日本のシンボルをモチーフとした明治生まれの唱歌

標高3,776mという日本最高峰の高さを誇り、その壮大で美しい景観から、日本を象徴する名山として国内外の人に愛されている富士山。
古来から信仰の対象であっただけでなく、多様なインスピレーションを与える芸術の源泉として絵画や文学、音楽のモチーフともなってきました。
富士山をモチーフにした楽曲といえば、どの世代の方も真っ先に思い浮かぶのは文科省唱歌『ふじの山』ではないでしょうか。
『ふじの山』は、1911年刊行の『尋常小学読本唱歌(二)』に掲載する曲として児童文学者の巌谷小波が作詞を手がけました。
発表の翌年にタイトルが『富士山』と改定されましたが、小学校の漢字の習得状況や歌詞の読みやすさを考慮し、現在は『ふじの山』や『ふじ山』のタイトルで掲載されるケースが多くなっています。
小学生も覚えやすいシンプルなメロディに七五調の歌詞の乗せ、優美で親しみやすい雰囲気を感じさせる楽曲です。
富士山をどのように表現しているのか、改めて歌詞の意味を考察していきましょう。
山々を見下ろす富士山の偉大さ

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あたまを雲の上に出し、
四方の山を見おろして、
≪ふじの山 歌詞より抜粋≫
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1番では、富士山の雄大さが描かれています。
「あたまを雲の上に出し」というフレーズで、雲のさらに上に山頂が見える様子が表現されていますね。
そして、富士山はそこから「四方の山を見おろして」います。
まるでほかの山を従え、町々を守っているような威厳を感じる表現です。
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かみなりさまを下にきく、
ふじは日本一の山。
≪ふじの山 歌詞より抜粋≫
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日本では、古くから雷が持つ大きな力への畏怖の念と農耕の恵みへの感謝から、「かみなりさま」と神格化して呼ばれることがあります。
しかし富士山は雲から頭を出しているため、雷さえも下に聞こえます。
富士山の実際の大きさを示すとともに、何者も超えられない崇高で、偉大な存在に対する畏敬の気持ちが伝わってくるでしょう。
「ふじは日本一の山」と言い切ることにより、その強い思いが表現されています。
富士山の美しい姿に魅了される

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青空高くそびえたち、
からだに雪のきものきて、
≪ふじの山 歌詞より抜粋≫
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2番では、富士山の美しさにスポットが当てられています。
「青空」をバックに堂々とそびえる富士山は、「からだに雪のきものきて」とあるように山頂が雪化粧している姿が特徴的です。
空の青さに白い雪が映える清麗な景色は、見る人を感動させます。
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かすみのすそをとおくひく、
ふじは日本一の山。
≪ふじの山 歌詞より抜粋≫
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「かすみのすそをとおくひく」という歌詞は、日本らしい表現といえるでしょう。
富士山の山裾が、霞みの向こうに消えるほど遠くまで広がるさまは、まるで平安時代の十二単のよう。
十二単の長い裾を引きずって歩く女性のように、優雅な姿が描かれています。
また、裾が広がる末広がりの形は縁起がよいとされているため、富士山の神秘的なパワーを示す意味合いもあるのかもしれません。
標高の高さだけでなく唯一無二の美しさと威厳を誇る富士山は、間違いなく「日本一の山」です。
日本一の山の魅力を味わおう!
唱歌『ふじの山』は、日本の誇りともいえる富士山の景色を見事に表現した楽曲です。子どもの頃から何気なく親しんできた楽曲ですが、歌詞に注目すると改めて富士山の素晴らしさを実感できるでしょう。
日本人として富士山をいつまでも大切に守っていきたいですね。
