Mrs. GREEN APPLE「ア・ポステリオリ」は6thアルバム『POPS』収録曲
「ア・ポステリオリ」は、2026年9月30日発売の6thオリジナルフルアルバム『POPS』に収録されている新曲です。アルバムでは「本と彗星」に続く5曲目に置かれています。
ア・ポステリオリの意味
「ア・ポステリオリ(a posteriori)」は、ラテン語に由来する哲学用語です。「あとから」という意味で、経験を通して得られる知識や、後天的なものを指します。
人は生まれながらにして決まった「何者か」ではなく、経験を重ねることで形づくられていく。
その反対にあたるのが「ア・プリオリ(a priori)」で、経験に先立つもの、生まれつき備わっているものを意味します。
ミセスファンなら、ここでピンとくる方も多いはずです。
Mrs. GREEN APPLEには「ア・プリオリ」という楽曲があります。
2018年8月1日リリースのシングル『青と夏』に収録された一曲で、声色を次々に変えながら歌われる、皮肉たっぷりの歌詞が印象的な楽曲。
「経験に先立つもの」を歌った曲から8年。
今度は「経験によって得られるもの」をタイトルに掲げた楽曲が届きました。
辛辣な語り口で「君」を見つめる構図は、2曲に共通しています。
けれど、その先にたどり着く答えは、大きく異なっています。
ここからは、「ア・プリオリ」との対比も交えながら、「ア・ポステリオリ」の歌詞の意味を考察していきます。
笑いをこらえる"私"と、糸に操られる"君"

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笑わせないで
ずっと私はね
腹の奥底で
グッと堪えてる
悲劇の様にね
喜劇の様にね
君の頭の上には
糸が張り巡ってる
どうせ まだ
気付きっこない
バカにしてる隙に
糸が絡んでる
≪ア・ポステリオリ 歌詞より抜粋≫
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曲は、笑わせないで、という言葉から始まります。
主人公の「私」は、ずっと腹の奥底で笑いをこらえているのです。
その視線の先にいるのは「君」です。
悲劇のようでもあり、喜劇のようでもある君の頭上には、糸が張り巡らされています。
この「糸」からは、操り人形(マリオネット)が思い浮かびます。
君は自分の意思で動いているつもりでいる。
けれど実際には、見えない糸に操られているにすぎない。
そんな構図が浮かび上がります。
どうせまだ気づくはずがない、と「私」は「君」を冷ややかに見つめます。
君が誰かをバカにしている隙に、その糸はますます絡まっていく。
相手を見下しているつもりの人ほど、自分の置かれた状況に気づけない。
その皮肉が、鋭く描かれています。
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君は笑ってる
憂さを晴らしてる
無駄に悟ってる
生きる程に
人は腐っていく
≪ア・ポステリオリ 歌詞より抜粋≫
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このパートでは、笑って憂さを晴らし、わかったような顔で無駄に悟っている君の姿が描かれます。
そして、生きれば生きるほど人は腐っていく、と突き放すように締めくくられます。
経験を重ねて賢くなったつもりが、実は凝り固まり、濁っていく。
年齢や経験が必ずしも成長につながるとは限らない、という痛烈な指摘です。
「経験によって得られるもの」を意味するタイトルに対して、あえて逆説的な言葉を投げかけているようにも読めます。
流行りも幸福も溶けていく、皮肉なパラダイス

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笑わせないで
ずっと私はね
あなたのボロが出る
瞬間を待ってる
流行り物はね
廃れる運命
結局どこまで行けど
無に帰す
人が人であることに
飽きてしまうまで
ここはパラダイス
≪ア・ポステリオリ 歌詞より抜粋≫
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2番でも、「私」は笑いをこらえ続けています。
ここで明かされるのは、「私」が相手のボロが出る瞬間を待っている、ということです。
取り繕った姿が崩れるその時を、じっと待ち構えている。
1番よりもさらに意地悪な視線です。
続いて、流行りものはいずれ廃れる運命にあり、結局どこまで行っても無に帰ると歌われます。
どれだけ持てはやされたものも、いつかは消えていく。
醒めた無常観が漂います。
そして、人が人であることに飽きてしまうまでは、ここはパラダイスだ、と続きます。
ここでの「パラダイス」は、心からの楽園というより、皮肉を込めた言葉だといえるでしょう。
欲望や流行に踊らされ続けられるうちは、この世界は楽園に見える。
そんな冷めたまなざしが感じられます。
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有り余ってる
幸福が溶けていく
優雅に座ってる
生きる程に
君は腐っていく
≪ア・ポステリオリ 歌詞より抜粋≫
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有り余るほどの幸福が溶けていくなかで、優雅に座っている君。
満たされすぎた状態は、かえって人を鈍らせていくのかもしれません。
注目したいのは、パートの最後の言葉です。
1番では、生きるほどに腐っていくのは「人」でした。
ここでは、それが「君」に変わっています。
一般論として語られていた言葉が、目の前の相手に向けた、より直接的な批判へと鋭さを増しています。
腐っていく中で、僕は育っていく

