プロセカ史上最も重たいストーリーになきそが楽曲提供
人気リズムゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」のゲーム内ユニット・25時、ナイトコードで。のために、ボカロPのなきそが書き下ろした楽曲『化けの花』。今作は2024年10月12日〜19日に開催されたゲーム内イベント「荊棘の道は何処へ」のストーリーに合わせた内容となっています。
このストーリーでは、これまである秘密をずっと隠してきた暁山瑞希を主人公に物語が進んでいきます。
プロセカ史上最も重たいストーリーともいわれる心を抉るような内容で、『化けの花』も曲調と歌詞に不穏な雰囲気が漂っています。
どのような内容なのか、イベントストーリーと絡めながら歌詞の意味を考察していきましょう。
※ネタバレを強く含む内容のため、ご注意ください。
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なにその目 やっぱその目
はじめましてじゃないね
なにその目 もうやめて
可愛いだけ なのに罪の味
≪化けの花 歌詞より抜粋≫
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冒頭の歌詞では、自分に向けられる「目」に対して反応しています。
これは思わぬ形で瑞希の秘密を知ってしまった東雲絵名が、自分を見たときの目のことを指しているのでしょう。
自分が秘密を告白するのを待ってくれていた絵名に自ら打ち明けようとしていた矢先の出来事で、瑞希自身もショックを受けています。
打ち明けたときの反応を想像して恐怖を抱きながらも、前に進むためにメンバーの中でもまず絵名に知って欲しかった瑞希でしたが、自分の口から明かす機会さえ奪われてしまいました。
そして絵名から向けられた目に強い感情を露わにしています。
「やっぱその目 はじめましてじゃないね」というフレーズから、これまで自分の秘密を知った人たちがしたのと似た反応を絵名の目に垣間見たことが分かります。
瑞希の真実に少しも気づいていなかった絵名にとって、当然驚きや戸惑いがありました。
そこに軽蔑や侮辱の気持ちはなかったものの、周囲の反応に傷ついてきた瑞希はそこに一瞬の拒絶を感じたようです。
さらに、絵名が待っていると言ってくれた思い出の場所でその悲劇が起こったことも、瑞希の感情を大きく揺さぶる原因となったのでしょう。
瑞希の秘密とは男性であるということ。
ただ純粋に可愛いものが好きで、それが一般的に女の子が好むものだっただけなのに、自分の存在が「罪」かのように見られていることに深く傷つき、トラウマを抱えています。
“化けの花”に込められた意味とは
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ずれる ずれる 崩れる
ずれる 気が触れる
秘密 ひとつ で崩れる
壊れる、ごめん
≪化けの花 歌詞より抜粋≫
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互いの思いが「ずれる」とき、これまで築いてきた関係が一気に「崩れる」のを感じます。
そして、パニックになった瑞希は「気が触れる」ように正気でいられなくなってしまいました。
せっかく見つけた自分の居場所が「秘密 ひとつ で崩れる」のが分かります。
自分のせいでニーゴを壊してしまう罪悪感や、絶望により自分自身が壊れるのを感じたためにこぼされる「ごめん」の言葉が切ないです。
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見ないで 理解出来ないでしょう?
まるで咲いてしまった 化けの花
なにも言えない かき消せない
どんなに醜く映る化粧
見ないで 理解出来ないでしょう?
まるで咲いてしまった 化けの花
つぼみには もう 戻れない
≪化けの花 歌詞より抜粋≫
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自分を見る眼差しに恐怖し、「見ないで 理解出来ないでしょう?」と訴えかけます。
どうせこちらのことなんて理解できないくせに見ないでと、拒絶反応を示しているようです。
またこの言葉は視点を変えると、絵名側が瑞希を理解したいから見るんだと言っているようにも思えます。
いつも瑞希の考えをきちんと理解しようとしてきた絵名らしい考え方ではないでしょうか。
同じ言葉に思えても発した人の数だけ異なる意味があるように、人の個性も1つの視点からでは理解できないものです。
しかし自分の考えに固執してしまう人が多いからこそ、瑞希のような個性を持つ人が異端と見られてしまうのでしょう。
タイトルでもある「化けの花」とは花に化けているという意味で、かわいいものを好む瑞希が自分を自虐的に表現した言葉と解釈できますね。
真実を知られてしまったら、それまで当たり前だった化粧も醜く見られてしまうだろうと思うと胸が苦しくなります。
しかしこれは紛れもない真実だからどんな反応をされても「なにも言えない かき消せない」とも感じます。
花は、咲いてしまったら二度とつぼみには戻れません。
花に化け続けた自分を今更変えられないことや、自分自身を受け入れてもらえないことへのもどかしさが感じられます。
理解されないならもういいや
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なにその目 やっぱその目
だったら消えて みーんないなくなれ
いなくなれ×3
そばに居て
≪化けの花 歌詞より抜粋≫
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瑞希はメンバーたちの優しさを理解していて、絵名の眼差しは単純に驚きによるものだとも分かっています。
おそらく他のメンバーに打ち明けても、何事もなかったかのようにいつも通り接してくれるでしょう。
しかしそれは瑞希にとって、自分のせいで彼女たちの間に何も変わらないと“思わせてくれる”優しさが生まれることへの苦しさにつながってしまうようです。
期待を裏切られてきた過去が、素直に優しさを受け止められなくさせています。
ニーゴが大好きだからこそ、確実にこれまでの関係とは変わってしまうことに複雑な思いを抱えている瑞希。
「化けの花」は希望を見出させてくれたメンバーとの絆のことでもあるのかもしれません。
もっと早く話しておくべきだったと後悔しても、出会った頃からやり直すことはできないからです。
しかし「みーんないなくなれ」と言いながらも「そばに居て」と本音がこぼれ出すのは、それほど瑞希にとってニーゴの存在が大きくなっている証拠といえますね。
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未来で 理解されないのなら
此処でさっさと消えて 化けの花
生まれた罰を 終わらすように
呼吸を止めて
あー 「もういいや」
≪化けの花 歌詞より抜粋≫
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この先も大切に思う誰かに理解されないなら、自分自身が消えてしまうべきなのではないかとさえ考えているようです。
そうすれば自分という存在が「生まれた罰を終わらす」ことができる。
悩むことにも恐れることにも疲れた瑞希は、最後に「もういいや」と諦めの言葉を口にします。
瑞希の感情があふれる衝撃作
25時、ナイトコードで。が歌う『化けの花』は、秘密を知られた瑞希の葛藤や恐怖、期待や諦めなどの複雑な感情が伝わってくる楽曲です。それぞれの歌声や歌い方、MVで印象的に演出されている目の描写などからも瑞希の感じた気持ちが垣間見えるでしょう。
一時的にセカイに閉じこもって現実世界に戻れなくなってしまった瑞希の未来はどうなるのか、今後のストーリーからも目が離せません。