『愛は勝つ』を歌ったアーティストKAN
みなさんは、KANをご存じでしょうか。『愛は勝つ』で一定の年代以上の世代の人には有名なシンガーソングライターです。
本名は木村和と書いて「きむらかん」と読み、KANの芸名はこの本名からきています。1990年に発売され大ヒットした『愛は勝つ』。
この曲はオリコンで8週連続1位を記録。当時の大人気バラエティ『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』でよく使用されていました。その後目立ったヒットがない為、伝説の一発屋と言われやすいKANですが、長らく活動しています。
桜ソング『桜ナイトフィーバー』
『桜ナイトフィーバー』はそんなKANの2015年の曲。桜ソングは日本に数多いですが、この曲は一味違います。桜の木の気持ちを歌っているユニークな歌詞が特徴的なんです。ディスコ調のリズムにのせてKANが軽快に桜の木の気持ちを歌います。
桜の木の気持ちを語る!!
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桜 フィーバー フィーバー
春が来て 女子も男子も胸はしゃぎ
夜は ライトアップ ライトアップ 照らされて
誰彼お酒飲んで騒ぐ
これってどうなんでしょう? いかがなものでしょう?
ぼくらだってイキモノなんだ 夜は眠りたい
≪桜ナイトフィーバー 歌詞より抜粋≫
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まず冒頭から良いですね。「これってどうなんでしょう?いかがなものでしょう? ぼくらだってイキモノなんだ 夜は眠りたい」
さりげなく繰り返される花見客に対しての疑問の歌詞。桜の木は夜は眠りたがっているのです。勝手にライトアップされて、酒を飲んで騒ぐ人間に辟易しているのです。
桜の木の気持ちを考えれば、確かにこういう面はあるでしょう。
人間は勝手に花見をして楽しんでいますが、毎年花見で発生する大量のごみが問題になります。桜の木はそんなごみも見ているんですね。
乱れてなんかないっ!!
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桜 フィーバー フィーバー 咲き乱れ
乱れてなんかいないのに
やおら ブロウアップ ブロウアップ 風吹かれ
気がつきゃ吹雪と呼ばれてる
それってどうなんでしょう? いかがなものでしょう?
精一杯に咲いているのに 理解者少ない
≪桜ナイトフィーバー 歌詞より抜粋≫
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ここも良いですね。乱れていないのに、咲いているだけなのに「咲き乱れる」という表現をされる桜。
風に吹かれているだけなのに「桜吹雪」と吹雪扱いされる桜。人間としては良い意味で使っているものの、桜にとってはいい迷惑なのです。
「精一杯に 咲いてるのに 理解者少ない」と桜は思っている。
KANはするどいところをついています。さすが『愛は勝つ』と歌っていた人は、人間の自然に対する愛情のない行動を見抜いているわけですね。
「フィーバー フィーバー」「ブロウアップ ブロウアップ」のリズムも良いですね。これが暗い雰囲気の曲だったらひたすら悲しい曲になっていますが、あくまでもこの曲は明るい雰囲気の曲。
だからこそ、この歌詞が映えるのです。
桜ソングへの皮肉
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桜 フィーバー フィーバー
春だけは 毎年ぼくの歌が出る
だけど フィールサッド フィールサッド
なんでだろな どれも悲しい曲ばかり
実際どうなんでしょう? いかがなものでしょう?
ステキな恋が始まるよな 出会いの歌聴きたい
≪桜ナイトフィーバー 歌詞より抜粋≫
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さらにこの桜ソングへ言及する歌詞がするどいこの曲。「春だけは 毎年ぼくの歌が出る」これはまさに桜ソングへの皮肉。確かに毎年春になると桜ソングが出てきますが、桜自体は本来一年中そこにいるのです。
考えてみれば、春だけ桜ソングを出すのは人間の勝手な都合とも言えるんですね。
さらに桜ソングは「なんでだろうな どれも悲しい曲ばかり」。確かに桜ソングの歌詞は「昔を振り返り」「桜の季節の別れ」を歌っているものが多いです。
桜が咲く季節は卒業シーズンなので、どうしても別れの歌詞が増えるんですね。それが日本人の情緒だと日本人が思い込んでいる。
この曲は、そんな実はおかしな状況をあくまでも「フィーバー フィーバー」「フィールサッド フィールサッド」と軽くリズミカルに皮肉っています。このあたりFuの音でリズムを作っているのも良いですね。耳に残りやすくなります。
非常に視点がするどいこの曲は、2016年にこぶしファクトリーによってカバーされました。
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桜 フィーバー フィーバー
春が来て 女子も男子も胸はしゃぎ
≪桜ナイトフィーバー 歌詞より抜粋≫
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そして、この曲はこのデビュー間もないアイドルグループに、初のオリコンウイークリーチャート1位という記録を与えたのです。
KANの楽曲が時を経て再び1位を獲得した瞬間でもありました。やはりKANの楽曲には力があるんですね。
今年も桜の季節がやってきます。どうせ桜の木の下で騒ぐなら、この曲でフィーバーしてもらいたいですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)