「なきそ」とは

『なきそ』は作詞・作曲家/ボカロP (ボーカロイドプロデューサー)です。
幼少期からエレクトーンに親しみ、ピアノ、ボーカロイドと音楽環境を広げました。
ボーカロイドとは、ヤマハが開発した音声合成技術、及びその応用製品の総称で、通称ボカロと呼ばれます。
メロディーと歌詞を入力し、サンプリングした人間の声を元にした歌声を合成できるソフトウェアです。
ヤマハとライセンス契約をすることで、さまざまな会社が歌声合成ソフトを提供できます。
その代表的なものが『初音ミク』です。
2001年生まれのなきそは、小学生時代からボカロPを目指し、中学1年生の頃に初音ミクを入手。
本記事で考察する『いますぐ輪廻』も初音ミクを使用した楽曲です。
高校1年生からボカロPとして活動を開始し、TikTok、YouTubeで人気になったなきそ。
話題の『いますぐ輪廻』の歌詞を考察していきます。
輪廻の意味
『いますぐ輪廻』は、生まれ変わってまた出会いたいという輪廻転生(りんねてんせい)をテーマにした楽曲です。
狂気の愛と執着心に溢れた歌詞が特徴。
輪廻及び輪廻転生は、サンスクリット語のサンサーラに由来する言葉です。
命あるものは何度も転生することを指します。
必ず人間が人間に生まれ変わるわけではなく、動物などすべての生き物へと生まれ変わることを意味します。
狂気の愛と浄化

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いますぐ輪廻 今回も結ばれないね
嘘ついたら針千本 誓って
ぜったい来世でまた会お?
いますぐ輪廻 今回も結ばれないね
全て捨てて ぽいっ
≪いますぐ輪廻 歌詞より抜粋≫
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「今回も結ばれないね」という歌詞は、まさに輪廻転生そのもの。
何度も生まれ変わっては「今回も」結ばれなかった。
「絶対また来世で会おうね。嘘ついたら針千本だよ」と迫ります。
針千本は、約束を交わすための「指切りげんまん」に登場する歌詞。
「噓をついたら針千本飲ます」=「罰を与える」という意味です。
今回も結ばれないから、全てぽいっと捨てるさまは、まるでゲームをリセットしリスタートするかのようです。
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さらば 生まれ変わる
あまりに人生が 憂い
君の指輪も白紙になって!
ぜんぶ消えちゃって、いいよ
どうせ生まれ変わって
巡って・出会って
宇宙が爆ぜてしまうまで
≪いますぐ輪廻 歌詞より抜粋≫
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交わした指輪も白紙にしていい。
消えてもう一度始まってもいい。また生まれ変わって出会うのだから。
宇宙が爆発するまで繰り返す、狂気ともいえる愛。
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何回も大好きになって
何回も大好きになって
毎回繰り返す身勝手
何回も大好きになって
ごめんね
≪いますぐ輪廻 歌詞より抜粋≫
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きっと自分でもわかっている。
相手への執着心と愛の狂気。だから身勝手な自分をごめんね、と謝る。
でも止められない、それほど大好き。
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『メタモルフォーゼ』
≪いますぐ輪廻 歌詞より抜粋≫
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「メタモルフォーゼ」は、変身・転身の意味。
まるでおまじないの言葉のように使って、輪廻へとつなげます。
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だから 生まれ変われ
間違った人生は 憂い
君の隣は私になって?
運命よ、跪け
≪いますぐ輪廻 歌詞より抜粋≫
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今世で結ばれないのなら、生まれ変わればいい。
自分が正しいのだ、間違った人生なら捨ててリセットすればいい。
本来、運命なんてものはどうなるのかわからないもの。
その運命に対して「私に跪け」とは、なんというエゴ。
歪んだ執着心ではないでしょうか。
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いますぐしんで!
ファンファーレが鳴って
大正解、おめでとう!
ようやく君は救われる
来世でまた会おう
いますぐ輪廻 ちょっと苦しんで
ツインレイなんだよ?
早く…
≪いますぐ輪廻 歌詞より抜粋≫
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死によって君は救われる。
ちょっと苦しいかもしれないけれど「生まれ変わるために我慢してね」という身勝手さ。
そして聞きなれない「ツインレイ」という言葉。
ツインレイとは、この世にたった一人しかいない運命の相手という意味。
スピリチュアル用語として使われる言葉です。
主人公は、相手をツインレイとして決して手離しません。
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ねぇ、私と一つになろう
さぁ魂の浄化 死への調和
どうか光になって
全て捨てて ぽいっ
≪いますぐ輪廻 歌詞より抜粋≫
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死をもって浄化し、また生まれ変わろうとします。
もしかすると、もう生まれ変わることは望んでいないかもしれない。
死によって調和し、2人は1つになったのだから。
インドの思想では、繰り返す輪廻を苦として、輪廻からの解放を最高の理想とします。
インドから始まった仏教でも、輪廻からの脱却を目的とします。
『いますぐ輪廻』の主人公は、死をゴールとし、2度と生まれ変わらないことでこの愛を浄化させたのかも知れません。
愛とは喜びと共に苦しみも生む。
主人公は想いが強すぎて、その愛が狂気になってしまった。
この世で結ばれないなら、来世で結ばれようと何度もリセットし、リスタートします。
愛の執着によって生まれる無限の苦しみ。はたして、それは幸せなことなのでしょうか。
「本当の愛とは」を考えさせられる、とても奥深い楽曲です。
「いますぐ輪廻」が問いかける「本当の愛」

なきその『いますぐ輪廻』は、ポップなサウンドのボカロ曲でありながら、描かれる歌詞の世界は愛の苦しみを描いた楽曲です。
輪廻をテーマに、本当の愛とは何かを問いかける奥深い歌詞となっています。
輪廻の意味を掘り下げて聴いてみると、より深く知ることができるでしょう。