自分のこと、ちゃんと振り返ってる?
1日は24時間。その決まった時間だけはどの人にも等しく与えられている。けれど、過ぎていく日々にいつの間にか流されていくばかり。しっかりと自分のことを振り返る機会はなかなか与えられないのが現実だ。
今の自分の立ち位置は、本当に自分が望んでいたものなのか…?
それに気づき歌い上げたのが、阿部真央の「19歳の唄」だ。阿部真央は2009年にメジャーデビューしたシンガーソングライター。
この曲は2010年秋にリリースされた5枚目のシングルだ。タイトルの通り19歳の時に書いた歌詞であり、上京して1年が経った後の彼女の心境が描きこまれている。
リアルな心境を歌詞で表現
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息をしているのか 否かも理解らぬ日々に
手に入れた自由を 持て余し流されてる
何を求めたのか 何処に行きたかったのか
手に入れた安らぎの中で ごまかし目を背けてる
≪19歳の唄 歌詞より抜粋≫
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メジャーデビュー後、これまでとは全く違う環境に身を置いたことで慌ただしく過ぎていく日々。しかし、阿部真央はそんな毎日を過ごすうちに「デビューしたことに安心している」自分がいることに気づいてしまう。
理想の自分って…?
デビューした先にやりたいことがあったはずなのに、停滞してしまっていたのだ。幼い頃から目指してきた、歌手という職業。ずっと夢見ていた世界で歌っているのは、もっと楽しく、刺激を受けながらのびのびとステージに立つ自分のはずだった。----------------
幾度も夢見ていた世界で歌うのは
おそらくこんな僕ではなかった
≪19歳の唄 歌詞より抜粋≫
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描いた夢が形になった…けれど。
デビュー曲では本人の理想通りの印象をリスナーに与えることに成功していた。PVに映るアコースティックギターをかき鳴らす姿は、間違いなく新たなロックガールの登場を知らしめたのだ。その姿ももちろん正しく「阿部真央」であったし、そうなりたいと思い描いていた自分の姿ではあった。
しかしその後「ずっとこの姿のままでいいのか?」という壁にぶつかる。今のイメージは、真に自分が求めていたものだったのか。もっと自分に似合う、歌うべきものも他にあるのではないか。そんな考えからスランプ状態に陥っていたという。
次のアルバムを発表したことでこのスランプからは脱したが、こういった焦りは誰しも持っているものではないだろうか。
なんとなくがリアルになった。
ずっと目標にしていたことを達成した、なんとなくこうなればいいなと思っていたことが現実になった。喜ばしい出来事だったのに、そのうち少しずつ予想していなかった方向に流される。軌道修正を試みる気持ちとは裏腹に、せわしく過ぎる毎日の中、そして否応なく変化していく環境の中で、力強く進んでいくための力が削がれていってしまう。
そのうちに、焦ることすらできなくなることだってある。だからこそこうやって「未だ終わらせたくないよ」と叫ぶのだ。
いつだって壊せるんだ。
----------------1日1日の積み重ねは、やはり案外難しい。こんな人になりたい、ああいうふうになりたい、と思いはしても、それはいつしか現実に追いやられてしまう。
終わったりしない衝動 止まったりしない鼓動
未だ信じさせててよ 未だ終わらせたくないよ
未だ終わらせたくないよ
≪19歳の唄 歌詞より抜粋≫
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そんな日々に満足しているフリをするのは簡単だ。けれど本当は誰だって、それでは駄目だと知っている。ただ現状を振り切って進むタイミングがつかめないでいるだけだ。
この曲を聴いて思い出してほしい。理想へと向かう衝動は尽きてなどいないはずだし、今日も変わらず心臓は脈を打つ。停滞する日々は、いつだって壊すことができるのだ。
TEXT:asta