「時間よ止まれ」矢沢永吉の代表曲
矢沢永吉の『時間よ止まれ』は、1978年3月にリリースされたシングルです。ロックバンド・キャロルとして1972年から1975年まで活動していた矢沢。
1975年のキャロル解散後にすぐにソロに転向し、シングル『アイ・ラヴ・ユー、OK』でデビューしました。
『時間よ止まれ』は5枚目のシングルで、オリコンチャート1位を獲得した大ヒット曲。
矢沢の代表曲のひとつとして人気の高い名バラードです。
都会的で洗練されたサウンドとアレンジが、けだるい夏の雰囲気を醸し出し、愛する人との時間を永遠に止めたい、という官能的な歌詞が魅力です。
矢沢の抑え気味のボーカルが哀愁を感じさせ、心地よい余韻を残します。
「時間よ止まれ」資生堂CMソング

『時間よ止まれ』は、化粧品メーカー資生堂のCMソングとして起用されました。
幅広くお茶の間に浸透したことも、大ヒットにつながった要因です。
当時は、男性ロックシンガーと、主に女性を対象とする化粧品とのコラボは異色で、大きな話題となりました。
「時間よ止まれ」をテーマに自立した女性像を描きたい資生堂が、矢沢に楽曲を依頼したとのこと。
作詞は、数々の名曲を手がけてきた山川啓介が担当しています。
1970代後半から1990年代初頭にかけて、各化粧品メーカーのCMソングは激化し、資生堂VSカネボウという大きな戦いが繰り広げられるようになってきます。
矢沢の『時間よ止まれ』に対して、カネボウはサーカスの『Mr.サマータイム』でした。
大手2社だけでなく、コーセーやポーラなども参戦。
化粧品メーカーとのタイアップはヒット間違いなし、と言われていた時代だったのです。
2014年には「一瞬も 一生も 美しく」を掲げる資生堂コーポレートCMソングとして、再び『時間よ止まれ』が起用されました。
往年のファンのみならず、最高の美を創る資生堂と最高の音楽を創る矢沢との再びのコラボレーションは、多くの人に大きなインパクトを残しました。
矢沢永吉「一生歌わない」は本当?

矢沢永吉には『時間よ止まれ』を「一生歌わない」と語った伝説があります。
この発言は本当です。
『時間よ止まれ』の制作時、まず楽曲依頼が矢沢にあり、矢沢の推薦で作詞家の山川啓介に歌詞の制作が依頼されました。
歌詞の完成後に「人の創った詞を歌いたくない」と難色を示した矢沢。
周囲の説得の末、OKを出す代わりに「この歌は一生歌わないよ」と条件を提示したとのこと。
ロックシンガー矢沢永吉としてのプライドがあったのでしょうか。
しかし、その後『時間よ止まれ』は、ライブでセットリストに入り、2009年の紅白歌合戦サプライズ出演の際、会場でも歌われました。
さらに2025年のツアーでもセットリストに入っています。
自他ともに認める矢沢の代表曲のひとつとして、『時間よ止まれ』は輝き続けているのです。
「この女(ひと)に賭ける」夏の恋

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罪なやつさ Ah PACIFIC
碧く燃える海
どうやら おれの負けだぜ
まぶた閉じよう
夏の日の
恋なんて
幻と 笑いながら
この女に賭ける
≪時間よ止まれ 歌詞より抜粋≫
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冒頭から、パシフィック(太平洋)という言葉で、南の島やリゾートを彷彿とさせます。
南国で出会った素敵な女性。
いつもは強気で負け知らずな男性が、輝く女性の魅力に心を奪われています。
「おれの負け」と素直に負けを認める姿に、女性に対する憧れや崇拝を感じ、男性のかわいらしささえ窺えます。
まぶたを閉じるのは、きっとこの恋に対して、あれこれ考えたくないからでしょう。
現実では男性は、たくさん抱えているものもあるでしょう。
けれど、今この時を、この瞬間をただ感じていたい。
夏の恋は、もしかしたら幻なのかもしれない。
そんなことはわかっているつもり。
でも今は、この女性に溺れていたい、そんな心境が描かれているのではないでしょうか。
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汗をかいた グラスの
冷えたジンより
光る肌の香りが
おれを酔わせる
≪時間よ止まれ 歌詞より抜粋≫
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汗をかいたグラスが、より夏の風景を感じさせます。
体に染み込むジン(お酒)よりも、俺を酔わせるあなた。
艶めく女性の素肌の色香に、メロメロになっている様子を感じます。
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幻で かまわない
時間よ止まれ
生命の
めまいの中で
≪時間よ止まれ 歌詞より抜粋≫
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ああ、この素敵な時間が幻だとしてもかまわない。
「このまま時間よ止まれ」と、永遠を願う気持ちです。
時間が止まることはあり得ないもの。
それなのに願ってしまうところに、一瞬の美しさや今この瞬間を生きる刹那を感じます。
「命のめまい」とは、魂が揺さぶられるような興奮や衝撃のことでしょう。
今、男性は命のきらめきの真っ只中にいます。
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罪なやつさ Ah PACIFIC
都会の匂いを
忘れかけた このおれ
ただの男さ
≪時間よ止まれ 歌詞より抜粋≫
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きっと仕事から離れ休暇をとって、この地(リゾートなど)を訪れたのでしょう。
普段は都会の喧騒に身を置く男性。
この場所で過ごす心地よさが、すべてを忘れさせてくれ、ただ一人の男として存在できる喜びを語っています。
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思い出に
なる恋と
西風が笑うけれど
この女に賭ける
≪時間よ止まれ 歌詞より抜粋≫
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西風は、秋の訪れや季節の移り変わりをを感じさせる表現。
西風がまるで「夏に始まった恋は秋には終わるだろう」と、冷やかしているようです。
男性自身も、そう予感しているのかもしれません。
けれど、この女性にすべてを捧げたい、そんな心情が描かれています。
夏の恋の激しさを、西風という言葉で落ちつかせクールダウンする。
見事な比喩表現ではないでしょうか。
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Mm-STOP THE WORLD
Mm-STOP THE WORLD
Mm-STOP THE WORLD
≪時間よ止まれ 歌詞より抜粋≫
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ラストのフレーズは「時間よ止まれ」より、もっと壮大なイメージの「世界よ止まれ」です。
今のこの時間だけでなく、世界のすべてが止まることで、今を永遠に閉じこめたい。
それほどの夏の恋に溺れた男性の心情が描かれています。
秋が来てこの恋が終わることなんて考えたくない。
どうか「この時間よ止まってくれ」と願う男性の、刹那な今を歌詞に閉じ込めています。
「時間よ止まれ」は刹那と永遠が共存する名曲
『時間よ止まれ』は、資生堂のCMソングに起用され大ヒットした、矢沢永吉の代表曲のひとつです。夏の南国を背景に、魅力的な女性との出会いと恋が描かれています。
この素敵な時間が幻でもかまわない、と刹那に身を置きながらも「このまま時間よ止まれ」と、永遠を願う。
都会的でいつもは強気な男性が、女性の魅力に溺れていく様子が官能的ですよね。
刹那と永遠が共存する『時間よ止まれ』。
リリースから50年近く経った今でも色褪せない名曲です。
