Nコン中学の部に最強タッグ降臨

第92回NHK全国学校音楽コンクール(Nコン)中学校の部の課題曲に選ばれたのが、BE:FIRSTの『空』です。
2025年度の小・中・高校の共通テーマが「空」となっており、そのテーマと同じタイトルを冠したこの楽曲は、UTA・LOAR・SKY-HIの3人によって作曲され、作詞はSKY-HIが担当しています。
SKY-HIは、かつて男女混合ダンス&ボーカルグループAAAのメンバーとして活動し、ラップのスキルや独自の音楽スタイルで高い評価を得てきました。
現在は音楽レーベル「BMSG」のCEOとして、BE:FIRSTやMAZZELなどのアーティストをプロデュースし、日本の音楽シーンに大きな影響を与えています。
そのBMSGに所属するBE:FIRSTが、本楽曲の歌唱を担当します。
SOTA、SHUNTO、MANATO、RYUHEI、JUNON、RYOKI、LEOの7人で構成されるこのグループは、歌・ダンス・ラップに加え、作詞・作曲や振付にも関わるなど、多才な表現力を持ったアーティスト集団です。
この最強タッグが、Nコンの舞台に登場します。
SKY-HIは、どんな想いを『空』に託し、BE:FIRSTの歌声とともに、中学生たちに届けようとしたのでしょうか。
そのメッセージを、歌詞から紐解いていきます。
雲の向こうの笑顔を探し

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大丈夫だって言って欲しくて
大丈夫じゃない自分を隠して
太陽みたいに笑えた日々は
雲の向こうでどんな顔かな
君が君で在れるように
僕は何ができるのかな
≪空 歌詞より抜粋≫
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冒頭より「大丈夫」と言われたい気持ちと、本当は「大丈夫じゃない自分」を隠してしまう葛藤から始まります。
人は時に強がってしまうものですが、その奥には今、本当の自分をさらけ出すことへの不安や誰にも見せられない孤独が潜んでいるように感じられます。
「太陽みたいに笑えた日々」、それは、かつての幸せで明るい日常を懐かしむ言葉。
今の自分とはかけ離れた場所にあることを噛みしめているかのよう。
「雲の向こうでどんな顔かな」という一節からは、自分とは違う場所で他の人たちはどのような表情をしているのか、自分の心の中で問いかけているような切なさが滲み出ています。
「君が君で在れるように 僕は何ができるのかな」。
この一行には、迷いながらも誰かのために何かをしたいという強い想いが込められているかのようです。
「大丈夫」と言いながらも、本当は「大丈夫じゃない」自分に気づいている。
そして、これでいいのだろうか?と自問自答しながら、それでも誰かのために立ち上がろうとする姿勢、その決意が、この歌詞に力強さを与えているように感じられます。
雲の向こう、光の在り方

