないはず。
ピンとこなくても楽曲を聴けばどの曲かわかることでしょう。
そんな「花」といえば『滝廉太郎』を思い浮かべる方も少なくないと思いますが、実は廉太郎は作曲のみ。
同曲の作詞は『武島羽衣』という人物が担当しています。
明治時代の楽曲ということもあり、同曲は昔の言葉が多用されているのがポイント。
そのため、歌詞の意味がよくわからないという人も多いかもしれませんね。
一体何が歌われているのかチェックしてみましょう。
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春のうららの 隅田川
のぼりくだりの 船人が
≪花 歌詞より抜粋≫
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まずは有名な楽曲の冒頭部分。
「春のうららの」は春の穏やかに晴れた日のことをさす言葉です。
それを踏まえて解説すると、この部分は「穏やかに晴れた春の日、隅田川を船に乗った人が行ったり来たりしている」という風景描写。
ちなみに当時隅田川では漕艇が盛んで、その様子がモチーフになったとも言われています。
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春のうららの 隅田川
のぼりくだりの 船人が
≪花 歌詞より抜粋≫
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「櫂」とは船を漕ぐためのオールのこと。
船をこいだときに出る水しぶきが、花のように散っているのでしょう。
そんな光景を見て「何にも例えられない!」と感嘆する気持ちが、一番では歌われているようです。
「見てごらん」と指し示すものとは…?
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春のうららの 隅田川
のぼりくだりの 船人が
≪花 歌詞より抜粋≫
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こちらは2番前半の歌詞です。
「見ずや」とは否定に聞こえますが、実は「見てごらん」という意味。
「あけぼの」は明け方をさす言葉なので、ここでは明け方の時間帯に何かを見てほしいという気持ちが歌われています。
では一体何を見て欲しいのでしょうか?
答えは、朝露に濡れて大変美しい様子の桜の木。
作詞者に何かを訴えるかのようなオーラを放っていたことがわかりますね。
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見ずや夕ぐれ手をのべて
われさしまねく 青柳を
≪花 歌詞より抜粋≫
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後半で歌われているのは夕方の様子。
まるで手を伸ばすかのように枝葉がスッとのびた柳に感動しているのでしょう。
1番の描写とは見ているものがだいぶ異なりますが、これもきっと隅田川の様子の一つ。
思わず詩にしてしまうほど美しかったのですね。
日本の美を感じる歌詞に注目
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錦おりなす 長堤に
暮るればのぼる おぼろ月
≪花 歌詞より抜粋≫
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まず、「錦」は美しい織物のことで「長堤」は長い土手を表す言葉。
そして「おぼろ月」は、ぼんやりと霞み、光が薄い春の月をさす言葉です。
いずれも日本の美を感じさせる優美な言葉ですね。
ちなみに、この2行の現代語訳は「織物のように美しい土手に、日が暮れるとおぼろ月が登る」。
「日が暮れる」ということを踏まえると、「織物のように美しい土手」は夕暮れの温かみのある日に照らされた土手の様子を歌っているのかもしれません。
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錦おりなす 長堤に
暮るればのぼる おぼろ月
≪花 歌詞より抜粋≫
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「げに」は「本当に」、「千金」は「価値がある」という意味です。
つまりここでは「先ほどの景色は本当に価値があるもので、どんな言葉にもできない」と美しさに感動した気持ちが歌われています。
春の隅田川は時間を問わず、作詞家を魅了するほど美しいのかもしれませんね。
機会があればみなさんもぜひ、足を運んでみてください。
「花」は歌曲集「四季」の第一曲目!
以上、滝廉太郎作曲・武島羽衣作詞の名曲『花』について解説しました。同曲は滝廉太郎の歌曲集『四季』の第1曲。
第2曲が「納涼」、第3曲が「月」、第4曲「雪」です。
興味を持った方はぜひ『四季』の他の楽曲を聴いてみたり、楽譜を買って同曲の演奏を楽しんでみたりしてくださいね。