「綾鷹」新CMソングで表現する愛の形
2025年5月2日配信リリースの宇多田ヒカルの『Mine or Yours』は、宇多田ヒカルが前年からブランドアンバサダーを務める緑茶ブランド「綾鷹」の新CMソングとして起用されています。リリース日にはYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に初登場し、圧巻の歌唱を披露して大きな注目を集めました。
軽やかかつメロウな曲調が何気ない日常を切り取った歌詞とマッチし、優しい歌声とともに心に沁み込みます。
どのような内容となっているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
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昨日の僕は
僕が思う僕とはかけ離れていた
素直になれず君を泣かせるやつには
失望している
自分を大事にできるようになるまで
なんにも守れない
≪Mine or Yours 歌詞より抜粋≫
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主人公は昨日の自分を振り返っています。
「僕が思う僕とはかけ離れていた」とあるため、理想とするような行動が取れなかったようです。
続く部分の「素直になれず君を泣かせるやつ」とは自分自身のこと。
つまり、いつも素直でいて愛する人を笑顔にしてあげたいのにそうできなかった自分に「失望している」ことが分かりますね。
一番身近で全てを知っている自分を大事にできなければ、人を大事にすることもできません。
愛する人を誠実に守るためには、まずは自分自身を見つめて大切にする必要があることに気づいたことが読み取れます。
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なにが食べたい? 店探すよ
元気出るまでダラダラしよう
なにか飲むかい? お湯沸かすよ
君はコーヒー 僕は緑茶、いつもの
≪Mine or Yours 歌詞より抜粋≫
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この部分では、元気のない恋人を気遣う日常の一コマが描かれています。
「なにが食べたい?」「なにか飲むかい?」と優しく尋ねる様子に、温かい関係性が見えてきますね。
「君はコーヒー 僕は緑茶、いつもの」というフレーズは、2人の違いを表していると解釈できます。
好みは違いますが、その違いを受け入れて尊重することが愛の本質といえるでしょう。
選択は人生そのもの

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どの道を選ぼうと
選ばなかった道を失う寂しさとセット
令和何年になったらこの国で
夫婦別姓OKされるんだろう
冷めたら温め直せばいい
不安材料も味付け次第
≪Mine or Yours 歌詞より抜粋≫
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人生は選択の連続で、常によりよい決定をしたいと思うものです。
しかし、何かを選ぶということは別の選択肢を捨てるということ。
結果が良いときも悪いときも、その裏には「選ばなかった道を失う寂しさ」が付きまといます。
だから後になって、違う選択をしていたらどうなっていただろうかと考えてしまいます。
次に出てくる「夫婦別姓」のフレーズは、選択肢を狭める制度への疑問だと解釈できるでしょう。
夫婦が同じ姓を名乗ることが法律で義務づけられている現実に、選択する機会を奪われていると感じるようです。
選択肢が増えれば「選ばなかった道」も増えますが、愛する人との関係性や生き方を自ら選択できる自由があれば、人生が変わるようにも思えます。
何が正解とはいえない問題からこそ、様々な疑問やジレンマが生まれるのでしょう。
とはいえ、ここでは「冷めたら温め直せばいい 不安材料も味付け次第」と続いています。
温かい料理が冷めると元の状態とは異なりますが、その料理の美味しさや作り手の想いは変わりませんし、温め直せばまた美味しく食べられます。
さらに、苦手な食材を使っていても味付け次第で美味しく感じられることもあるものです。
人間関係も同じように、たとえ失敗して関係がぎくしゃくしても、それまで育んできた愛情は変わらずにあり、互いに持つ弱さが絆を強める要素になることもあります。
きっと大切なのは物事をどのように見るか、そしてどのように行動するかです。
いつも最善の選択ができるわけではありませんが、繰り返される苦悩と寂しさを受け止めながら自分と愛する人の最善を願って選択を続けるのが、生きるということなのではないでしょうか。
本当の幸せとは?

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ずっと一緒にいたいけれど
毎日一緒はしんどいかも
なにかいるかい? 買って行くよ
君はコーヒー 僕は緑茶、いつもの
≪Mine or Yours 歌詞より抜粋≫
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「ずっと一緒にいたい」と思うのは本当です。
しかし「毎日一緒はしんどいかも」と感じるのも本音。
誰かと生きることは楽しいことばかりではないので、どれほど愛していても複雑な思いを抱いてしまいます。
それでも「なにかいるかい? 買って行くよ」といえるのは、相手への愛があるから。
結局いつものものを選ぶと分かっていても、今の気持ちを尋ねる思いやりが絆を生むのでしょう。
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I love making love to you
掛け違えたボタン
一つ一つ外す
恐る恐る
≪Mine or Yours 歌詞より抜粋≫
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「I love making love to you (君と愛し合うのが大好き)」というフレーズは、単なる行為ではなく愛する人と一緒に時間を過ごし、愛を育む過程全ての尊さを示しているように思えます。
その日々の中では、ボタンを掛け違えるように想いがすれ違う出来事が何度も起こるかもしれません。
それらを「一つ一つ外す 恐る恐る」とあるように、主人公は正すことに怖さを感じています。
これは恐らく、自分の認識の変化が求められるからでしょう。
人と共存するには、時に自分の間違いを認めて、正したり人のために自分の選択を変えたりすることが必要になります。
自分が築いてきたものを壊すのは怖いことですが、勇気を持って乗り越えた先で愛は強まっていくはずです。
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自由に慣れれば慣れるほど
不自由だって、どうして誰も
僕らに教えてくれなかったの
君はコーヒー 僕は緑茶、いつもの
≪Mine or Yours 歌詞より抜粋≫
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人は自由であれば幸せだと考えて、自由を欲します。
しかし実際に自由を得ても、その状況に慣れてしまうと、反対に不自由に思えてきます。
自由さと不自由さは紙一重で、どちらが幸せか不幸せかと一概にはいえないでしょう。
誰もが迷いながら生きているため、誰も正解の生き方を教えてはくれません。
だから自分でどう生きるかを選択していくしかないのです。
タイトルの「Mine or Yours」は、訳すと「僕のものか君のものか」となります。
しかし歌詞を見ると、これはどちらのものかを定義する言葉ではなく、人生の選択は個々にすべきものであると同時に、共に生きる2人のものでもあることを表していると解釈できます。
「君はコーヒー」で「僕は緑茶」を選ぶように自分自身で選択しつつ、肩を寄せ合い互いの決定を尊重することが本当の幸せに繋がるのかもしれませんね。
日常に色を添える温かな愛の歌!
宇多田ヒカルの『Mine or Yours』は、何気ない日常にスポットを当てて人間関係の本質を見せてくれる楽曲です。主人公のふとした疑問や小さな痛みを通し、自分の生き方や愛し方について考えさせられるでしょう。
深いメッセージが温かな歌声と共に、いつもと変わらないと思える毎日にそっと色を添えてくれるはずです。