NHK『みんなのうた』で大人気!
NHKの『みんなのうた』において非常に有名な曲『メトロポリタン美術館』。1984年に放送されていました。大貫妙子が歌うこの歌は、怖いトラウマソングとして記憶している人も多い曲です。
ラストが「絵の中にとじこめられた」というフレーズで終わること、そして薄暗い美術館で人形が踊る映像。これらの要素で、子供時代に恐怖を感じたという人が意外といる曲なんですね。
メトロポリタン美術館は、ニューヨークに実在する世界最大級の美術館。大貫妙子は、子供が好きなナポリタンから連想して、この曲を書きました。
元は「クローディアの秘密」
"ヴァイオリンのケース
トランペットのケース
トランク代わりにして 出発だ!”
この曲の歌詞は、E.L.カニグズバーグが執筆した小説『クローディアの秘密』が元になっています。これは、少女が家出して美術館に寝泊まりするという物語。ヴァイオリンのケースとトランペットのケースをトランクの代わりにして荷物をつめるという場面があり、この歌詞はその内容をうけていることが分かります。
独自に作られたストーリー
“大理石の 台の上で
天使の像 ささやいた
夜になると ここは冷える
君の服を 貸してくれる?”
歌詞に出てくる「天使の像」というモチーフも『クローディアの秘密』の中で登場。この小説を基に、独自に作られた歌詞のストーリー。小説よりもよりファンタジックになり、天使の像がささやき、歌詞の主人公は美術館におけるタイムトラベルを楽しみます。
多くの人に知ってもらいたい
“タイムトラベルは楽し
メトロポリタン ミュージアム
大好きな絵の中に とじこめられた”
ラストの「大好きな絵の中に とじこめられた」の歌詞は何を表現しているのでしょうか。『みんなのうた』映像内で、終盤に登場するエドガー・ドガの絵画『踊りのレッスン』。
「とじこめられた」の歌詞が出てくる箇所は、ドガの絵の中に女の子が入って絵の一部になる、という映像で表現されます。この『踊りのレッスン』は実際にメトロポリタン美術館に所蔵されている絵画。しかし『クローディアの秘密』には、絵に閉じ込められるような場面はありません。
『踊りのレッスン』は、手前にバイオリンケースが描かれ画面右下にスペースがある作品。少女がこのスペースに入れるかも、という想像力を掻き立てられる絵です。この想像力こそが、子供の時代の象徴。「大好きな絵の中に とじこめられた」というのは、大好きだった子供時代に自分の記憶を閉じ込めておくということなんですね。
実際にこの曲を覚えている人は、普段は意識していなくてもふとした瞬間に、子供時代の記憶という「絵」からこの曲を引っ張り出しています。大人になってからこの曲を聴いて映像を観ても、恐怖を感じることはまずないと思います。
子供時代の想像力が、この曲のイメージを作っているんですね。非常にユニークな歌で、大貫妙子の歌声にも癒されます。多くの人に知ってもらいたい一曲。
メトロポリタン美術館 歌詞
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)