過去かこを指さしたまま 時間じかんはとまり
雨音あまおとだけが 過すぎてゆく樹海じゅかい
落葉らくようを踏ふんで さまよえば
誰だれが落おとした 簪かんざしが
"忘わすれてはいやです"と
足駄あしだにからむ 法師ほうしの宿やど
雨あめが止やみました いい月つきですよ
みて下くださいと 窓まどをあける女おんな
湯上ゆあがりなのか 黒髪くろかみの
甘あまい香かおりに ふりむけば
一輪いちりんの カトレアが
夜風よかぜに白しろく 咲さいていたよ
淋さびしさを友ともに 暮くらしていると
人恋ひとこいしくて たまらないんだろう
生々なまなまし気きに お酌しゃくする
細ほそい手首てくびに 傷きずの跡あと
"みつめては いやです"と
小袖こそでで隠かくす 山家やまがの女おんな
虫むしの音ねをききに ぜひもう一度いちど
約束やくそくしてと 別わかれ惜おしむ女おんな
一度いちどだなんて 水臭みずくさい
三度さんど 四よ度どを 待まちますと
言いわせたい 泣なかせたい
湯ゆ情じょうが宿やどる 法師ほうしの宿やど
過去kakoをwo指saしたままshitamama 時間jikanはとまりhatomari
雨音amaotoだけがdakega 過suぎてゆくgiteyuku樹海jukai
落葉rakuyouをwo踏fuんでnde さまよえばsamayoeba
誰dareがga落oとしたtoshita 簪kanzashiがga
"忘wasuれてはいやですretehaiyadesu"とto
足駄ashidaにからむnikaramu 法師houshiのno宿yado
雨ameがga止yaみましたmimashita いいii月tsukiですよdesuyo
みてmite下kudaさいとsaito 窓madoをあけるwoakeru女onna
湯上yuagaりなのかrinanoka 黒髪kurokamiのno
甘amaいi香kaoりにrini ふりむけばfurimukeba
一輪ichirinのno カトレアkatoreaがga
夜風yokazeにni白shiroくku 咲saいていたよiteitayo
淋sabiしさをshisawo友tomoにni 暮kuらしているとrashiteiruto
人恋hitokoiしくてshikute たまらないんだろうtamaranaindarou
生々namanamaしshi気kiにni おo酌syakuするsuru
細hosoいi手首tekubiにni 傷kizuのno跡ato
"みつめてはmitsumeteha いやですiyadesu"とto
小袖kosodeでde隠kakuすsu 山家yamagaのno女onna
虫mushiのno音neをききにwokikini ぜひもうzehimou一度ichido
約束yakusokuしてとshiteto 別wakaれre惜oしむshimu女onna
一度ichidoだなんてdanante 水臭mizukusaいi
三度sando 四yo度doをwo 待maちますとchimasuto
言iわせたいwasetai 泣naかせたいkasetai
湯yu情jouがga宿yadoるru 法師houshiのno宿yado