ここスタジオジブリ作品「猫の恩返し」を彩る主題歌
2002年に公開されたスタジオジブリ作品『猫の恩返し』。
今年の5月3日の金曜ロードショーにも約2年ぶりに選ばれ、地上波を猫づくしにしました。
アニメとはいえ、あんなに沢山の猫が出てくると圧巻ですね。
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忘れていた目を閉じて
取り戻せ恋のうた
青空に隠れている
手を伸ばして もう一度
忘れないで すぐそばに
僕がいる いつの日も
星空を眺めている
一人きりの夜明けも
≪風になる 歌詞より抜粋≫
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たった一つの心
悲しみに暮れないで
君のためいきなんて
春風に変えてやる
≪風になる 歌詞より抜粋≫
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この歌詞には「僕」がいて「君」がいます。
「取り戻せ 恋のうた」と記していることから、ふたりは近い関係だということが読み取れますね。
この曲は基本「僕」目線で書かれています。
この「僕」は「君」に強い想いを寄せていて、ためいきも春風に変えてやる!と強い決断力をもっています。
つじあやの自身が作詞も手がけていますが、この言葉遣いを彼女が選んだかと思うとなんだか可愛いですね!
全体的にポップで柔らかい印象の『風になる』。でも歌詞を読み続けると・・・
『風になる』は、とてもふわっとした柔らかさの集合体のような曲ですが、歌詞を続けて見ていくと少し印象が変わります。
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陽のあたる坂道を
自転車で駆けのぼる
君と失くした想い出
乗せて行くよ
ララララ 口ずさむ
くちびるを染めて行く
君と見つけた しあわせ
花のように
≪風になる 歌詞より抜粋≫
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ここで「君と失くした思い出乗せて行くよ」という、少し切なさを感じる言葉をおいています。
それを「今はいい思い出」と言っているかのように、陽の当たる坂道を自転車で元気いっぱいに上がって行く姿を連想させる。
さらにそこに、この曲のポイントでもあるウクレレが混ざることによって、『風になる』をより多面的にしているように感じます。
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忘れていた窓 開けて
走り出せ恋のうた
青空に託している
手をかざして もう一度
忘れないよ すぐそばに
君がいる いつの日も
星空に輝いてる
涙揺れる明日も
たった一つの言葉
この胸に抱きしめて
君のため僕は今
春風に吹かれてる
≪風になる 歌詞より抜粋≫
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「忘れないよ すぐそばに君がいる いつの日も」というのは、一見「改めて君がいることを実感する」という意味と解釈できそうです。
しかし実は「君」は物理的にもう近くにはいないのではないか、とも読み取れます。
またこの歌詞は、はっきりと「僕」と「君」の両方の形容を表していません。
「どちらか一方が人ではないのでない=(例えば)猫」という想像さえもさせてくれます。
このように、私たちの想像力を無限に掻き立ててくれることも、この曲の魅力の一つです。
印象が異なるふたつのサビ
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陽のあたる坂道を
自転車で駆けのぼる
君と誓った約束
乗せて行くよ
ララララ 口ずさむ
くちびるを染めて行く
君と出会えた しあわせ
祈るように
≪風になる 歌詞より抜粋≫
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1サビとは少し異なり、2サビでは、自転車に乗せて行くのは「君と誓った約束」です。
ここの箇所が変わるだけで、ラララと口ずさむ様が前向きに感じますね。
最後は音楽も大々的に、まるで大自然に包まれるかのようになり、最初に感じた寂しさは一切なくなります。
組み合わさることの大切さ
最初にこの歌を聴いた時は「人間同士の青春の歌」なのではないかと思いました。
しかし「猫の恩返し」を観た後にじっくりとこの曲を聴くと、「人間と猫のラブソング」にもなるのではないかと感じさせられます。
また、少し遠い思い出にふれているようにも取れる歌詞から、その相手はもう近くにいないのではと考えたとたんに、最初の春風は少し冷たく、あとの春風は暖かく聴こえてきたのです。
『風になる』は「猫の恩返し」と組み合わせて一曲になる印象をうけました。
曲が映画を高め、映画が曲を変化させる。
人生の中で自分を成長させてくれる相手は、人間だけではないかもしれません。
みなさん自身を高めてくれるのは、人かもしれないし、動物かもしれないし、音楽などの形のないものかもしれない。
あげたらキリがありませんが、そういう出会いを大切にしていきたい、そう思わせてくれる一曲ですね。