『猟奇的なキスを私にして』に収録されている『アソビ』
ゲスの極み乙女。は今大人気の4人組バンド。今回はそんな彼らの曲の中から『アソビ』という曲を紹介します。ゲスの極み乙女。はワンマンライブはすぐソールドアウト、フェスでも入場規制を繰り返すほどの人気バンド。実際、去年のRIJで観た際も入場規制がかかっていました。実際にライブで聴いてみると、改めてメンバーの演奏技術の高さが分かります。
『アソビ』はそんなメンバーの演奏テクニックを堪能できる一曲です。かなり独特な曲展開、複雑なリズム、まさに音楽で遊んでいる曲です。
高度なテクニックを要する"音アソビ"
たとえば、ちゃんMARIのキーボードの音だけ追っていても、それが分かります。サビの「パラリラパラリラ」の後ろで一見滅茶苦茶に鍵盤を弾いているように見えて、実はきちんと一定のリズムを刻んでいます。
そしてこの「パラリラ」が始まる直前と終わった直後のタイミングで手前の大きいキーボードから奥に設置していた小さいキーボードに切り替えて異なる音色を奏でています。youtube動画の0:48あたりと1:00あたりの映像を見ると、その切り替えがよく分かります。
●ゲスの極み乙女。/『アソビ』
このように一見滅茶苦茶にやっているように見えて、実はかなり考えて演奏している曲なのです。
再生回数は意外と少ない?穴場の名曲!
しかしこの『アソビ』のyoutube再生回数は149万。ゲスの他の代表曲『猟奇的なキスを私にして』/ 990万、『キラーボール』/ 905万、『パラレルスペック』/ 854万、『ノーマルアタマ / 299万、などに比べると再生数は決して高くはありません(再生回数は2015年5月19日時点)。これはひとえにポップスという音楽ジャンルにおいては、やはりまだメロディが重視されるからだと思います。実際、ほめているコメントでもサビの「パラリラパラリラ」への言及が目立ちます。
事実、この曲はサビにあたる「パラリラパラリラ」の箇所がCMでも印象的に使われていました。
しかし、個人的にこの曲はサビ以外の歌詞も優れていると思うのです。
高校球児の悔しさを歌った曲
この曲は高校球児を歌った曲です。高校球児が試合に負けた時の気持ちを歌っています。
----------------
1対2で負けても
10対11で負けても
3対50で負けてもさ
こっちは遊びだし余裕です
≪アソビ 歌詞より抜粋≫
----------------
どんな点差で負けても、負けは負け。その悔しい気持ちをあえて「こっちは遊びだし余裕です」と歌います。この「遊び」という言葉に、悔しさや報われなかった努力や無念の気持ちが込められているのです。
高校球児は、爽やかを求められます。負けたら悔し涙を流しながら甲子園の土を持ち帰る様を求められます。
----------------
敵チームの奴等に
この際砂をぶん投げてさ
爆笑したい
≪アソビ 歌詞より抜粋≫
----------------
しかし、高校球児の中にもきっとこの歌詞のように思っている人がいるのではないか?と思うのです。こう思っていても、きっと言葉には出来ないでしょう。
そして、遊びとは言えないほどのゲスの極み乙女。メンバーの演奏が、その言葉に出来ない感情を見事に表現しているのです。
この複雑なアレンジは真剣に音楽と向きあってなければ生まれません。真剣にやってるからこその『アソビ』なのです。聴く者に「遊びとは真剣にやって、挑戦するからこその遊びである」ということを音楽を通して伝えているのです。
今後がより楽しみなゲスの極み乙女。
ゲスの極み乙女。は6月17日に新曲『ロマンスがありあまる』を発売しました。今回もタイトルからして期待できます。そちらも楽しみですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)