五月病。この言葉通りに5月は特に悩みが多くなりがちな季節だ。しかし現代において、憂鬱の種というのはもはや年中尽きないものとなっている。
そんな憂鬱な毎日を吹き飛ばすべく、音楽に癒しを求める。様々な音楽ジャンルの中で特に応援歌は直球に心を鼓舞してくれるのが魅力的だ。
【特集】国民的アイドルグループ・嵐の魅力を追求&解説!
応援歌と言えばアイドルのそれも心強い存在だろう。中でも特にジャニーズの応援歌は常に存在として身近にあり、男女関係なく共感しやすいものが多い。
今回はその中でも嵐の楽曲から、『Your Eyes』という曲を紹介したい。
これは相葉雅紀主演のドラマ「三毛猫ホームズの推理」の主題歌で、彼の明るいパブリックイメージとはあまり結びつかない、メロディーのみで聴けば少し寂しげな印象のバラードだ。
実際、MVの中でも彼があの普段の笑顔を見せて歌うシーンはない。
しかし歌詞を見てみると、「明るさ」で人を元気にする彼のもう1つの側面である「優しさ」をフィーチャーしているのがわかる。
歌詞からにじみ出る「優しさ」
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この地球の上 自分ひとりが 誰よりも孤独だって
彷徨う君に 永遠を感じてるんだ だから 僕は君のそばに
あの日の傷が今も癒えず 君は立ち止まったまま Oh
何も出来ず空を見上げた 滲んだ景色が零れてく
≪Your Eyes 歌詞より抜粋≫
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相葉演じるドラマの主人公は、人を疑うのが苦手で相手を信じたいという強い信念を持つ、良くも悪くも優しい人物である。
そのため刑事としては不向きであったが、周囲の人物や「喋る三毛猫」と出会うことで、数々の事件を解決してゆく。“立ち止まったまま”の“君のそばに”いる“僕”は、刑事として自信を持つことができない主人公を見守る三毛猫の視点だ。
そして“空を見上げた”主人公。“何も出来ず”立ち止まっている。景色が滲んでしまうのは、“あの日の傷”が癒えていないから。
この「Your Eyes」という曲は、主人公と猫の視点が入れ替わりながら描かれているのだ。
君の「優しさ」のおかげ
----------------“君の優しさ”とは、傍にいる三毛猫のことだろう。だが、猫は何をするでもなくただ傍にいるだけだ。
君の優しさが聴こえてくるよ その瞳を信じているから
泪ひと粒 その手のひらに落ちて 洗い流してゆく 新しい夜明け
≪Your Eyes 歌詞より抜粋≫
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ドラマの猫は主人公にアドバイスをするべく人語を介することもあるが、実際には原作を含め、猫はそれらしき意味ありげな素振りをするだけで、頑張れとも言わないし、彼を責め立てることもない。
また“優しさ”という言葉に対して、普通“聴こえてくる”とは形容しない。だが、作品の主人公と猫を思えば、“優しさが聴こえてくる”というのは“そこにいることを感じる”という比喩に感じ取れる。猫の鳴き声が聴こえたなら、傍にいることが分かるから。
泪を流すのも夜明けを感じるのも本人だが、泪を流して洗い流すことができたのは、他でもない“君の優しさ”のおかげだ。
見逃せない表現
この曲において「なみだ」という字がわざわざ「泪」になっているのも、「目からこぼれる水 」という意味を強調して表すためだろう。この曲のさりげない表現力がこういった部分に際立ってみえる。----------------
忘れない瞳で交わした言葉 そう痛みも届いているから
何も持たずに 生まれてきたはずさ 朝日が降り注ぐ 始まりのLight
≪Your Eyes 歌詞より抜粋≫
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ドラマ終盤、猫は主人公のもとを離れてどこかへ行ってしまう。今まで頼ってきた存在が居なくなってしまうことは辛いことだが、それを乗り越えていかねばならないと同時に悟る。
言葉を“瞳で交わした”というのが言語の通じ合わない者同士のやりとりを思わせ、“痛みも届いている”は“優しさが聴こえてくる”の対比を感じさせる。
このフレーズは、長らく癒えなかった主人公の痛みを感じ取ってなお、“何も持たずに生まれてきたはず”と、自分がいなくても試練を乗り越えてみせろという猫の、まるで親の愛のような深い優しさを描いているのだ。
“始まりのLight”
曲の最後のこのフレーズは相葉のソロパートで、穏やかな優しさで包み込むような柔らかな彼の声と、ゆったりとした夜明けを思わせるメロディーで曲は締め括られている。降り注ぐ朝日やそこから始まる明日が、希望の光に溢れるものだと思わせてくれるようなアウトロである。
落ち込んでいる時や、理由もわからず不安に駆られる時、すぐに「頑張れ!」などと言われても、それを素直に受け止められないこともあるだろう。精神的に疲れている時、強すぎる言霊にあてられてしまうということも少なくない。
何も言わずただ傍に居るのが優しさということもある。『Your Eyes』は、猫のようにそっと寄り添いながら、そんなメッセージを届けてくれる。
もしも元気な応援歌が聴けないくらい疲れた時は、この曲を聴いてみてはいかがだろうか。
きっと、相葉雅紀の歌声があなたを優しく包んで癒してくれるはずだ。
TEXT:祈焔( https://twitter.com/kien_inori )
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