「陰ニモ日向ニモ」に込められた二重の意味
卓越したダンスパフォーマンスと多彩な音楽性で国内外から注目を集めるTravis Japan。『陰ニモ日向ニモ』は、メンバーの七五三掛龍也が出演するドラマ「ぜんぶ、あなたのためだから」の挿入歌です。
タイトルの『陰ニモ日向ニモ』は、「陰に日向に」という慣用表現を想起させます。
表立った場でも陰の場でも、絶えず誰かを支え続ける様子を意味する言葉です。
そしてカタカナで「陰ニモ日向ニモ」と表記することで、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」との繋がりが自然と意識されるのではないでしょうか。
苦難の中でも私利私欲を持たず他者のために生きる理想の人間像という、賢治が詩に込めた精神性とも重なるように感じられます。
一見すると純粋な愛の献身を描いた曲名に見えますが、歌詞を読み進めると献身はやがて執着へと変質していく様子が浮かび上がってきます。
白と黒の世界観

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汚れのない真っ白な無垢の Flower
折れないように誰にも触れさせない
例えるならピュア
白と黒の世界
すべてを賭けて守りきるは宿命
≪陰ニモ日向ニモ 歌詞より抜粋≫
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冒頭の「汚れのない真っ白な無垢のFlower」は、主人公が守ろうとする存在の純粋さを象徴していると読み取れます。
「花は美しく、しかし折れやすい」だからこそ「誰にも触れさせない」という強い意志が生まれるのかもしれません。
この時点ですでに、愛情と独占欲の境界線が曖昧になり始めています。
続く「例えるならピュア 白と黒の世界」という歌詞から、この曲の世界観が白か黒か、どちらかしか存在しない極端な二択で構成されていることがわかります。
グレーの余地がない世界での恋愛だからこそ、「すべてを賭けて守り切るは宿命」という言葉が必然性を持って響いてくるのではないでしょうか。
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誰だって It doesn’t matter
どんだけ修羅場
くぐれば So what’s up?
それ言葉の綾
そんなものザラ
No more おべんちゃら
愛おしくって Amour
一途な恋の痕
立ち入れない危険な World
≪陰ニモ日向ニモ 歌詞より抜粋≫
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Bメロでは、二人の世界の閉じた性質がより鮮明になります。
どんな修羅場をくぐり抜けようとも、相手の女性は「だからどうしたの?」とクールに返すのかもしれません。
しかし主人公はそれを「言葉の綾」だと受け取り、そんなおべんちゃらさえも愛おしいと感じています。
誰が何を言おうと関係ない、誰も立ち入れない危険な二人だけの世界が、ここで確立されるのではないでしょうか。
サビから読み解く"クールな溺愛"

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縮まらない距離ない想いの裏返し
絵にならない Satisfy なんて鸚鵡返し
熱くはならない Delight
クールなまま溺愛
陰ニモ日向ニモ
≪陰ニモ日向ニモ 歌詞より抜粋≫
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「縮まらない距離ない想い」という言葉だけを見ると、二人の間に温度差があるように聞こえます。
しかしその直後に「裏返し」と続くことで、距離が縮まらないのも、想いがないように見えるのも、すべて「本音を隠した表れ」なのかもしれません。
「おうむ返し」という表現も、素直になれない二人がお互いの言葉を受け流しながらも、実は深くつながっている様子を示しているのではないでしょうか。
そして「クールなまま溺愛 陰ニモ日向ニモ」というフレーズに、この曲の核心が凝縮されています。
表面上はクールに振る舞いながら、表でも裏でも変わらず溺愛し続けているのかもしれません。
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いつだって命かけて On & on
独壇場だわ俺の
意固地でいい On & on
I’m always with you
≪陰ニモ日向ニモ 歌詞より抜粋≫
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「いつだって命かけて」「意固地でいいOn&on」という言葉からは、どんな状況でも揺るがない主人公の一途さが伝わってきます。
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空ひっくり返ってしまっても
特別な Unbreakable
未来なんて Not sure
だから迎えにいこう
≪陰ニモ日向ニモ 歌詞より抜粋≫
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「空ひっくり返ってしまっても」という表現は、世界がどれだけ変わっても揺るがないという強い意志の表れだと考えられます。
「未来なんてNot sure」と不確かさを認めながらも、「だから迎えにいこう」と能動的な選択をする、不安を理由に立ち止まるのではなく、不確かだからこそ一緒に進もうと導いているのではないでしょうか。
この一節に、貫く愛の本質が宿っているのかもしれません。
「Unbreakable」(=壊れない)という言葉は、二人の絆の強さを示す一方で、そこから抜け出せない束縛のようにも聞こえます。
救いなのか、それとも逃げられない宿命なのか。
その解釈は、聴く人によって異なるかもしれません。
そんな二人の世界をさらに際立たせるように、楽曲後半はサビのフレーズが繰り返される構成になっています。
終わりそうで終わらないその構造が、沼のような深さをそのまま音で体現しているようにも感じられるのではないでしょうか。
「陰ニモ日向ニモ」が描く愛の正体

Travis Japanの『陰ニモ日向ニモ』の歌詞の意味を考察していくと、その根底には白と黒の二面性を軸に、献身と執着、純愛と束縛が混ざり合う「美しくも危険な愛」が描かれているように感じられます。
クールな顔の裏に溺愛を隠し、表でも裏でも変わらず相手を想い続ける主人公の姿は、「一途さと紙一重の危うさ」をあわせ持っているのではないでしょうか。
曲名が示す「どんな場面でも変わらない愛の形」は純粋に美しい一方で、歌詞を読み解くにつれて献身が執着へと変質していくようにも見えます。
その境界線が最後まで曖昧なままであることも、この曲の恐ろしくも魅力的なところでしょう。
歌詞の意味と解釈を知ったうえで、改めて「陰ニモ日向ニモ」を聴いてみると、Travis Japanが描く危うくも純粋な愛の世界に、より深く引き込まれていくと思います。
ぜひ、その世界観に身を委ねて聴いてみてください。
