十六じゅうろくの
胸むねの痛いたみは 加茂川かもがわの
蓬よもぎの香こうより 来くるという
人ひとの話はなしに つまされました
春はるは羞はじかし 京きょう舞妓まいこ
「丘おかの上うえの校舎こうしゃよ、左様さようなら。
なつかしい制服せいふくを脱ぬぎ、クラスメートに
別わかれて、あたしはとうとう舞妓まいこになった。
あけて十六じゅうろく。ああ、あたしの胸むねにも、
そして加茂かもの河原かわらにも……人ひとの世よの春はるは、
訪おとずれて来きたんだわ。」
顔見世かおみせの
のぼりはためく 雪ゆきの朝あさ
訣さとしれの小指こゆび ちぎりしを
思おもい出だしては 泣なきぬれました
遠とおい儚はかなない 人ひとの影かげ
「あの方かたの事ことは、もう忘わすれましょう。
考かんがえていると、堪たまらなくなって来くる
どうせあたしは、人ひとのおもちゃの京人形きょうにんぎょう。
恋こいなど出来できる身分みぶんじゃないわ……」
十六じゅうろくの
春はるが来くるのに 匂におうのに
八坂やさかの鳩はとと たわむれて
夢ゆめはかいなく 棄すてさりました
朱あかいおこぼの 京人形きょうにんぎょう
十六juurokuのno
胸muneのno痛itaみはmiha 加茂川kamogawaのno
蓬yomogiのno香kouよりyori 来kuるというrutoiu
人hitoのno話hanashiにni つまされましたtsumasaremashita
春haruはha羞hajiかしkashi 京kyou舞妓maiko
「丘okaのno上ueのno校舎kousyaよyo、左様sayouならnara。
なつかしいnatsukashii制服seifukuをwo脱nuぎgi、クラスメkurasumeートtoにni
別wakaれてrete、あたしはとうとうatashihatoutou舞妓maikoになったninatta。
あけてakete十六juuroku。ああaa、あたしのatashino胸muneにもnimo、
そしてsoshite加茂kamoのno河原kawaraにもnimo……人hitoのno世yoのno春haruはha、
訪otozuれてrete来kiたんだわtandawa。」
顔見世kaomiseのno
のぼりはためくnoborihatameku 雪yukiのno朝asa
訣satoshiれのreno小指koyubi ちぎりしをchigirishiwo
思omoいi出daしてはshiteha 泣naきぬれましたkinuremashita
遠tooいi儚hakanaないnai 人hitoのno影kage
「あのano方kataのno事kotoはha、もうmou忘wasuれましょうremasyou。
考kangaえているとeteiruto、堪tamaらなくなってranakunatte来kuるru
どうせあたしはdouseatashiha、人hitoのおもちゃのnoomochano京人形kyouningyou。
恋koiなどnado出来dekiるru身分mibunじゃないわjanaiwa……」
十六juurokuのno
春haruがga来kuるのにrunoni 匂nioうのにunoni
八坂yasakaのno鳩hatoとto たわむれてtawamurete
夢yumeはかいなくhakainaku 棄suてさりましたtesarimashita
朱akaいおこぼのiokobono 京人形kyouningyou