TVアニメ「呪術廻戦 「懐玉・玉折」」OPテーマを徹底解説
2023年7月6日より放送中のTVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」のオープニング主題歌は、作曲家やベーシストとしての楽曲参加などでも活躍しているアーティスト・キタニタツヤが作詞作曲を手がけた楽曲『青のすみか』です。タイトルにも含められ歌詞とMVの映像の中で印象的に描かれている“青”について、キタニタツヤは「甘い追想の色にも、苦い後悔の色にも映るそれは、「大人」になってしまったあとの心の杖になる」とコメントしています。
『呪術廻戦「懐玉・玉折」』では五条悟と夏油傑の高専時代が描かれているということもあり、『青のすみか』は青春時代を表現している曲であることが分かります。
では青春にまつわるどんなストーリーが綴られているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
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どこまでも続くような青の季節は
四つ並ぶ眼の前を遮るものは何もない
アスファルト、蝉時雨を反射して
きみという沈黙が聞こえなくなる
≪青のすみか 歌詞より抜粋≫
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青春の真っ只中にいた当時、きっと誰もがその時間が「どこまでも続く」ように感じていたはずです。
主人公と大切な友の2人にとって障害となるものは何もなく、自分たちならどんなことでもできるとさえ思えたことでしょう。
しかし、そんな若さゆえの自信や眩しさとは対照的な「きみという沈黙が聞こえなくなる」というフレーズにとても考えさせられます。
今までは相手が黙っていても気持ちが分かったのに、今は何を考えているか分からない。
沈黙すら聞こえないほど心理的にも物理的にも2人の距離が開いていることを感じさせます。
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この日々が色褪せる
僕と違うきみの匂いを知ってしまっても
置き忘れてきた永遠の底に
≪青のすみか 歌詞より抜粋≫
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2人で過ごした日々は徐々に色褪せていってしまいます。
同じ想いでいると信じていたのに、主人公は「僕とは違うきみの匂い」があることを知ってしまいました。
それでも大切な友を信じたいと願って、真実から目を逸らそうとしているようです。
大人になって浮かぶ後悔の気持ち
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昼下がり、じめつく風の季節は
想い馳せる、まだ何者でもなかった僕らの肖像
何もかも分かち合えたはずだった
あの日から少しずつ
きみと違う僕という呪いが肥っていく
≪青のすみか 歌詞より抜粋≫
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2番では大人になった主人公が過去を振り返っている様子が読み取れます。
ある日の昼下がり、夏のじめつく風を浴びながら想い馳せるのは「まだ何者でもなかった僕らの肖像」。
つまり、何にも縛られず自分たちを最強だと信じきっていた未熟な子供の頃の2人の姿です。
彼らの間には絆があり「何もかも分かち合えたはずだった」のに、ある日を境にその関係に溝が生まれてしまったようです。
自分の中に存在する「きみ」との違いが「呪い」のように主人公を蝕み、少しずつ膨れ上がってその心を苦しめるようになってしまいました。
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きみの笑顔の奥の憂いを
見落としたこと、悔やみ尽くして
徒花と咲いて散っていくきみに
さよなら
≪青のすみか 歌詞より抜粋≫
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いつも一緒にいたあの頃とは打って変わって、今は1人で思い出を振り返るだけです。
友の笑顔の裏に隠されていた憂いの気持ちを見落としたことを悔やんでいます。
もし自分が気づいていれば今も一緒にいられたかもしれないと思い、苦悩していることが窺えます。
続く歌詞の「徒花」とは咲いても実を結ばない花のことで、転じて予想される結果を伴わないで終わることのたとえとして用いられる言葉です。
自分とは相容れない道を進んでいく友への別れの言葉が切なく響きます。
今でも澄んだ“青”が棲んでいる
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今でも青が棲んでいる
今でも青は澄んでいる
どんな祈りも言葉も
近づけるのに、届かなかった
まるで、静かな恋のような
頬を伝った夏のような色のなか
きみを呪う言葉がずっと喉の奥につかえてる
「また会えるよね」って、声にならない声
無限に膨張する銀河の星の粒のように
指の隙間を零れた
≪青のすみか 歌詞より抜粋≫
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サビ冒頭の青を用いたフレーズにも引き込まれますよね。
青が青春のこととふまえると「今でも青が棲んでいる」という表現は、今でも心の中に青春時代の記憶が残っていることを表していると考察できます。
そしてその記憶は当時と変わらず鮮明に汚れることなく輝いているという意味で「今でも青は澄んでいる」のでしょう。
大人になって自分自身や自分を取り巻く環境、2人の関係がどんなに変化しても、青春の思い出だけは変わらない姿で心の奥にあって、今の自分を支えてくれているという温かな想いが伝わってきます。
再会して物理的な距離は近づけても、自分の心にある「どんな祈りも言葉も」友の心には届かなかったことをつらく感じているのが分かるでしょう。
また、自分たちの青春は「静かな恋」や涙を流す夏に似ていると描写されています。
気持ちが燃え上がるような楽しいことばかりではなく時に悲しみに襲われることさえあったものの、確かに恋や夏のように幸せで眩しい時間だったということを示しているのかもしれません。
とはいえ「きみを呪う言葉がずっと喉の奥につかえてる」とも綴られています。
この「きみを呪う言葉」は、楽曲の中では「また会えるよね」のフレーズを指していると解釈しました。
自分から離れようとしているかつての友を縛りつけるその言葉は言いたくても言えず「声にならない声」となって胸の奥につかえていると考えると、やるせない気持ちにさせられます。
最後の歌詞にあるように、無数の銀河の星の輝きは目には見えているのにどんなに手を伸ばしても掴み取ることはできません。
同じように青春時代にはすぐそこにあった友の存在とその気持ちも、今や主人公の手から零れ落ちてなくなってしまいました。
唯一残っている過去の美しい記憶を大切にしながら自分の道を進んでいく主人公の姿に胸が締めつけられます。
誰の心にもある「青のすみか」を覗いてみよう
キタニタツヤの『青のすみか』は青春時代に築いた様々な思い出を仕舞った心を覗き見るような温かさと切なさが詰まった楽曲でした。過去を追想する歌詞と爽やかで疾走感のある音楽は、きっとリスナーそれぞれの心に秘めた青春の記憶を蘇らせるでしょう。
ぜひ五条悟と夏油傑、そして自分の想いを歌詞に重ねながらじっくり聴いてみてくださいね。