「いちについて」はTBSドラマ「19番目のカルテ」主題歌
あいみょんの『いちについて』は、2025年7月23日に配信リリースされたデジタルシングル。TBS系日曜劇場「19番目のカルテ」の主題歌として書き下ろされた楽曲です。
松本潤が初の医師役に挑戦する本ドラマは、病気ではなく人を診る19番目の新領域「総合診療科」が舞台。
問診を通して患者の心に寄り添い、生き方にも手を差し伸べていくヒューマンストーリーです。
『いちについて』は、生きづらさを抱えながらも自分を変えよう、生きていこうという思い、生きることの尊さが歌詞に込められています。
この記事では『いちについて』の歌詞の意味を考察します。
不平等な人生のスタートライン

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簡単に幸せになれる方法を探してる
そんな検索ばかり馬鹿馬鹿しい?
いいよ 笑って
≪いちについて 歌詞より抜粋≫
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生きづらさを抱え、幸せを求める人の心情が描かれています。
幸せになりたい、という漠然とした願い。
どうすれば簡単に幸せになれるのだろう?
ネットで検索してはあふれる情報の波に苦戦する。
幸せになる方法なんて、どこにもないかもしれないのに。
そんな気持ちは馬鹿馬鹿しい?と思いながらも「いいよ笑って」と、受け入れる姿勢。
ネット上にあふれる他人の幸せや、さまざま情報に振り回される現代人。
誰もが幸せを求める気持ちを肯定し、共感を呼ぶ歌詞だと感じます。
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透明な瞳で世間を見られたら
どこまでも楽になれるのだろうか
≪いちについて 歌詞より抜粋≫
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「透明な瞳」には、自分自身が純粋な心ではないということ、そして、純粋なものへの憧れの2つの意味が共存していると感じます。
幸せだから純粋なのか、純粋だから幸せなのか・・・。
「楽になれるのだろうか」という言葉に戸惑いや葛藤が感じられます。

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落とされた世界が少し泥濘んでいた
はじめからつまづいた
ピストルの音を誰かが遮る
≪いちについて 歌詞より抜粋≫
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人は平等ではないという意味を感じる歌詞です。
もちろん、人の命は等しく尊いことに間違いはありません。
この部分の歌詞で描かれるのは、人生においての不平等さです。
人は産まれてくる場所を選べません。
家庭環境や経済的格差など、選べない状況下での不平等さは、赤ちゃんや幼い子どもにはどうすることもできません。
スタートラインに立ったつもりでいたけれど、ピストルの音が遮られ最初からつまづいた。
決してその人個人のせいにすることのできない、社会的格差による人生の不平等さがが描かれた歌詞だと思います。
しかし、不利なスタートであっても逆転することはできるのです。
描かれる心の葛藤

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判断が鈍くなる 善の端くれで指を切る
気持ちの悪い笑顔が心舐め回す
もう 砕いて
≪いちについて 歌詞より抜粋≫
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社会生活の中で、他者とのかかわりの難しさを描いているのではないでしょうか。
善意が裏目に出て傷ついてしまう。作り笑顔が気持ち悪い。
それはきっと自分も他者も同じ。
善人ぶった振る舞いや、表面的な人間関係に疲れてしまう。
「もう砕いて」は「もうどうでもいい」という心の叫びであり、そんな自分を壊したい、というどちらの意味にもとれるのではないでしょうか。
自分を抑えて社会生活を送ることの難しさ、心の葛藤が描かれていると感じます。
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どこにでもあるような
お決まりの不幸で
その先で腐るかは自分次第なのか
残された時間が焦りを誘い戸惑う
≪いちについて 歌詞より抜粋≫
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今、どんな状況にあっても、その先の人生は自分次第で決まる。
わかっていても「自分次第なのか」と自問自答することに、心の葛藤を感じます。
そして焦り戸惑う。誰もが経験するであろう失敗や挫折。
そこから立ち上がることは簡単ではないかもしれない。
でも、立ち上がることでその先の道が開けていく。
聴く人の共感を呼び、寄り添う歌詞だと感じます。
自由の意味と代償

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行きたかった遠くまで
汽笛の音さえ誰かが遮る
運命があまりに 静かに蝕んでくる
なぜ自由は優しいふりをして
落とし穴を作るの
≪いちについて 歌詞より抜粋≫
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汽笛の音は出発の合図。
それが遮られるということは、自分のスタート、リスタートが何かに阻害されてしまうということ。
1番の歌詞「ピストルの音を誰かが遮る」と類似性があります。
どこまでも、運命は味方をしてくれない。
人生の最初からつまずき、何をやっても上手くいかない、そんな心情が描かれています。
そして、自由を選んだはずなのに、全然自由ではない。
自由とは一見、好き勝手に何でもできることと勘違いをしてしまいがちですが、常に自己責任が伴うもの。
自由とは、すべて自分で選択して判断すること。
それに伴う失敗や責任は、自分で負わなければなりません。
自由を選択することで起こる代償を「落とし穴」と表現し、自由の意味を問いかけています。
人生はいつでもリスタートできる

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傷つけて形を変えていく生き方で
そうやって居場所を見つけたよ
変わりたくて 変わりたくて 生きて
変わりたくて 生きていく
≪いちについて 歌詞より抜粋≫
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人生のスタートに失敗しても、不平等を感じても、思う通りにならなくても、それでも傷つきながらも自分の居場所を見つけた。
失敗や挫折、さまざまな苦しい経験をしながら自分自身が成長してきた。
自分が変わること、自分を変えることで、見つけることができた自分の居場所。
「変わりたくて生きていく」には、強い決意と希望を感じます。
「変わる」とは決してネガティブなことではない。
自分自身を維持していくためには、常に変わり続けることが重要なのではないでしょうか。
困難なことに出会っても、自分自身で対処し新たな生き方を模索していく。
変わることを恐れず、自ら「変わりたくて生きていく」ことに、希望を感じます。
人生はいつでもリスタートできる。
スタートラインの位置について走りはじめればいいのだから。
「いちについて」は生きることへの希望を歌った楽曲
あいみょんの『いちについて』は、生きづらさを抱える人の心に寄りそい、いつでもリスタートできるのだ、と感じられる楽曲ではないでしょうか。人生の不平等さを感じ、何かに阻害されても、自分で人生を切り開いていくことはできる。
傷つきながらも、自分だけの居場所を見つけるために、生きることをあきらめない。
「もう少しだけがんばってみよう・・・」という気持ちにさせ、聴く人の気持ちに寄りそってくれる『いちについて』。
ぜひ、あいみょんの優しい歌声を感じてみて下さい。