美空ひばりの生涯最後のシングルの意味を徹底解説!
昭和歌謡の女王として愛された日本を代表する歌手・美空ひばり。9歳で歌手デビューを果たしてから常に日本歌謡界の第一線で活躍し、52歳で日本中のファンに惜しまれつつ亡くなってからも唯一無二の輝きを放ち続ける歌姫ですよね。
長い歌手人生で多くの楽曲を歌い名曲を世に送り出してきた美空ひばりが生涯最後のシングルとしてリリースしたのが『川の流れのように』です。
この楽曲は病気を抱え死が近づいていた美空ひばり自身が企画したアルバム『川の流れのように〜不死鳥パートII』の表題曲として、アルバムの総合プロデューサーを任された秋元康が作詞しました。
実は当初、シングルカットされるのは同アルバム収録の『ハハハ』の予定だったそうです。
いつもならスタッフの意見を尊重する美空ひばりが「お願いだから、これだけは私に決めさせて!」と強く希望し、『川の流れのように』のシングルカットが決定しました。
こうして秋元康による儚くも壮大な歌詞、作曲家の見岳章による美しく穏やかな音楽、美空ひばりの力強く伸びやかな歌声が合わさった最高の名曲が誕生したのです。
では改めて『川の流れのように』の歌詞の意味を考察していきましょう。
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知らず知らず
歩いて来た
細く長い この道
振り返れば 遥か遠く
故郷が見える
でこぼこ道や
曲がりくねった道
地図さえない
それもまた人生
≪川の流れのように 歌詞より抜粋≫
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夢を追ってがむしゃらに日々を過ごしているうちに、ふと自分が随分遠くまで人生を歩んできたことに気づく。
『川の流れのように』は歌に生きた美空ひばりの人生を物語るような歌詞から始まります。
確かに夢を持っている人ならきっと誰でもこんな気持ちを経験したことがあるのではないでしょうか。
故郷を離れるということは心の安らぎを失うということでもあるかもしれません。
孤独や不安を抱えながら「細く長いこの道」を懸命に進んでいきます。
時には「でこぼこ道」に足を取られたり、「曲がりくねった道」にうんざりすることもあります。
「地図さえない」ためその道中は迷いや苦しみがつきものですが、地図がないからこそ自分で道を作り出せるのが人生の魅力と言えます。
人生は川の流れのように
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ああ 川の流れのように
ゆるやかに
いくつも 時代は過ぎて
ああ 川の流れのように
とめどなく
空が黄昏に 染まるだけ
≪川の流れのように 歌詞より抜粋≫
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タイトルにもなっている「川の流れのように」というフレーズの「川」のモデルは、ニューヨークのイースト川です。
当時秋元康はニューヨークに住んでいて、ずっと見ていたイースト川からインスピレーションを受けてタイトル先行で作詞したと明かされています。
この楽曲の重要なポイントは人生を川に例えていることです。
冒頭では道でたとえられていましたが、川で表現することによってより雄大で穏やかなイメージが感じ取れます。
人生は楽なものではありませんが「川の流れのようにゆるやかにいくつも時代は過ぎて」いくのだから、無理をして忙しなく生きる必要はないというメッセージが伝わってきます。
そして川が「とめどなく」流れるのと同じく、人生もひたすら進んでいくものです。
「空が黄昏に染まるだけ」という言葉は、空が夕暮れ色に染まるように自分が人生の盛りを過ぎていくのを感じている様子を捉えていると解釈できます。
歳を重ね老いていくことは誰にも止められないから、心を広くして受け入れようという現実的な見方を示しているように思えますね。
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生きることは
旅すること
終わりのない この道
愛する人 そばに連れて
夢探しながら
雨に降られて
ぬかるんだ道でも
いつかは また
晴れる日が来るから
≪川の流れのように 歌詞より抜粋≫
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「生きることは旅すること」であり、常に様々な目的地を目指して模索しながら進んでいきます。
故郷を離れたその人はやがて「愛する人」を見つけて共に進むようになります。
「雨に降られてぬかるんだ道」は、人生で訪れる悲しみを象徴していると考えられるでしょう。
それは気持ちを落ち込ませる出来事ですが、「いつかはまた晴れる日が来る」と信じて前を向き進むことが大切です。
流れにこの身をまかせていたい
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ああ 川の流れのように
おだやかにこの身を
まかせていたい
ああ 川の流れのように
移りゆく季節
雪どけを待ちながら
ああ 川の流れのように
おだやかにこの身を
まかせていたい
ああ 川の流れのように
いつまでも
青いせせらぎを
聞きながら
≪川の流れのように 歌詞より抜粋≫
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自分の意思とは関係なく進んでいく人生に「おだやかにこの身をまかせていたい」という言葉は、美空ひばりによって歌われることでより重みのある言葉に感じられます。
寒く厳しい冬の後には温かくうららかな春が訪れるように、人生もまた悪い時と良い時を繰り返していきます。
今の自分の状況を悲観することなく「雪どけを待ちながら」身を任せようという考え方を見習いたいものです。
最後の「青いせせらぎ」というフレーズからは、青くみずみずしい川の心地よい水の音を想像できます。
これは人生の数多くの出来事やその中で出会った人たちの存在を表現していると考察しました。
人生という川は流れ続けるため、せせらぎはずっと聞こえてきます。
どのような出来事に直面するとしてもその日々を爽やかなものとして受け止めることができれば、人生をより心豊かに生きられるのかもしれません。
名曲は時代が変わっても色褪せない!
美空ひばりは『川の流れのように』の歌詞に自分の人生を重ねて歌いましたが、その歌声と歌詞は現代を生きるわたしたちひとりひとりの心にも響きます。どの時代に生きどんな生活をしていても、人生とは誰にとっても平等に川の流れのようなものです。
今ある命を大切にして広い心で穏やかに生きるよう励ますこの曲を、いつまでも残していきたいですね。