Vaundyの代表曲は亡き友を追憶している?
作詞作曲にアレンジ、デザインや動画までセルフプロデュースするマルチアーティスト・Vaundy。彼が2020年5月に配信リリースした『怪獣の花唄』が、2023年3月にBillboard JAPANチャートにおけるストリーミング累計再生回数3億回を突破したことで話題となっています。
『怪獣の花唄』は1stアルバム『strobo』の収録曲として先行配信され、マルハニチロ「WILDish」シリーズの「オレらのために」編CMソングに起用された楽曲です。
2022年末に初出場を果たした『NHK紅白歌合戦』での歌唱も注目を集め、Vaundyの代表曲としてロングヒットを記録しています。
どんな情景が描かれているのか、明るいロック調の音楽に乗せて歌われる歌詞の意味を考察していきましょう。
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思い出すのは君の歌
会話よりも鮮明だ
どこに行ってしまったの
いつも探すんだよ
思い出すのは
君の歌
歌い笑う顔が鮮明だ
君に似合うんだよ
ずっと見ていたいよ
≪怪獣の花唄 歌詞より抜粋≫
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主人公は大切な「君の歌」の記憶を思い返しています。
当時どんな会話をしていたかは覚えていなくても、その頃友人が歌っていた曲や好きだった歌は意外と覚えているものではないでしょうか?
そんな風に仲の良かった友人との楽しい思い出を追憶している様子が窺えます。
主人公がその歌を思い出すのは、友人の「歌い笑う顔」が印象に残っているからのようです。
きっと幸せに満ちた表情で楽しく歌っていたのでしょう。
「ずっと見ていたいよ」と思うほど、主人公の心を惹きつけています。
しかし「どこに行ってしまったの いつも探すんだよ」というフレーズから、いま「君」は主人公のそばにいないと解釈できます。
大人になってそれぞれの道を歩み始めたために疎遠になったとも考えられますが、どちらかと言えば「君」が亡くなってしまったことを意味しているように感じました。
もう二度と聞けないからこそ、繰り返し思い出してしまうのかもしれません。
「怪獣の花唄」と「怪獣の歌」の違い
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思い出すのは
君がいた
ギター持ってる
君がいた
忘れられないんだよ
だから僕が歌うよ
でも最後に見たいのは
きっともう君の夢の中
もう一度
また聞かせてくれよ
聞きたいんだ
≪怪獣の花唄 歌詞より抜粋≫
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主人公は「君」がギターを弾きながら歌っている姿を思い出します。
どうしてもその姿が忘れられないから、今は自分が同じ歌を歌っています。
後半の歌詞を見ると、もし願いが叶うなら最後に「君の夢の中」を見たいと思っているようです。
それは「君」がどんなことを思っていたのか、どんな夢を抱いていたのかという本心を覗きたいということなのかもしれません。
歌を歌っている時の「君」は自分をさらけ出していたから、もう一度歌を聞いてその心に触れたいと切望しているように思えます。
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もっと
騒げ怪獣の歌
まだ消えない
夢の歌唱えて
君がいつも
歌う怪獣の歌
まだ消えない
口ずさんでしまうよ
≪怪獣の花唄 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞では「怪獣の歌」というフレーズが登場します。
「君がいつも歌う怪獣の歌」とあることから、主人公にとって「君」が怪獣のような存在であったと考察できるでしょう。
怪獣というと本能のままに行動する大胆なイメージがありますよね。
それで、主人公から見た「君」は無邪気で思うままに行動する強さを持っていたと解釈できそうです。
しかし、もう聞くことができなくなってしまったので、記憶の中の歌声がいつまでも消えないように「もっと騒げ」と渇望しています。
注目したいのは、歌詞に出てくるのは「怪獣の歌」なのに対しタイトルは「怪獣の花唄」となっていることです。
Vaundy自身が「怪獣の花唄」と「怪獣の歌」は別物であると明言しています。
そのことから友人が歌っていた歌を「怪獣の歌」とすると、主人公が口ずさむのが「怪獣の花唄」と考えられます。
亡くなった人に花を手向けるように、いまは亡き友人のために思い出の歌を歌っていることを示しているのではないでしょうか。
「夢の歌」と表現していることも、主人公にとってその歌が自分を勇気づける希望の歌となっていることを感じさせます。
大人になるために歌う思い出の歌
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落ちてく過去は鮮明で
見せたい未来は繊細で
すぎてく日々には鈍感な君へ
≪怪獣の花唄 歌詞より抜粋≫
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記憶に刻まれている過去はいつまでも鮮明に残っています。
しかし未来はすぐに崩れてしまいそうなほど繊細で、主人公の心はこの先どうなるのかと不安でいっぱいです。
そんな主人公が友人を「すぎてく日々には鈍感な君」と言っています。
過ぎていく日々に鈍感ということは、日々の大切さに気づいていないということでしょう。
若さゆえの未熟さを物語っていて、子どものまま止まった「君」と大人になっていく主人公とが対比されていることが分かります。
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ねぇ、僕ら
眠れない夜に手を伸ばして
眠らない夜をまた伸ばして
眠くないまだね
そんな日々でいたいのにな
懲りずに
眠れない夜に手を伸ばして
眠らない夜をまた伸ばして
眠くないまだね
そんな夜に歌う
怪獣の歌
≪怪獣の花唄 歌詞より抜粋≫
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思春期の頃はきっと誰もが悩みを抱えて「眠れない夜」を過ごしたり、反対にいつまでも遊んでいたくて夜更かしして「眠らない夜」を過ごしたりしたことがあるでしょう。
主人公は子どもから大人になっていく途中にいて、まだ「そんな日々でいたいのにな」と思っています。
それでも時間は進み続けるため、大人の仲間入りをするのはもうすぐです。
そしてそんな時に歌うのが「怪獣の歌」。
ここまで友人としてきた「君」は実際に亡くなった友人なのかもしれませんし、大人になることで決別する子どもの頃の自分自身なのかもしれません。
どちらにしても10代の自分を力づけてくれた歌は、大人になっても変わらず自分を支えてくれるはずです。
子どものまま自由に過ごし続けることはできませんが、無邪気に日々を楽しんでいた過去の記憶を大切にしながら未来に向かって進もうとする主人公の姿が胸に迫ります。
歌詞の意味を際立たせるMVも必見!
『怪獣の花唄』の歌詞には、大人になるために置き去りにしていく過去への切なくも温かい想いが綴られていました。鈴鹿央士出演のMVも歌詞の意味を深く考えさせる内容となっています。
ぜひVaundyがこの曲で言い表したかった想いを想像しながら聴いてみてください。