Perfume『FLASH』は、映画『ちはやふる』主題歌。2016年4月発売のアルバム収録。映画『ちはやふる』は、同名漫画原作の実写映画化作品。競技かるたの世界を描きます。
Perfumeは結成15周年をむかえたテクノポップユニット。競技かるたとは離れている存在のように見えますが、この主題歌は、映画の世界観を端的に表現しています。作詞作曲は中田ヤスタカ。競技かるたはとにかくスピードが速く、その火花散る戦いを「FLASH」という言葉で表現しています。
“花の色が 変われるほどの 永い時の密度に近くて
フレームは一瞬 スローモーションで 一直線 光裂くように”
「花の色が変われるほどの 永い時の密度に近くて」百人一首の世界が永く親しまれていることを歌っている歌詞。映画内でも、百人一首の和歌が千年前から詠まれていたことが示されます。
「フレームは一瞬 スローモーションで 一直線 光裂くように」永い時と対比させ一瞬で勝負が決まる様子を描いている歌詞。「光裂く」という表現でタイトルの「FLASH」と連動する言葉を前半に持ってきています。
“恋ともぜんぜん 違うエモーション ホントに それだけなの”
恋とも違うエモーション=感情、それだけである、という歌詞。エモーションはカタカナ表記で、スローモーションと韻を踏んでいます。ここの「それだけなの」のフレーズは、サビに入る直前のブリッジ。エコーがかかります。この「それだけなの」を繰り返すことで、競技かるたに集中する人が、本当にそれだけに集中している様がイメージできるようになっています。
“火花のように FLASH 光る 最高のLightning Game
鳴らした音も置き去りにして FLASH 超える
最高のLightning Speed 速い時の中で ちはやぶる”
サビの歌詞。「Lightning Game」=稲妻のように速い試合という表現で、競技かるたを表現しています。「鳴らした音も置き去りにして」という歌詞も良いですね。競技かるたは、選手がすごい音を立てて札をとりますが、その音すらも置き去りにするかのような一瞬の緊張感の中で試合が進みます。
「速い時の中で ちはやぶる」映画タイトルは『ちはやふる』ですが、この歌詞では「ちはやぶる」と発音しています。これは、元々の歌が「ちはやぶる神代もきかず龍田川からくれなゐに水くくるとは」と濁音で発音するため。漫画の原作・アニメ・映画タイトルが『ちはやふる』なのは、主人公の千早が、小学生の頃に百人一首を覚えた時に清音で覚えたから。千早がかるたに出会った瑞々しい感情を表現している独自の読み方なんですね。『FLASH』では、あえて本来の読み方「ちはやぶる」を採用し、勢いのあるさまを強く表現しています。
この曲は、PerfumeのMVではモノクロで表現されています。対して、この曲を使って作られた映画のプロモーション用映像は、カラフル。音楽と映画の世界観がマッチしています。新しさと伝統を共存させることはできるんですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)