好すいて好すかれて 夫婦めおとになって
夢ゆめも三み月つきの 恋女房こいにょうぼう
飽あきも飽あかれも せぬものを
実家さとへ帰かえれと 三下みくだり半はん
投なげて仁吉にきちの 投なげて仁吉にきちの 男泣おとこなき
「お菊きく 何なにも言いわずに この離縁状さりじょうを持もっ
て実家さとへ帰かえってくれ。俺おれの弟分おとうとぶんの神戸こうべの長なが
吉きちとお前めえの兄あにさんの安濃あのうの徳二郎とくじろうとは敵味てきみ
方かた。その敵かたきの妹いもうとを女房にょうぼうにしてたんじゃ俺おれの
男おとこが立たたねえ。お前めえには何なにの罪つみもねえが、
黙だまって別わかれてくれ。なぁお菊きく。」
浮うき世よ柵しがらみ 渡世とせいの義理ぎりが
二世にせを契ちぎった 仲なかを裂さく
いっそ恨うらんで くれりゃいい
なんでそんなに 振ふり返かえる
可愛かわいいお菊きくの 可愛かわいいお菊きくの うしろ影かげ
「あの世よとやらに先さきに行いって待まってるぜ
お菊きく。後あとからお前めえが来きたときは 俺おれが船頭せんどう
で三途さんずの川かわの渡わたし舟ぶねを漕こいでやらぁ 次つぎの
世よはきっと きっと添そい遂とげような お菊きく。」
掛かけた苦労くろうの この世よの罪つみは
せめてあの世よで つぐないを
済すまぬ済すまぬと 詫わびながら
生いきちゃ帰かえれぬ 荒神山あのやまへ
吉良きらの仁吉にきちの 吉良きらの仁吉にきちの 旅姿たびすがた
好suいてite好suかれてkarete 夫婦meotoになってninatte
夢yumeもmo三mi月tsukiのno 恋女房koinyoubou
飽aきもkimo飽aかれもkaremo せぬものをsenumonowo
実家satoへhe帰kaeれとreto 三下mikudaりri半han
投naげてgete仁吉nikichiのno 投naげてgete仁吉nikichiのno 男泣otokonaきki
「おo菊kiku 何naniもmo言iわずにwazuni このkono離縁状sarijouをwo持moxtu
てte実家satoへhe帰kaeってくれttekure。俺oreのno弟分otoutobunのno神戸koubeのno長naga
吉kichiとおtoo前meeのno兄aniさんのsanno安濃anouのno徳二郎tokujirouとはtoha敵味tekimi
方kata。そのsono敵katakiのno妹imoutoをwo女房nyoubouにしてたんじゃnishitetanja俺oreのno
男otokoがga立taたねえtanee。おo前meeにはniha何naniのno罪tsumiもねえがmoneega、
黙damaってtte別wakaれてくれretekure。なぁおnaao菊kiku。」
浮uきki世yo柵shigarami 渡世toseiのno義理giriがga
二世niseをwo契chigiったtta 仲nakaをwo裂saくku
いっそisso恨uraんでnde くれりゃいいkureryaii
なんでそんなにnandesonnani 振fuりri返kaeるru
可愛kawaiいおio菊kikuのno 可愛kawaiいおio菊kikuのno うしろushiro影kage
「あのano世yoとやらにtoyarani先sakiにni行iってtte待maってるぜtteruze
おo菊kiku。後atoからおkarao前meeがga来kiたときはtatokiha 俺oreがga船頭sendou
でde三途sanzuのno川kawaのno渡wataしshi舟buneをwo漕koいでやらぁideyaraa 次tsugiのno
世yoはきっとhakitto きっとkitto添soいi遂toげようなgeyouna おo菊kiku。」
掛kaけたketa苦労kurouのno このkono世yoのno罪tsumiはha
せめてあのsemeteano世yoでde つぐないをtsugunaiwo
済suまぬmanu済suまぬとmanuto 詫waびながらbinagara
生iきちゃkicha帰kaeれぬrenu 荒神山anoyamaへhe
吉良kiraのno仁吉nikichiのno 吉良kiraのno仁吉nikichiのno 旅姿tabisugata