ギャップがたまらないバンド 相対性理論
相対性理論は4人組のバンド。アインシュタインの有名な理論をバンド名にしているだけあり、やや知的な感じも漂わせるグループです。ボーカルのやくしまるえつこの声とバック演奏のギャップが特徴。恋は百年戦争!?
そんな相対性理論の『(恋は)百年戦争』。恋を百年戦争でたとえている歌詞が特徴の曲です。百年戦争はヨーロッパの出来事ですが、中華風のイントロで始まる意外性も良いですね。
百年戦争とは世界史用語。ヨーロッパで実際にあった戦争の名称で、イギリスとフランスが1337年から1453年まで、およそ100年にわたって戦った戦争を指します。
現在のイギリスとフランスの国境線を決めた戦争として有名。この大戦の末期に現れた女戦士がジャンヌ・ダルク。この曲の歌詞にも出てきます。
オフィスでの熱い攻防!?
----------------冒頭で、この曲が三角関係を歌っていることが分かります。オフィス6階での攻防。
難しく見える 恋の三角形
少しだけわかるでしょ 8時過ぎて
通勤電車で向かう オフィス6階へ
すまし顔窓口の あの娘
優しく聞こえる 彼の答え
なんとなくわかるでしょ あやし過ぎて
電光石火で向かう 奴の元へ
うっとうしいこと終わらせる 今百年戦争
≪(恋は)百年戦争 歌詞より抜粋≫
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相手は窓口にいるすまし顔のあの娘。彼を「あの娘」から奪おうという歌詞の主人公の心情が分かります。
「うっとうしいこと終わらせる 今百年戦争」というすごいフレーズ。オフィス6階の三角関係の恋模様を百年戦争とわざわざ表現。それだけ戦って勝ち取る意識が強いことが分かります。
しかし、やくしまるえつこの歌声と可愛らしい曲調が情念を感じさせません。このバランスが絶妙。
“ジャンヌダルク”に込めた恋の戦い
----------------「ジャンヌダルクも知らない 知らない未来」唐突に出てくるジャンヌダルクのフレーズ。この意外性こそがこの曲のポイント。
結んだ赤い糸の先を 教えて
ジャンヌダルクも知らない 知らない 未来
盗んだ赤い糸の先を 教えて
ちょん切って みせるわ
≪(恋は)百年戦争 歌詞より抜粋≫
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このフレーズは後に「ベルセルクも知らない 知らない未来」「ゴルバチョフも知らない」と変化していきます。音の響きだけで選んでいるように見えて実は考えられている歌詞。
ジャンヌ・ダルクは劣勢だったフランスに勝利をもたらした人物。ジャンヌ・ダルクのような勇気で恋の戦いに挑むという気持ちが込められています。
強い意志を次々と感じさせる歌詞
『ベルセルク』は壮大なファンタジー漫画作品。中世ヨーロッパの世界観を基にしている架空世界の話で、大きな剣をかまえた男が主人公。「ちょん切って みせるわ」の歌詞は、この大剣もふまえています。
それほど強い力で彼とあの娘の関係を切ってやる!という意志ですね。
最後に出てくるゴルバチョフは旧ソビエト連邦の最高指導者。ソビエト連邦崩壊に関わる人物です。大国の崩壊という歴史的な出来事にかけている歌詞。「ちょん切って」崩壊させてやる!という、これまた強い意志の表れなんですね。
相対性理論だから、表現できる名曲
意外性がありつつも一貫しているフレーズ。オフィスでの三角関係を歌っていて、さらに赤い糸を切ってみせる、という略奪の歌詞であるこの曲。しかし、曲をぱっと聴いたかぎりではドロドロした感情を感じさせません。
なんなら、ファンタジックですらある。
あえてタイトルを「(恋は)百年戦争」と「恋は」を( )にすることで、「百年戦争」という日常とは離れた語のイメージを強くさせています。
そして非現実感を加速させるやくしまるえつこの歌声。このバンドだからこそできる構成なのです。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)