相対性理論は、天才物理学者アインシュタインが提唱した理論。ですが、現在この言葉をヤフーやグーグルで検索すると、検索結果にバンド名も出てきます。バンドの相対性理論は、やくしまるえつこがボーカルをつとめる日本のグループ。2016年7月には武道館公演も行います。
公開日:2016年4月21日
相対性理論は、天才物理学者アインシュタインが提唱した理論。ですが、現在この言葉をヤフーやグーグルで検索すると、検索結果にバンド名も出てきます。バンドの相対性理論は、やくしまるえつこがボーカルをつとめる日本のグループ。2016年7月には武道館公演も行います。
そんな相対性理論の『シンデレラ』は、2010年に発売のアルバム『シンクロニシティーン』の1曲目をかざった曲。童話の『シンデレラ』を基にした曲で、ファンタジックなイントロで印象的にスタートします。2ストロークのエンジン、タンデム、ボンネビルなどバイクで使われる用語が並ぶ独自の歌詞世界。
“シンデレラ わたしの後ろに乗って タンデムでお城まで
ねえねえシンデレラ わたしのマシンはボンネビル 速いのよ”
冒頭からバイク用語が並ぶ歌詞。タンデムは、オートバイや自転車の二人乗りのこと。ボンネビルは、オートバイブランドのトライアンフが製造販売しているバイクの種類を指します。童話のシンデレラは、かぼちゃの馬車で舞踏会へ向かいますが、この歌詞のシンデレラはバイクで走ります。シンデレラを急かす様子が歌われる前半の歌詞。
“それでもLADY 時間がないの あと2時間で魔法はとけるよ
夜毎のストーリーはひたすらファンシー
3コ目のコーナーで ハングオン ハングオン”
実はこの曲は、よく聴くとこのフレーズからやくしまるえつこの歌い方が微妙に変わっています。それまでは、魔法使いのLADYがシンデレラに話しかける口調だったのが、ここから「それでもLADY」とシンデレラからの目線に変化しているのです。シンデレラが、あと2時間で魔法がとけると急いでいる様子が伝わる歌詞。「3コ目のコーナーで ハングオン ハングオン」のハングオンとは、バイクでカーブを曲がる際に、バイクに乗る人が体をカーブの内側に傾ける技術のこと。カーブもうまく曲がってくれということですね。
“火を噴く 2ストロークのエンジンが 闇を切り裂いて吼えて
あなたを夢中にする 火を噴く 2ストロークのエンジンが”
印象的なサビに入ってきます。2ストロークとは、2行程で燃焼を完了させるエンジンの名称。2ストロークのエンジンが火を噴く、急ぐ状況が分かります。終盤では、この「2ストロークのエンジンが」の歌詞が何回も繰り返されて終わるこの曲。
シンデレラが舞踏会へ急ぐ気持ちをバイクの疾走感と掛け合わせている独自の歌詞。相対性理論は不思議な歌詞の曲が多いですが、これもその一つ。このバンドだからこそ生まれた曲です。
この曲はまた、はやる気持ちをシンデレラに例えている、と見ることもできます。シンデレラとは普段は労働をしていてさえない自分が、特別な力で変身することの象徴。舞踏会は労働の後のイベントの象徴として見ることができます。人がこの曲に惹かれるのは、そういった変身してイベントに向かうような衝動そのものを巧みに表現しているからなんですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)