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呆けた奴の為
わざわざ降り立ち
愛想の良いフリをして
いつか死ぬなら
楽しくね。
≪ア・ポステリオリ 歌詞より抜粋≫
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このパートでは、ぼんやりとした相手のためにわざわざ降り立ち、愛想のいいふりをする姿が描かれます。
「降り立つ」という言葉からは、高いところから見下ろしていた存在が、地上に降りてくるようなイメージが浮かびます。
1番で君の頭上に張り巡らされていた糸を操っているのは、この「私」なのかもしれません。
そして、いつか死ぬのなら楽しく、と言い放ちます。
冷笑的でありながら、どこか開き直ったような明るさもにじむ一言です。
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見誤ってる
勘違いをしている
君は言う程出来た人じゃない。
バレてる。
奇妙に笑ってる
憂さを晴らしてる
無駄に悟ってる
生きる程に
人は腐っていく
瞬く度に、
僕は腐っていく
≪ア・ポステリオリ 歌詞より抜粋≫
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ここでは、君は見誤っている、勘違いしている、言うほどできた人間じゃない、と畳みかけます。
そして、それはもうバレている、と短く突きつけます。
これまで笑いをこらえていた「私」が、ついに本音をぶつける瞬間です。
続いて1番と同じように、笑って憂さを晴らし、無駄に悟っている姿が描かれます。
ただし、ここでの笑い方は「奇妙」なものに変わっています。
そして、この曲最大の転換点が訪れます。
生きるほどに腐っていくのは人だ、と繰り返したあと、瞬きをするたびに「僕」は腐っていく、と続くのです。
1番では「人」、2番では「君」。
そしてここでついに、腐っていく主語が「僕」自身になります。
他人を冷ややかに観察し、見下していたはずの語り手が、実は自分も同じように腐っていく存在だったと気づく。
「私」という語り手がここで「僕」に変わることにも、取り繕った視点から素の自分に戻ったような意味が込められているのかもしれません。
君に向けていた辛辣な言葉は、すべて自分自身にも向けられていたのです。
ここに、「ア・プリオリ」との大きな違いがあります。
「ア・プリオリ」の語り手は、聞く耳を持たない大人や他人の考えを借りて生きる人に、あきれながら忠告を重ねていました。
あくまで外側から「君」を批判する立場です。
「ア・ポステリオリ」の語り手も、途中までは同じように「君」を見下ろしています。
けれど最後には、自分自身もまた腐っていく一人なのだと認めます。
批判する側から、批判される側へ。
その視点の転換こそが、「経験」を経た今だからこそ描けたものなのではないでしょうか。
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輝きの中で
人混みの中で
腐っていく中で
僕は育っていく
≪ア・ポステリオリ 歌詞より抜粋≫
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ラストのパートではじめて、「腐る」の反対にある「育つ」という言葉が現れます。
華やかな場所でも、雑踏の中でも、腐っていくその過程の中でさえ僕は育っている。
「腐る」と「育つ」は正反対の言葉に見えますよね。
けれど、食べ物が発酵して旨みを増すように、変化の過程には「朽ちること」と「熟すこと」の両面があります。
汚れたり濁ったりしながら、それでも経験を重ねて育っていく。
それこそが、タイトルの「ア・ポステリオリ=経験によって得られるもの」が示す答えなのではないでしょうか。
「ア・プリオリ」は、どれだけ伝えても変わらない人の心に、半ば諦めかけるようにして幕を閉じる楽曲でした。
それに対して「ア・ポステリオリ」は、腐っていく自分を受け入れたうえで「育っていく」と前を向いて終わります。
人は「ア・ポステリオリ(あとから)=経験を重ねることで」いくらでも変わっていける。
そんな希望を、私たちに残しているように感じます。
Mrs. GREEN APPLE「ア・ポステリオリ」が描く、腐りながらも育つ人間の姿
Mrs. GREEN APPLE「ア・ポステリオリ」は、皮肉と冷笑を重ねた先で、他人に向けていた言葉が自分に返ってくる一曲でした。
経験に先立つものを歌った「ア・プリオリ」から8年、経験によって育つ自分を肯定する答えへ。
誰もが少しずつ濁り、朽ちていく。
それでも、その経験のすべてが人を育てていく。
2曲を聴き比べながら、人間へのまなざしの違いを確かめてみてください。
【Mrs. GREEN APPLE PROFILE】 大森元貴 (Vo/Gt) 若井滉斗 (Gt) 藤澤涼架 (Key) 2013年結成。2015年EMI Recordsからミニアルバム「Variety」でメジャーデビュー。 以来、毎年1枚のオリジナルアルバムリリースと着実なライブ活動を続け、2019年12月から行われた初の全国アリーナツアー「エデ···
