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スガシカオが恋を「コーヒー」に例えた理由

恋に落ちる時のことを、思い出してみてほしい。 恋に「落ちる」というけれど、一目惚れみたいに一気に「すとん」と落ちるケースは少なくて、気づいたら好きになっている、という状況が多くないだろうか?友達や同僚から恋人へ…という場合はなおさら。


恋に落ちる時のことを、思い出してみてほしい。恋に「落ちる」というけれど、一目惚れみたいに一気に「すとん」と落ちるケースは少なくて、気づいたら好きになっている、という状況が多くないだろうか?友達や同僚から恋人へ…という場合はなおさら。

スガシカオの「コーヒー」は、そんなふうにじわじわ進む、もどかしい恋の思いを歌った曲だ。



「なんでコーヒーなの?」という疑問は、この曲の歌詞を読んでいくとわかる。

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君が笑ってる それだけでいいんだ
君が泣いている どうしたらいいんだろう?
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あの人の一挙一動がやけに気になる。落ち込んでいるところをなぐさめたいけれど、話しかけるのも恥ずかしくて、遠くから見ているしかできない…。”どうしてあの人のことばかり考えているんだろう”と思っていて、ある日ふと気づく。私、恋をしているのではないか、と。

じわじわと広がるその気持ちを、スガシカオは「コーヒーのシミ」に例えているのだ。

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だって今さら 言えないよ
きみのことを想う気持ちは こぼしたコーヒーみたいに 心に広がって
だってそうだろ? 誰かを好きになるのに 理由なんかいらない
ずっと隠していても 心で日々大きくなってしまう…
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では、なぜコーヒーでなければいけなかったんだろう?
水やジュースだったら、乾いたら消えるかもしれない。でも、コーヒーのシミはそれより濃くて、乾くと布にこびりついてしまう。洗っても、薄くはなるけれど消えずに、うっすら布に残る。恋心と同じように、簡単には消せないのだ。

美しいメロディと、スガシカオ特有のハスキーな声にこの歌詞が乗ると、たまらなく切なくて胸が詰まる…。

そして後半には、また注目したい新たな展開が待っている。

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ぼくたちを残して バスは行ってしまった
遠くの方でクラクション きみの家にむかう途中
“ちょっと 遠回りしていこうよ…”
風がぼくのシャツをあおった
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まだ友達関係なのだけれど、なんとなく別れ難くてバスに乗れない二人。”ちょっと 遠回りしていこうよ…”という言葉から、恋愛初期のあの”電話を切りたくても切れない”状況に似ているだろうか。そして、「バス」という言葉から、もしかしたらこの二人は学生同士なのかな?とも推測できる。

でもちょっと考えてみてほしい。若い二人だったら、”バスに乗れない”くらいの好意をお互いに抱いていたら、きっと付き合っているはず。もしくはこの曲も、もう少し希望を感じられる内容になるはずだ。

でも、どうしてこんなに切ないのだろう…?

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もう たくさんだよ 愛なんて言葉 まともに使えたことない
冷めたコーヒーみたいに 苦味だけが残った
“ずっと今でも 君のこと…” その後に続く言葉は
いくら探しても ぼくには見つけられないんだ
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君といると、好きなのに「冷めたコーヒーみたいに」苦い気持ちになる。伝えたい言葉もあるはずなのに、ふさわしいものが見つからない。それは、この曲の主人公が”伝えてはいけない思い”を抱えているからに違いない。そして「冷めた」というのは、気持ちだけではなく、年月を経て”好き”と言い出しにくくなってしまった二人の関係も表しているのだ。昔からの友達で、好きだと気付いた時には、相手は別の人と結婚してしまっていたとか。もしくは、相手が友達の彼女であるとか。

道ならぬ恋の香りを感じないだろうか。

残念ながら、スガシカオ自身は、インタビューではこの曲を「淡い恋の歌」としてしか語っていない。けれど、スガさんのことだから、どうですか? 裏の意味があるんじゃないですか? …と、私は本人に問うてみたい。

恋愛を「コーヒー」に例えた前半の歌詞では、まるで初恋のようなみずみずしさを感じさせながらも、後半を深読みすると、切ない結末が待っている。
コーヒーを片手に、じっくりと聴いてほしい一曲だ。



TEXT:佐藤マタリ

1997年2月26日、「ヒットチャートをかけぬけろ」でデビュー。 1stアルバム『Clover』以降、全てのオリジナルアルバムがオリコンTOP10入りを記録。2011年、所属事務所からの独立を発表。メジャー/インディーズの枠組みに捉われない独自の活動を行ってきたが、2014年シングル「アストライド/LIFE」···

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