河岸かしの小舟こぶねに ゆらゆら灯あかり
誰だれを待まつ身みの 花はなの眉まゆ
すねた夜風よかぜを 袂たもとに抱だいて
憎にくくや今宵こよいも 明石町あかしちょう
「想おもい出でって、なぜこんなに悲かなしいのでしょう。
あたしまた今夜こんやも、知しらず知しらずの間あいだに、ここ
へ来きてしまったのよ。女おんなって弱よわいものだわ。
過すぎ去さった昔むかしのことばかり思おもって泣ないている
んですもの。でも、これが女おんなよ、笑わらわないで、
笑わらわないでちょうだいね。そして成功せいこうなすった
お姿すがたを、一日いちにちも早はやく見みせて下くださいね。」
ほんに想おもえば 昨日きのうのことは
今宵こよい泣なけとの 謎なぞかしら
泣ないてみたとて 詮せんないけれど
女おんなごころの なんとしょう
「早はやいものね。もうあれから三年さんねん経たってしまっ
たんですもの。あなたが立派りっぱに成功せいこうなさる日ひま
で、きっと待まっていますと、お誓ちかいしたあたし…
…、でも、それがみんな夢ゆめだったのね。変かわっ
たわ、あなたがお変かわりになったと同おなじように、
あたしもすっかり変かわってしまいましたわ。皮肉ひにく
じゃないのよ。いいえ、あたしはこれが一いち番つがい
いお互たがいの道みちだと思おもっていますの。あたし生せい
れ変かわった気持きもちで、これからの世よの中なかを強つよく
強つよく、きっと生いき抜ぬいてみせますわ。」
情なさけひとつで 浮世うきよが住すめりゃ
なんで泣なきましょ 都鳥みやこどり
水みずの流ながれに 想おもいを捨すてる
これも義理ぎりゆえ 運命さだめゆえ
河岸kashiのno小舟kobuneにni ゆらゆらyurayura灯akaりri
誰dareをwo待maつtsu身miのno 花hanaのno眉mayu
すねたsuneta夜風yokazeをwo 袂tamotoにni抱daいてite
憎nikuくやkuya今宵koyoiもmo 明石町akashichou
「想omoいi出deってtte、なぜこんなにnazekonnani悲kanaしいのでしょうshiinodesyou。
あたしまたatashimata今夜konyaもmo、知shiらずrazu知shiらずのrazuno間aidaにni、ここkoko
へhe来kiてしまったのよteshimattanoyo。女onnaってtte弱yowaいものだわimonodawa。
過suぎgi去saったtta昔mukashiのことばかりnokotobakari思omoってtte泣naいているiteiru
んですものndesumono。でもdemo、これがkorega女onnaよyo、笑waraわないでwanaide、
笑waraわないでちょうだいねwanaidechoudaine。そしてsoshite成功seikouなすったnasutta
おo姿sugataをwo、一日ichinichiもmo早hayaくku見miせてsete下kudaさいねsaine。」
ほんにhonni想omoえばeba 昨日kinouのことはnokotoha
今宵koyoi泣naけとのketono 謎nazoかしらkashira
泣naいてみたとてitemitatote 詮senないけれどnaikeredo
女onnaごころのgokorono なんとしょうnantosyou
「早hayaいものねimonone。もうあれからmouarekara三年sannen経taってしまっtteshimaxtu
たんですものtandesumono。あなたがanataga立派rippaにni成功seikouなさるnasaru日hiまma
でde、きっとkitto待maっていますとtteimasuto、おo誓chikaいしたあたしishitaatashi…
…、でもdemo、それがみんなsoregaminna夢yumeだったのねdattanone。変kaわっwaxtu
たわtawa、あなたがおanatagao変kawaりになったとrininattato同onaじようにjiyouni、
あたしもすっかりatashimosukkari変kaわってしまいましたわwatteshimaimashitawa。皮肉hiniku
じゃないのよjanainoyo。いいえiie、あたしはこれがatashihakorega一ichi番tsugaいi
いおio互tagaいのino道michiだとdato思omoっていますのtteimasuno。あたしatashi生sei
れre変kaわったwatta気持kimochiでde、これからのkorekarano世yoのno中nakaをwo強tsuyoくku
強tsuyoくku、きっとkitto生iきki抜nuいてみせますわitemisemasuwa。」
情nasaけひとつでkehitotsude 浮世ukiyoがga住suめりゃmerya
なんでnande泣naきましょkimasyo 都鳥miyakodori
水mizuのno流nagaれにreni 想omoいをiwo捨suてるteru
これもkoremo義理giriゆえyue 運命sadameゆえyue