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マイペースな雲に見下され
まぁいいか 笑いたきゃ笑え
最低な今日だって
流れて消えて行くだけ
≪空 歌詞より抜粋≫
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ここでの「雲」は、世間や風潮の象徴とも捉えられます。
まるで上から見下ろされているような感覚を抱きつつも、「まあいいか」と受け流すその姿勢は、強さであると同時に、どこか諦めのようにも感じられます。
しかしその中には、誰かに評価されることにとらわれず、自分自身の意志をもって軽やかに生きることの大切さが示唆されているようです。
もちろんどれだけつらい日々が続いても、それが永遠に続くことはありません。
やがて時間とともに、感情も景色も少しずつ変化していきます。
「流れて消えて行くだけ」、そんな前向きな絶望の受け入れ方のひとつを、静かに教えてくれているようです。
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嵐の前 台風の目
波乱と静けさは背中合わせ
もしも遠い所で一人ぼっちになっても
宇宙の向こうから見てみれば隣同士
We are under the same sky
≪空 歌詞より抜粋≫
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「嵐の前 台風の目 波乱と静けさ」には、人生の不安定さが象徴的に表れています。
「嵐の前の静けさ」や「台風の目」といった、一見平穏に見える瞬間にも激しい変化の気配が潜んでいて、「波乱と静けさ」が常に隣り合わせであることを感じさせてくれます。
混沌の中にも穏やかさはあり、穏やかな時にもまた次の波が訪れるというバランスがまるで人生のようですね。
そうした不安定な世界で、時には孤独を感じることもあるでしょう。
しかし、少し視点を変えてみれば、人は決して一人きりではないと気づけるはずです。
地球の上で見れば遠く離れている人々も、「宇宙の向こうから見れば隣同士」。
本当は、どこにいても、みんな同じ空の下で生きている。
「We are under the same sky.」
それは、場所や状況が違っていても、誰もがつながっているという希望を与えてくれる言葉です。
ここでは、私たちが日常の中で抱える感情を優しくすくい上げてくれます。
誰かに馬鹿にされたり、心ない言葉に傷ついたり、ふとした瞬間に孤独を感じることは、決して特別なことではなく、生きていく中で避けられない出来事なのかもしれません。
けれども、井の中の蛙にならず大海を知ればいい、狭い世界にとどまらず、視野を広げることができたなら、その瞬間、私たちの心には、確かに希望の光が差し込むのではないでしょうか。
変わらない空はないのだから

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雨の日だって
誰かにとって
寄り添う涙に変わるんだろう
間違えたっていい 不安定なままでいい
≪空 歌詞より抜粋≫
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サビ全体には、移り変わる天候を人生と重ね合わせながら、静かに、けれど確かに希望を伝えるメッセージが込められているようです。
雨の日も晴れの日も、それぞれに意味があり、どちらの時間も大切な一部として受け入れながら前へ進むことの尊さが語られているのではないでしょうか。
「雨」は、悲しみや苦しみの象徴であると同時に、誰かの心に寄り添う存在にもなり得ます。
涙がただ流れていくだけでなく、その涙が誰かの気持ちと共鳴し、寄り添うことで、そこに意味が生まれる。
それは、つらい時間さえも、やがて価値のあるものへと変わる可能性を秘めているということです。
人生の中で、「間違い」や「不安定」さを経験することは避けられません。
けれど、それは決して悪いことではなく、むしろ私たちが受け入れ、向き合っていくべきものとして描かれているように感じます。
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いつか いつか太陽も顔を出すから
晴れの日だって
あなたを待って
雲の向こうで笑ってるんだろう
変わらない空はない 大丈夫
ずっと 泣いて笑ってあと一歩進もう
≪空 歌詞より抜粋≫
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そして、やがて「太陽が顔を出す」のです。
どれだけ長く暗い時間が続いても、必ず光が差す瞬間が訪れる。
そこには、いつかという希望が込められています。
もちろん「晴れの日」は単に良い日というだけではありません。
障害物がない状態でも待ち続けるのです。
それはまるで直接、関与していないからこその感情です。
だからこそ、「雲の向こうで笑ってるんだろう」と想像するしか方法がないのですから。
それでもなお、そこには温かさがあり、それはきっと、苦しみや迷いを乗り越えようとするからこそ感じられる、優しい光なのです。
空が刻一刻と姿を変えていくように、人生もまた常に変化し続けています。
「変わらない空はない」。
雨も、晴れも、曇りも、嵐もある。
そのすべての空の下で、私たちは時に泣き、時に笑いながら生きています。
大切なのは、どんなことがあっても「あと一歩進もう」とする気持ち。
完全に乗り越えようとしなくてもいい。
少しずつでも、自分のペースで前に進むこと。
その一歩一歩が、私たちの人生を形づくり、やがて希望へとつながっていくのではないでしょうか。
「空」に託したエール。BE:FIRSTが届ける「あと一歩」の勇気
BE:FIRST『空』は、思春期の揺れる感情を「空」に重ねて描いた応援ソング。つらい日も晴れの日も、全部が人生の一部。
弱さも間違いも受け入れながら、「あと一歩」踏み出すことの大切さと、誰もがつながっているという希望が込められた、優しいメッセージが詰まっています。